「どういうことかな?」
穏やかな春の日差しが川沿いの公園に降り注いでいた。川から東屋に風が吹き抜け、水面には水鳥が悠々と浮かんでいた。
僕ら二人は東屋の中に腰を下ろしさくらさんを待っていた。そんな爽やか陽気とは裏腹に僕の隣でミズキくんは不安げな顔で水面を見つめている。
「嫌な予感がするんですよ」
ミズキくんは呟きを聞いて小さく頷く。ただの電話だと気にしなければいいのかもしれない。
だけど嫌な予感がする。虫の知らせというか、第六感が危ないと言っている。
いつもどおりの電話だと思えばいい。しかし花蓮さんに対し事実をはっきりと言わなかった。
嘘をついた訳ではないが、ごまかすようなことを言ってしまった後ろめたさがあるのかもしれない。
「……和睦さん」
ミズキくんは不安げな目で見つめている。電話に出た時もミズキくんは不安げに周囲を見回していた。
「見えたんです。花蓮さんが」
「本当?」
不安げな声だった。花蓮さんも買い物に行くと言っていたから、鉢合わせする可能性はゼロではない。
だけど、さくらさんと一緒にいるから大丈夫だろうと思っていた。まあ実際に会っても理由を説明すれば花蓮さんならわかってくれると思いたかった。
「まあ、大丈夫だと思う。さくらさんも一緒だし」
「そうですよね」
念を押すようにミズキくんは大丈夫と口にした。多分に自分に言い聞かせているのだろう。
「でもさくらさん遅いな」
この近くに美味しいハンバーガーショップが有る。ファストフード店で食べるくらいなら、その店のほうが旨いとさくらさんが力説して昼ごはんは決まった。
ジャンクフード好きで、味とコストパフォーマンスにこだわる。その情熱をもっと別の方向に活かせばいいと思うが、その味覚は確かだ。
「人気店らしいですから、後ちょっとかかるそうです」
携帯に目を落としていたミズキくんがつぶやいた。さくらさんからメールが来たようだ。次の瞬間、僕の背筋に冷たいものが走った。
「……どうしたの」
ミズキくんの表情が凍りついていた。視線をゆっくりと動かす。獲物を狙う狼のような目がミズキくんに向けられていた。花蓮さんだ。
「どういうことかな?」
ドスの利いた声、明らかに僕たちを威圧していた。全身から血の気が一気に引いていく。