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ライス・ライフ〜女の子に食べられた僕は獣に目覚めました〜  作者: 空超未来一
第2部【白い王宮編】 - 第4章 王宮の手触り
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おやすみ、アンダーワールド(2)

「…………次はお前だ」

「……チッ!」


 シオンの絶対防御を打ち破ったシャバーニが、リュウに狙いを定める。

 冷たい風が、リュウの背筋をなぞった。

 シャバーニが動きを見せる前に、リュウはナツミに向かって叫ぶ。


「……ナツミ! シオンが無事か確かめてくれ!」

「リュウはどうするの!?」

「……俺はこいつと戦う! はやくいけ……ッ!!」


 必死なリュウの叫びに、ナツミは顔をしかめた。

 しかしすぐに決断して、リュウの元を離れてシオンに駆け寄る。


「…………いくぞ、『怪盗』」

「……こい、ゴリラ野郎……ッ!!」


 獣人となったシャバーニがドンッと地面を蹴って走り出す。

 リュウは地に手をつけて、術を唱えた。


「……氷食ひょうしょくの術!」


 ピキピキピキ……っ


 リュウの手を始点として、円状に氷の膜が地面を覆っていく。ウシオが得意とした忍術で、相手の足場を奪うことを目的とする。これに対して敵は、基本的にジャンプして侵食されていない箇所へと避難する。そこから攻撃の手順を立て直すのだ。

 ジャンプをしたとき、ヤツは恰好の的となる。

 リュウはそう算段をたてた。

 空中へとジャンプすると身動きはとれない。

 忍術や魔法を使うものならまだしも、武術や剣術を得意とするものは無防備な状態になる。

 ピキピキと氷が地面を侵食していき、ついにシャバーニの足元へとたどりつく。


 ――――跳ぶ……ッ!!


 リュウは確信し、大技を繰り出す体勢へと入った。

 しかし。

 シャバーニが跳ぶことは無かった。

 逆に彼は大きく前へと一歩を踏み出し――――


 ――――氷となった地面を踏み砕き、そのままリュウに向かって直進したのだ。


「…………手の内がバレバレだ。ふんぬ……ッ!!」

「……げぼァ……っ!?」


 大技を出し損ねたリュウは体勢を崩し、その隙をつくようにシャバーニに一撃を加えられた。竜の鎧を纏っていたおかげで即死こそは避けられたものの、苦しい鈍痛がリュウの身体を駆け巡る。

 だが、シャバーニの攻撃がそこで終わることは無かった。

 彼は一寸の絶え間もなく、もう一方の拳を振りかざす。半分意識が飛びつつも、リュウは途切れがちな思考を無理やりに動かして相手を見据える。

 頬を狙われた攻撃を、リュウはなんとかかわすことができた。

 カウンターをとるように、彼は術を発動しようとするが、


「……炎陣えんじんのじゅ――――」

「…………遅い」


 ドガァ……ッッ!!!!


「……ぐふ……っ!?」


 術を発動する前にシャバーニの左足が動き、リュウの横腹をとらえる。ハンマーにでも殴られたかのような衝撃で、彼はふっとんだ。

 近くの大木にぶつかって、ようやく勢いが止まる。

 ずるり……っと、リュウは倒れた。


 ――――実力が違い過ぎる。


 かすんでいく視界の中、リュウは素直にそう思った。

 指先の感覚が無くなっていく。

 体内から熱がもれていく。

 終わったの、か…………?

 敗北したのかも把握しきれないほどに、リュウは弱っていた。ズシンズシンと鈍い足音をたてながら圧倒的な存在が近づいてくるのリュウは感じる。


 ――――あぁ、終わるんだな。


 ここにきてようやく、リュウは自分が負けるんだと理解する。重いまぶたに抗うことをやめ、目を閉じようとした時。



 ――――リュウ、死なないで!!



 心に直接、あの子の声が届く。

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