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ラグナロク  作者: 木の棒
第4章 王城でのキャラメイク的な!
21/27

第19話 女王ティア

―― 聖樹王暦2000年 1月 15日 10時 ――


 僕達は王城バッキンガム98階にある「聖なる間」に来ている。

 女王ティア様と会うためだ。


 僕、ミカ様、文無しの3人とマリア様が同席して下さる。


 緊張して待っていると扉があいた。


 おお……これはまた噂以上だな。


 美しい金髪に褐色の肌。

 厳しくも優しく美しい顔。

 そして男を魅了する見事な身体に纏う女王の風格。


 これがこの国の女王ティア様か。


「よい。座ったままで。マリアの大事な客人だと聞いている」


 ティア様はマリア様の隣に座られた。

 僕の正面になる。

 僕の右にはミカ様、左には文無し。

 文無しの正面にマリア様だ。


「マリアからの秘密の話とのことなので、記録係りはいない。安心して話されよ」


「マリア様からお聞きしているかと思いますが、私がルシラです」


「私がミカです」


「ガブリエルです!」


 文無しが愛嬌たっぷりのスマイルでおどけてみせる。

 ティア様はそんな文無しを優しい笑顔で見つめている。


「ガブリエルちゃんも元気そうだな。民の治療を頑張ってくれて本当に助かっている。おかげで民の信頼をより一層獲得できた」


 民の信頼を獲得できた? 民の信頼をさらに必要としているのか?


「さて、まず何から話そうか……マリアから聞いている中でやはり気になるのは、ルシラ殿が「聖樹の祝福」を与えられるということなのだが……」


「はい。それに関して僕からも話させて下さい。聖樹の祝福という言葉には、とても多くの意味が込められていると思います。僕が与えられる聖樹の祝福とは、昨夜マリア様に与えたように、古代の真なる魔法の力を与えることです。ですが、誰にでもというわけにはいきません。聖樹の祝福を与えるには、僕自身の魂の力を消費するからです」


 ミカ様には昨夜、マリア様の信頼を得て、さらにはティア様を納得させるために、マリア様に聖樹の祝福で光魔法を与えたことを伝えてある。

 こういうことは、さらっと、さっと伝えた方がいい。

 ちゃちゃっと聖樹の祝福与えておきましたから! 的な流れである。

 男性用の別館で、マリア様に密着してもらいながら、聖樹の祝福の考察をしていたことは秘密である。


「ふむ……マリアの光魔法はさきほど見させてもらった。ルシラ殿が与えた力が、古代の真なる魔法であることを疑う必要はないだろう。正直にいうと、驚きのあまり私も声を失ってしまったよ」


 ティア様は楽しそうにマリア様を見る。

 マリア様は嬉しそうな恥ずかしそうな、それでいて誇らしそうにしている。


「それで……私にも聖樹の祝福を頂けるとか」


「はい。実際にティア様にも感じて頂くのが一番かと思いまして。ティア様は闇魔法を得意と聞きました。ですので、古代の真なる闇魔法の祝福でいかがでしょうか」


「それはありがたい。ぜひ祝福して頂きたいものだ」


「では……この木の棒を両手で握って祈りを捧げて頂けますか?」


 ティア様の前に木の棒を……両手で握ると祈りを捧げるティア様。



♦♦♦


名前:ティア  性別:女  年齢:30歳

種族:人間   身長:168  3サイズ:96(H)/58/89

祝福:


♦♦♦



 ふむ……素晴らしい。

 しかし噂通りマリア様の方が大きいようだ。


 闇魔法の祝福を与える。



「む……これは……」


「感じて頂けましたでしょうか? 闇魔法を祝福を与えました」


「確かにこれは……おお!」


 ティア様の手から作られた闇球。

 光の全てを吸い込むような闇である。


「くっ……魔力の制御が難しいな」


「はい。私も昨夜、ずっと制御の特訓をしていましたが、力が大きすぎてなかなか上手く制御できませんでした」


「ふっ、制御できませんでしたか。つまりもう制御できたのか?」


「いえ、まだまだです」


 2人は本当に楽しそうな笑顔だ。


「ルシラ殿、感謝する。この真なる闇魔法、確かにルシラ殿より祝福を与えて頂いた。この聖樹の祝福の力を頂ける対価として、聖位鍛冶師のナールへ武器の依頼と聞いている。それに関しても喜んで協力させて頂こう」


「ありがとうございます」


 きた~~~! OK!


「ただ、私の我儘も少し聞いて頂きたいのだが……」


 おっと、なんだ?


「はい。なんでしょうか」


「この聖樹の祝福。マリアと私の他にも与えて頂きたい者が2名いる。その者達にも与えて頂けないだろうか」


 む~さすがは女王様。取れるだけ利を取ろうとしてくるか。


「その2人にはどのような魔法をお望みですか?」


「1人には光魔法。もう1人には闇魔法」


 ふむ、いまティア様に闇魔法の祝福を与えたので、僕の神力残りは402。

 さらに光と闇で200消費すれば残りは202か。

 信頼を得るためには仕方ないか。


「わかりました。聖樹の祝福を与えます」


「ありがとう。ではさっそくナールを呼びたいところなのだが、もう1つの話から先に片づけたい。ガブリエルちゃんのことだ」


 文無しは王城での仕事をやめて、僕達と共に行動したいと願い出た。

 完全にやめるのはどうかと思ったけど、稽古時間増えるし、それが可能ならそれに越したことはないんだよね。


「申し訳ありません……」


 猫を被った文無しが申し訳なさそうに謝る。

 その言葉は本心だろうけど。


 あ、しまった。

 この話でさらに僕から祝福を引き出す気か?

 こっちの話を含めて、さっきの2人の祝福を了解するべきだった!


「ガブリエルちゃんはもともとギリシア王国の者だ。私が引き止める理由はない。自由にすればいい。ただ……無理だと分かっているのだが、どうしても知りたいことがあってね。なぜギリシア王国の者は、高純度神石を貯め込んでいる? ギリシア王国に持ち帰るのか? それとも何か別の目的があるのか?」


 それか。

 くっ……話してもその言葉は理解不能な言葉になってしまう。

 どうにかして伝えられないか。


「ティア様その件に関して話そうとしても、僕の言葉はティア様に届きません。マリア様が推測されている通りです。ただ1つ言えることがあります。僕達は、他のギリシア王国の冒険者達とは違います。決してルーン王国に損失をもたらすことは致しません」


 見つめ合う僕とティア様。

 僕の心を覗いているのか。


「ふむ……ルシラ殿の言葉は信用してもよいのだが……」


「言葉以外に何が必要でしょうか?」


「……私の直属の部下になって欲しい」


「ティ、ティア様!」


 声を上げたのはマリア様だった。

 マリア様にとっても予想外のことか。


「行動に制限はかけない。自由にして頂いていい。しかし私の部下となり、この国のために行動して欲しい。さきほどルシラ殿はルーン王国に損失をもたらすことはしないと言ったな。それは当たり前のことだ。ルーン王国に利益をもたらして頂かないといけない。聖樹の祝福の与えて頂けるルシラ殿にはぜひとも我が国の留まって欲しいというが本音ではあるが」


 くっ……どうする。

 ミカ様は口を挟まない。事前に全て僕に託すと言ってくれた。

 文無しも同じだ。


 このラグナロクに僕達は神力を得るためにきた。

 そのためには高純度神石を集める必要がある。


 果たして神力を得る手段はそれだけなのか?

 他にもあるんじゃないのか?


 ティア様達が戦っている「穴」から侵入してくる悪魔。

 悪魔のプレイヤー達がいる地下世界からやってきているのだろう。


 そうだよ。地下世界に行けば、新たな神力を獲得する手段があるかもしれない。

 それに悪魔を倒せばいい。

 悪魔を倒すことにミカ様も文無しも戸惑いはない。


 ティア様の部下となって「穴」からの悪魔と戦う。

 さらには地下世界を攻めてしまう!


 このストーリーでいくか?

 これならミカ様の剣を作ることが、ルーン王国のためにもなる。


「分かりました。ティア様直属の部下になります。行動は自由とのことですが、「穴」から侵入してくる悪魔と積極的に戦いましょう。ティア様もそれを望まれると思いますので」


「ルシラ殿の英断に感謝する。ようこそルーン王国へ!」


 僕とティア様は立ち上がり握手をかわす。


 こうして僕達はティア様直属の部下としてルーン王国に仕えることになった。



 僕達はマリア様の豪邸に住むことになった。

 マリア様がぜひそうしたいと願いでたのだ。


 ティア様もマリア様に僕達のことをよろしく頼むと承諾した。


 さて、場所を移して僕達は「聖位工房」にやってきている。

 ここは各職人の聖位が集まる工房である。


 聖位の中でもナール様はやっぱり特別らしい。

 一番奥の一番大きな工房が、ナール様の工房だ。


「ナール。こちらがルシラとミカだ。私の直属の部下となった。最優先で2人の武器を作って欲しい」


 直属の部下になったので呼び捨てです。


「あ、僕の武器はいらないんです。作って欲しいのはミカ様の武器で」


「ミカ様?」


 おっと、いけない。

 ティア様が、僕がミカ様を「様付け」で呼んだことに反応する。


「作るにしても何か材料はあるのかい?」


「はい。こちらです」


 ふっ! 驚くがいい!




―― ナール様、狂喜乱舞中のため少々お待ちください ――




「お見苦しいところ……申し訳ねぇ」


「よい。私も腰を抜かすところだった」


 金剛石に最高純度神石と聖純度神石。


 金剛石とその大きさにも驚いていたけど、最高純度神石の大きさにはさらに驚いていた。

 そしてこの中にあるなら、聖純度神石も相当な大きさだろうと。


「これは大仕事になりますな~。最優先でやりますが、時間はちょいとかかりますな」


 半年待つよりいいだろう。


「はい。是非お願いします。あと余った金剛石からメイスも作って欲しいんです」


「十分過ぎるほど金剛石は余るでしょうな。メイス50本ぐらい作りましょうか?」


「いえいえ、1本でいいですから」


「ルーちゃん、ルーちゃん」


 文無しが小さな声で呼んできた。

 そして私! 私! と自分を指さしている。

 あ、そっか。


「えっと、この金剛石から魔道具のお店に置かれている魔力銃って作れます?」


「作れますな。最高の魔力銃になるでしょう。大きさはどれくらいにしますか?」


「う~ん」


「持ちやすい小さいのと、大きくて威力高いの1つずつお願いします」


 文無しが口を挟んできた。

 顔がにやけているぞ。天使の巫女が崩れるぞ。



 その時だ。工房に2人の騎士が入ってきた。


 黒い鎧の騎士と、白い鎧の……女性騎士だ。


「ルシラ、ミカ、紹介しよう。シュバルツとミリアだ。」


「シュバルツです」


「ミリアです」


 あ~この2人が祝福を与えて欲しいって2人か。


「ルシラです」


「ミカです」


「シュバルツ、ミリアこれを見ろ。金剛石だぞ」


「え?……なっ!!!!」


 ティア様は2人の狂喜乱舞を引き出そうと面白がって説明していった。


 その後、直属の部下になった僕にはちょっとした特別な力があって、その力を2人に授けることにしたと伝えた。

 聖樹の祝福という言葉は伏せた。


 しかし。


 シュバルツに闇魔法、そしてミリアに光魔法の祝福を与えると、2人とも……


「「こ、これは聖樹の祝福でしょうか?!」」


 即バレであった。



 金剛石は魔力伝導率とでも言えばいいのか、魔力や魔法との相性も抜群らしい。


 ティア様は金剛石を見てうっとりとしている。

 いや、それ僕のですからね?

 部下になったけどあげませんよ?



 金剛石を見つめるティア様から予想外の言葉がもれた。


「これなら……あのバイクを作ることもできるのでは」


 バイク? どうしてバイクなんて単語が?!



 金剛石と最高純度神石はナールに預けることにした。



 盛りだくさんの午前中だった。

 ミカ様と文無し、それにマリア様の4人でお昼を食べる。


 文無しの午後は治療の仕事だ。

 明日から治療は、緊急な治療以外は全て予約制にするらしい。

 2日に1回、午前中に予約の入った治療を一気に片づけることにした。


 それ以外の時間に、文無しに稽古を課した。

 面倒だと嫌がったけど、ミカ様に怒られて渋々と頷いていた。


 僕とミカ様は、マリア様の屋敷に住むのでプレイヤーの宿に置いてあった荷物を取るために1度戻った。


 宿に置いてある減らない石鹸、歯磨き粉、シャンプー、リンスはアイテムボックスに入った。

 持ち出しOKなのね。

 いつでも清潔なタオルや歯ブラシなども全て持っていった。



 マリア様には戻りはちょっと遅くなるので夕食はいらないと伝えてある。

 ミカ様と稽古依頼をこなして、いつもの軽食屋で夕食を食べた。


 ミカ様は文無しも仲間になったこと。

 ティア様に仕えてこの国のために働けること。

 剣を作ってもらえること。


 全て喜んでいた。

 とても嬉しそうだった。

 ルーン王国の人々のために、悪魔を倒す! と意気込んでいる。


 マリア様の屋敷に帰る前に、闇マーケットのお店に寄った。

 仲介所に出したアイテムが売れると、視界に文字が浮かんできて分かるのだ。


 せいやくトランプが売れた。

 稽古中にそれを告げる文字が浮かんできた。


 お店の水晶に手を乗せるように言われる。

 手を乗せると、身体に神力が流れてきた!


 神力1万ゲットです!

 このタイミングで1万ゲットは嬉しい!

 シュバルツとミリアにも祝福を与えて、残り神力202とかなり少なくなっていたからな。


 ほんの数日前まで神力1の僕が言う言葉じゃないか。



 ティア様直属の部下となり、僕達の生活は変わった。


 ミカ様はシュバルツ、ミリアと一緒に剣の稽古をするようになった。

 いや、むしろ騎士団の連中全員と稽古している。


 そして騎士団の中でミカ様の人気はあっという間に高まっていった。


 この世界で戦う女性騎士は珍しい。

 っていうか、ミリアしかいないそうだ。


 他にも女性騎士はいるけど、護衛だったり式典を彩る花だったりするそうな。


 ミカ様はミリアには勝てたけど、シュバルツには負けたそうだ。

 その話を聞いて、ミカ様落ち込んでいるかな? と思ったら全然そんなことなかった。

 むしろ嬉しそうだった。


 対悪魔の戦術的な会議にも、ミカ様は参加されている。

 そこでのミカ様の戦術方針に、みんな感動しているとか。


 ミカ様そのうち将軍とかになっちゃうんじゃね?



 文無しはギルドの稽古だ。

 ミカ様のように騎士団と稽古するまでのレベルに達していない。


 ゲームの要素のレベルも低いけど、そもそも闘気、魔力の操作技術が低い。

 神力を使える気分でいてはダメなのだ。

 ここらへんは、この世界の人達との稽古よりも、ギルドの稽古依頼で特訓する方がいいだろう。


 魔力切れしては効率的な稽古ができないので、木の棒は文無しに貸した。

 絶対売るなよ! 売るなよ! と何度も念を押したけど、不安は消えない。


 いや信じよう。文無しもやる時はやる。大天使ガブリエル様なのだから。

 ……大丈夫だよね?



 僕は何をしているかというと、マリア様と魔法の特訓です。

 正直いって、まったく相手になりません。

 僕がね。


 マリア様TUEEEEEEEEEE!


 ルーン王国最強の魔法士とは聞いていたけど、木の棒なしの僕では相手にならない。


 いや、そもそも僕の魔法がだめなのだ。


 祝福で真なる魔法となり、その性質を支配したとはいえ、その性質の魔力をどう操るかはやはり個人の努力と鍛錬によって培われる。


 土木魔法と闇魔法の3種類しか僕は使えないので、まずはこの3種類。

 でも全部の魔法を理解することで、どんな相手にも対処できるはずです、とマリア様のアドバイスに従って、全ての魔法を使ってくるマリア様相手に特訓を続けた。


 特訓は辛いけど、マリア様と2人きりの特訓は最高だった。


 マリア様にとって僕は神である。

 もう教え方も優しいし、ボディタッチしてくるし、ボインタッチもあるし!


 後ろから僕の手を取り身体の動かし方を教えてくれる。

 魔法士とはいえ、悪魔との戦闘で棒立ちはだめ。

 常に動いていないといけない。

 マリア様の体術はすごいのだ。

 しかし、そんなにボインを押しつけながら教えられては、耳に入ることも入らない!


 効率300%アップなのか、300%ダウンなのか分からないまま、僕の特訓は続いた。


 ちなみに、ミニゴブルンも召喚して魔力の使い方を習った。

 

 伝説のゴブリンの息子ですと紹介したら、マリア様は感激されていた。

 一緒に鍛錬することで、ミニゴブルンはちょっと成長した。

 身長も急激に伸びている。

 成長速度が人間とは違うのだろう。

 もうミニゴブルンと呼ぶのは失礼かな、ゴブルンとちゃんと呼んであげよう。



 こうしてナールの武器が完成する2週間の間、僕達の王城での生活は続いた。


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