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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
幻想世界の異常編

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二つ目の祠

すみません、遅れました

 ……。

 …………。


 爽やかな海辺に、気まずい雰囲気が漂っていた。


 ……だって、幻想世界を治める最強のリヴァイアサンが、「来ちゃった」とか言ったんだぜ? フォローのしようがないだろ。少なくとも俺には無理だ。


『……コホン』


 リヴァイアサンは気まずい空気に耐えかねて控えめに咳払いする。……まあ、巨体なだけに俺達にとっては大きな咳払いだったが。


「……で、幻想世界を治めるリヴァイアサンが、何でこんな場所にいるんだ?」


 俺は「来ちゃった」発言を無視し、聞いてみた。……なるべく触れないのが優しさってもんだろう。


『……いくら僕達といえど、食事をせずには生きられないから。巨体の割りには燃費がいい方ではあるけどこうして度々食事をするんだよ。本来なら棲家に近寄ってきたモンスターで済ませるんだけど、最近はモンスター達も荒れていてね。好物のイカルゴクラーケンを追ってきたら、島亀までいるもんだから、ついついここまで来ちゃったんだ。驚かすつもりはなかったんだけど、すまないね』


 リヴァイアサンは苦笑したような声で説明してくれる。……見かけで人を判断しちゃいけないっていう見本みたいなヤツだな。あんなでかい島亀を丸呑みにする程大きくズラリと並んだ牙を持つリヴァイアサンが、こんな柔らかい声をしているとは。一度聞いたものの、こうして実際に大きさを比較出来るモンスターがいるとそのギャップがよく分かる。


 ……そういや、リヴァイアサンの登場に驚いたモンスター達が逃げていったな。俺も驚きの方が強くて今の今まで気付かなかった。


「……別にいいけどさ。で、祈りは祠の方でいいのか?」


『ああ、もちろんだよ。僕自身を崇めてもらっても気恥ずかしいだけだから。祈るだけ祈ったら、次の場所へ行くといいよ。じゃあリヴァア、いくよ』


 リヴァイアサンは顔を上に向けたまま喋っていたが、何故か現れていたリヴァアに離しかけると、首を傾げるように身を翻し、頭から海へと入っていき、逆Uの字になって潜っていく。


「「「……」」」


 最後リヴァアに話しかけたのは何だったのかよく分からなかったが、長い。


 胴が長すぎて潜っていく時間が永遠に感じられる。


 数分ぐらい経って、ようやく尻尾が水面から出て、潜っていく時に強く水面を叩いて、潜っていく。


「うおっ……!」


 大津波もかくや、という規模の水飛沫が上がり、


「「「……」」」


 俺達全員、痛い程水滴をくらってビショビショになった。


 ……迷惑すぎる。あんな大きさじゃあどこにいても周囲のモンスターに目をつけられそうだな。困ったもんだ。


「……とりあえず、祈っとくか」


 壮大な大きさに免じて。


「……キュウ」


 アルティがブルッと身体を震わせて水を弾いて拗ねたように頷く。


「「「……」」」


 祠の周囲を囲むようにしてとぐろを巻くリヴァアのさらに内側で祠に向き直り、合掌して一礼する。


 ……リヴァア、範囲からはみ出してないかな、大丈夫か?


 リヴァアが大人しいので大丈夫なのだろうが、ちょっと不安だ。


 だが俺の不安を他所に祈りが終わり、ビクッとリヴァアが震える。


「リヴァア?」


 モンスターが襲ってきたのかと身構える俺だが、すやすやと寝息を立てていた。……?


「???」


 さらに不思議なことに、リヴァアが縮んでいく。……最初に出会った子供の頃よりもさらに一回りくらい小さいだろうか? 大人の姿に見慣れてしまったせいか、可愛く見える。


「……もしかして、さっきリヴァイアサンがリヴァアに話しかけてたのは、これのことだったのか?」


 俺は確信が持てず、呟く。


 するとシルヴァがこくん、と頷いた。……さすがはシルヴァ。冷静かつ聡明だ。初対面時アルティと睨み合っていた頃が懐かしいな。最初、アルティと初めて対面した時は、ちっちゃくて可愛かった頃は、シルヴァが生まれたばかりということもあって甘えん坊だったため、アルティと争っていたのだ。


 シルヴァは生まれたばかりの時から無言だったが、冷静沈着ではなく何も言わずに甘えてくるのが可愛かったりする。


 ……しかしあれだな。幼い時のアルティはクドラといいシルヴァといい、初対面で睨み合ったら俺に泣きついてくる程ビビリなんだろうか。実力的には同等以上なのに。


「……そっか。じゃあ親子水入らずで話してもらうとして、俺達はちょっと周囲のモンスターを狩り尽くしてるか」


 俺は言って、月凪を


「『ウエポン・チェンジ』」


 で出現させる。忘れてるヤツも多いと思うが、月凪とはいつかの海賊を倒した報酬で、刀だ。『月凪剣術』が使えるレア武器で、柄の先に鎖が付きその先には三日月が付いている。


「体力が減ったらここで休憩してていいからな。じゃあ、いこうか」


 俺はそう皆に声をかけて、少し助走をつけリヴァアの胴体を飛び越える。リヴァイアサンのことだ、リヴァアの大きさは祠を守る範囲と同じにしてあるんだろう。


 リヴァイアサンが去って再び集まってきたモンスター達は、結界の外に出た俺を見つける。


「……悪いが、出来るだけ静かに倒されてくれ。リヴァアの邪魔をしたくないんでな」


 後からこっちに来たアルティ、シルヴァ、フレイを従え、襲いくるモンスター達と交戦し始めた。


 ……リヴァアが起きたら、三蛇と相談しながら次の行き先を決めるか。


 俺は月凪を構えレベル五十から六十のモンスター達を見据え、そう思った。

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