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僕とミズキ、ときどき花蓮さん  作者: 佐和 潤
第一話 和睦はミズキと出会った
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ミズキくん?

 (ひかる)を追って教室を出たのはいいけど、何処に言ったのだろうか。昼休みの校内は生徒でごった返している。

 

 自分が光なら何処に行くだろうか。僕ならああいう状況の後では一人になれる場所に行く。

 

 光が一人になれる場所、思い当たる所は一箇所しか無かった。

 

 学校の外れ、弓道場に併設するように作られたトタン板の古い建物、元は柔道場として使われていた。

 

 今では柔道場は体育館に移転したため、総合格闘技部の練習場として使われている。


 無論出入りする人間は少ない。僕もよく昼休みに惰眠をむさぼっている。多分光がいるとしたらここだ。息を潜めて柔道場に近づく。


 人の気配がした。耳をすませて中の様子を伺う。話し声がした。誰かが電話をしているのだろうか?


「さくらさん、話し聞いてくれませんか?」


 聞き覚えのある声、というか忘れたくても忘れられない声だ。その声の主は昨日出会った気弱で可愛い少年だ。


「ミズキくん?」


 思わず疑問が口から漏れる。何でミズキくんがうちの学校にいるんだ。僕は壁越しで一体何が起こっているのか理解できずにいた。


「わかりました、じゃあ今日練習休みます」


 今日練習を休む。中から聞こえてきた言葉を反芻する。光とミズキくん、まさか二人が同一人物だとも思えない。


 状況証拠は揃っている。だけど確固たる証拠もない。もしここで踏み込んで光に直接話を聞けば疑問は解決するだろう。

 

 だけど、そうなった場合、確実にわだかまりが残る。進むことも戻ることも出来ずに僕はその場に立ち尽くしていた。

 

 引き戸が開く音で我に返る。目を向けると中から光が出てきていた。お互いに息を呑む。見合ったまま硬直していた


「その……心配で」


 さっきまでの光と明らかに様子が異なっていた。顔面から血の気が引いている。震える声で僕に尋ねてくる。


「……聞いてないですよね。和睦(かずちか)さん」


 和睦さん、光は僕のことをそう呼ばない。光は斉藤と苗字で僕を呼んでいる。光も自分のミスに気がついたみたいだ。僕の手を掴むとすぐに柔道場に引き込んだ。


「……どういう事?」


 僕の問いにも光は答えようとしなかった。目は泳いでいる。どうしていいのか対処法を必死で探しているようだ。



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