トップギルド同盟
遅くなりましたすみません
「そっち!」
可憐だが戦闘中で危機迫る状況のため、鋭い指示が飛ぶ。
「わかってる!」
右とか左とか方角や方向ですらない指示に応えたのは、指示を出した少女と姉妹である少女。
息の合いようが、姉妹の仲の良さを表している。
指示を受けた姉は右手に握った短剣で敵モンスターを切り裂いた。
「お姉ちゃん、下がって!」
再び妹の指示が飛ぶ。姉が指示を聞いてから周囲のモンスターに牽制を入れつつ素早く下がると、妹は杖を掲げ魔方陣を展開する。
「【アブソリュート・ゼロ】!」
水色の魔方陣から放たれた冷気は、炎系モンスターさえも氷の牢獄に閉じ込めていく。周囲のモンスター全てをまとめて凍てつかせた。
「……ふぅっ!」
妹は周囲のモンスターをまとめて氷付けにし、一息つく。
ファンタジックな淡い服装に杖を両手で抱える魔法使い系職業エルフの妹、リィナ。
素早さを重視した黒と紫の軽装に短剣を構える魔法を使う近接系職業ダークエルフの姉、フィオナ。
リィナは『戦乙女』、フィオナは『ナイツ・オブ・マジック』という別々のギルドに所属しているが、幻想世界に送還される時、この二つのギルドは手を組み一緒に送還してもらったのだった。
ギルド同士の同盟は、トップギルドではここともう一つだけだった。
『軍』はもちろん、『双子のエルフ』は送還するのに忙しいし、『SASUKE』は他のギルドがいると足手まといになるため、『一夫多妻』にはトップソロプレイヤーであるメアが加わったが、それは妹がいるからだろう。
残り二つのトップギルドが手を組んだ訳だが、それは他のギルドにとって全くの予想外。
『狂戦騎士団』と『暗黒魔術師団』である。
互いの理念が全く一致しないという最悪の仲の悪さを発揮していた二つのギルドが同盟を組んだとなれば、他が動揺を隠せないのは仕方がないだろう。
その驚きの一部始終。
「……ツァーリ様。同盟の件、どうされますか?」
『暗黒魔術師団』のギルドホーム、マスターの個室、つまりはツァーリの部屋に腹心の部下である女魔術師がグランドクエスト対策会議以来上の空のツァーリに尋ねた。
「……そうね」
ツァーリは尋ねられても浮かない顔だったが、βテスト時からの仲間である女魔術師には、答えは分かり切っていた。……どうせ組む必要はない、または足手まといだと断言するだろうと推測し、自身のまたいつも通りそうやって戦っていくのだと思っていた。
「……『狂戦騎士団』と組むことにするわ」
「はっ!?」
だが予想に反し、どころの騒ぎではない答えが、ツァーリの口から漏れた。
「……自分でも意外ってのは分かってるわよ。あなたが反対するなら止めるわ」
ツァーリは愕然としたような部下を見て頭をかきながら、しかし真剣な表情で言った。
「……」
女魔術師はそこで悟る。ツァーリは至って真面目なんだと。
「……戦力としては、私達とあいつらが組めばリューヤ軍団にも勝るものと思われます。しかし向こうが承諾するかどうか……」
女魔術師は戦力と相手側のことを言い、自分の心情を言うのを避けた。
それは、言葉の端々に滲む、魔法への絶対的な信頼のせいであった。
『狂戦騎士団』をあいつらと呼び、リューヤ軍団と揶揄する。
個人的に魔法を蔑ろにする『狂戦騎士団』とどっちつかずのリューヤとその仲間達、プラスリューヤの味方をするであろう者達のことである。
「……しなかったらしなかったらだわ。諦めて私達だけでいくわよ」
ツァーリはもう決意しているようで、迷いなく答えた。
「……」
そこで女魔術師は考える。何故戦士である彼らと組もうとしているのかを。
何か原因があるのかと探ってみると、リューヤという人物が浮かんできた。
そういえば、魔法職でもないのにツァーリが執拗に勧誘している。最初は最強の魔術師でもあるリィナのついでかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
個人的な見解では、確かに顔だけはいい。しかしどっちつかずの優柔不断と断言出来る。それに魔法と剣の頻度からして剣の方が主流だろう。
そこら辺に、ツァーリの心が動かされたのかもしれない。
女魔術師はそう思い、さらにリューヤへの嫌い度が上がった。
しかし結果からいえば、それは全くの的外れで、見当外れもいいとこの推測だった。
女魔術師の推測では、何故リューヤではなく『狂戦騎士団』と同盟を組もうというのかを考えなければならない。
そして、女魔術師の頭には、ツァーリが『狂戦騎士団』と組みたいと思っている理由、というものがなかったのだ。
……何はともあれこうしてツァーリからベルセルクに同盟を持ちかけ、見事承諾し魔法と近接、最強の攻撃が揃った同盟が完成したのだ。
まあそれは兎も角、同盟を組んだ『戦乙女』と『ナイツ・オブ・マジック』は協力して幻想世界を生き抜こうとしている。
「……お兄ちゃん、大丈夫かな?」
リィナは凍ったモンスターでまだ体力が残っているヤツを地味に攻撃して倒している仲間達の中で、フィオナに話しかけた。
「……大丈夫よ。リューヤにはアルティ達もいるし、そう簡単に倒されるハズないわ」
フィオナは心配そうな面持ちのリィナを安心させるよう微笑んで言うが、どこか自分に言い聞かせるようだった。
「……そうだよね」
リィナはそう言うが儚い笑みを浮かべた。
……ここにいないヤツのことばかり考えやがって……!
完全に心は別のことに気を取られている姉妹に、『ナイツ・オブ・マジック』所属の数人の男共が恨みごとを思った。
思っていることは二人を睨むようだが、その実恨み妬みは全て別の者に向けられている。
二人の姉妹の外見は美少女と美女というに相応しい。性格が最悪ということもないのでかなりモテる。
だからデスゲームというこの危機的状況でピンチを救う、などをして近付こうと考える者も少なくない。
だがピンチを救われてもそのカッコよさを意識しなければ意味が全くないことは、分かっている。
リューヤの知らない場所で、段々と嫌われていくリューヤであった。
次の話はこの続きみたいな感じです
リューヤが移動→他の動向みたいな流れですが、その過程を一話入れる感じです




