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僕とミズキ、ときどき花蓮さん  作者: 佐和 潤
第一話 和睦はミズキと出会った
15/31

「聞いたよな斉藤」

「おはよー、和睦(かずちか)。まだ寝てるの?」


 日曜の朝、穏やかな僕の眠りを妨げるようにのんびりとしたエセ関西弁が脳に響く。窓の外は快晴で雲ひとつない青空だ。


「特撮や魔法少女に興味の欠片もないもので」


 確かに僕はアニメが好きだが、特撮は範疇外だ。よって惰眠を貪っていた。睡眠は人間の三大欲求、それを充足しないと体が持たない。


「今日暇?」

「わかりません?」


 質問で質問で返す。暇だから朝寝をしているのだ。それくらい少し考えればわかるはずだ。


「だったら付き合って、買い物」

「何でです?」

 

 暇だと仮定しての誘い、僕の事情に全く考えを巡らせてなどいない。まあ、さくらさんにそんなことは期待していない。


「私服買うんや。ミズキくんの」

「ちょっと待って」


 僕の脳が一気に覚醒した。ミズキくんの私服、女装用の服を買う相談に乗れと言っている。そんな僕の気持ちを無視してさくらさんは言葉を続ける。


「やっぱり女物多めに持っといたほうがええやろ。で男性の意見も聞きたいし」


 ミズキくんは男性だとツッコミたかったが、それ以前に引っかかる点がある。


「というか、今までのは?」


 今までミズキくんが聞いていた服、光の分とは別にしてもあれだけの服を買うのにはお金がかかるはずだ。


「私物とファストファッションと古着、安うていいよ。夏もんも必要やし。ミズキくんも可愛いスカートとか欲しいって」

「スカート?」


 思わず聞き返したけど、確かミズキくんがスカートを履いているのを見たことはない。ジーンズとか女性物のパンツルックしか見たことがない。


「本格的にやってみたいって。可愛い服に興味があるみたい」


 世の中言わなければ良かった、聞かなければよかったと思うことは数多くある。

 

 ミズキくんもまた一歩深みにはまろうとしていた。後悔先に立たず、昔の人はよく言ったものだ。


「大丈夫、パンツまではいってないから」

「さくらさん、大分ズレてるよ」

 

 さくらさんの思考はどう考えてもズレている。携帯越しに物音が聞こえた。さくらさんと誰かが会話しているみたいだ。


「聞いたよな斉藤」


 震えている光の声が聞こえた。どうすればいいんだと考えをめぐらしたが、答えは一瞬で出た。なんとかするしか無い。


「すぐ行くから」


 ベッドの中で背を伸ばすと、上半身を起こした。目が冴えて、頭はしっかりと働いている。口から大きなため息が漏れた。


窓からは穏やかな春の日が差し込んでいた。きっと、神様が外出しろと言っているのだ。しかしもっと普通の要件のほうが良かった。

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