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僕とミズキ、ときどき花蓮さん  作者: 佐和 潤
第一話 和睦はミズキと出会った
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和睦くんが一番相性いいのに

「何やってるんです?」

 

 目の前の光景を見た時、反射的に言葉を発していた。花蓮(かれん)さんは僕のベッドに寝ころがりスマホで動画を見ている。

 

 ベッドの上に目を移すと愛犬のカイが気持ちよさそうに眠っている。

 

 夕食も終わって、コンビニで甘いものとコーヒーを買ってきた。パソコンでのんびり動画でも見ようと思ってドアを開けた。

 

 そうしたら僕のベッドの上で花蓮さんとカイが堂々と部屋を占拠していた。力が抜けてくる。

 

 僕の存在に気づいたカイは素早く起き上がると尻尾を振りながら僕に飛びかかってくる。芝犬とコーギーのミックスで運動神経はいい。

 

 花蓮さんは体を起こすとベッドの上に胡座をかいて座る。勉強机の上に買ってきた物を置くと椅子に座って花蓮さんに向き直る。

 

 カイは何かくれるのかと僕の足元に座った。


「一つ言いたいことがあってね」


 それが花蓮さんの第一声だった。自分の感情を隠そうとしていたが、言葉の端々から不満があふれていた。

 

 僕の目を見据えていた。僕がなにか悪いことをしたのか皆目見当がつかない。


「何かしました?」

「思い当たる節は?」

「特にないですけど?」


 思い当たる節と言われても、無遅刻、無欠席、一応授業はまじめに受けてる。危ない薬もしていないし喧嘩もしない。

 

 不純異性交遊などもしていない。問題があるとすればアニメ好きという趣味がアレなだけだ。

 

 僕を見つめる花蓮さんの目には不満の色が色濃く出ていた。花蓮さんとしては隠そうとしているのだろうけど、隠しきれていない。


「付き合いが悪い」


 今度の声からはハッキリとした不満感が現れている。付き合いが悪いと言われても今ひとつはっきりしない。


「はい?」

「ここ最近ジムに週に二回しか来てない」


 子供かと言おうとしたがなんとか飲み込む。肩から力が抜けた。確かに最近、総合のジムの方には顔をあまり出せないでいる。だけどそれには理由がある。


「私の練習相手がいないんだ。和睦くんが一番相性いいのに」


 子どもみたいな答えだ。理由を説明しようとしたが後回しにした方がいい。ここは機嫌を取る方がいい。


「わかりました。明日は参加します。だけど部の練習の後だから遅めでいいですか?」

「いいぞ、待っているから。何なら迎えに行こうか?」

 

 

 さっきまでの不機嫌さが嘘のように上機嫌な様子だ。こういう喜怒哀楽がはっきりしている所が、花蓮さんのいいところでもあり悪いところだと思う。


「いいですよ、ジムに直接行きますから。けど軽めでお願いしますね」

 わかったと上機嫌で答えるとベットから降りドアに向かう。その様子を見て、カイも尻尾を振りながらついていく。

 

 犬というのは力関係を一瞬で見抜くと聞くけど間違っていないと思う。


「楽しみにしてるからな」


 花蓮さんを部屋から送り出すと携帯を取り出す。予定変更を伝えないといけない。

 

 電話帳から広瀬風花とのアドレスを探すとメールを打った。メールを送信すると思わずため息が口から漏れた。

 

 僕は花蓮さんに振り回されるのが嫌ではないのだ。花蓮さんはしょうがない人だと思うと口元が緩んだ。

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