表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
幻想世界の異常編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/165

さあ飛び立とう

「……ぁ」


 俺は生きた温もりに包まれて、目を覚ました。


「……」


 仰向けに寝転がっている俺の上にアルティとシルヴァ。横にフレイという位置だった。皆漏れなくすやすやと安らかな寝息を立てている。


 ……フレイは戻したハズなんだけどな。


 俺はフレイの黄金の炎により、周囲が少し照らされ、見渡せるようになっていることに気付いた。


 ……あっ。


 俺は頭の方に、祠のようなモノがあることに気が付いた。


 縦長の長方形の箱に鳥を象ったシンボルが祀られている祠がある。


 ……ここがジズの祠か。


 俺が目を覚ましたことで空気の微妙な変化が生まれたのか、それともただ寝た振りをしていたのか、続々と起き上がる。


「……キュウ」


 アルティは寝起きでボーッとした目をしていたが、フレイの炎が生み出す光に照らされた祠を見て、パチパチと目を瞬く。


「……キュウ」


 アルティは魅せられたようにフラフラとした足取りで祠の方に歩いていく。


「……アルティ?」


「……キュッ」


 アルティは俺の声に反応せず、祠の真正面で二本足で立つと、前足を合わせてお辞儀をした。


「……キュウッ!」


 お辞儀から頭を上げて、俺に手招きをする。……俺もやれと?


「……はいはい」


 俺は立ち上がって祠へと歩き、合掌して一礼する。


 ……祈りを捧げるってのは、こういうことなんだろうか。


 頭を上げると、フレイ、シルヴァも同じように祈りを捧げていた。


 シルヴァはすぐに頭を上げるが、フレイは少し長かった。同じ鳥系モンスターとして、何か思うところがあるのかもしれない。


 ……次はどこに行こうか。


 ここでのんびり休憩するのも何だし、HPもMPももう全快している。長居することもないだろう。


 レベル上げの件も、こんな暗い場所よりも明るい場所で、祠の周囲で休憩しながら戦えば安全と言える。


 海がいいかな。海なら開けた場所も多いだろうし、何よ明るい場所がいい。


「……リヴァイアサンの祠か。海ってどこにあるんだろうな」


 ……ってか、リヴァイアサンの祠が海辺にあるのは納得出来るが、何でジズの祠は谷底にあるんだろうか。ジズは鳥だし、幻想世界で一番高い山の頂上、とかでもいいと思うんだが。


「……まあ、とりあえず行くか。フレイ、海まで頼む」


 俺はかなりアバウトな注文をするが、フレイは任せろとばかりに力強く頷いた。


「……行けるのか?」


 俺はちょっと不安になって聞く。


「ピイ」


 だがフレイは変わらず力強く頷いて見せた。……そこまで言うなら大丈夫なんだろう。


「……よしっ。じゃあフレイを信じて行くとするか。アルティ、おいで」


 俺はフレイに乗ってとりあえずここから抜けるようかと思い、アルティを呼ぶ。アルティはててて、と軽やかに俺の脚から肩まで昇り、マフラーに入り込むようにして襟に居座る。


 ……もう手慣れてるな。すっかりアルティの特等席だ。


「シルヴァ。空中ではフレイを援護するから、お前は自分で飛んでくれ」


 俺は残ったシルヴァにそう言い、翼を広げて待つフレイの背中に乗る。


「んじゃ、海に向かって出発」


 俺が言うと、フレイは力強く翼を羽ばたき、上昇し始める。シルヴァも翼を羽ばたかせて後に続く。


「うおぉ……!」


 フレイはやる気に満ちているのか、かなりの速度で上昇していく。掴まっていないと振り落とされるとこだった。


 どこまで落ちたのか、光が降りてこない暗闇の中だった。


 しかし、フレイが上昇していき、上がる先に光が見えた。それは次第に大きくなっていき、周囲を照らすまでに明るくなる。


 ……結果から言えば、明るくならないで欲しかった。


「……わぁお……」


「……キュ、キュウ」


 俺は引き攣った笑みを零し、アルティは怯えるように身を震わせた。


 視界が明るくなり、見えた谷の壁には、無数の芋虫が張り付いていた。


 ……毛虫とか蛾や蝶の幼虫を連想される。しかも大きさは二メートル程だろう。


「……嫌な場所だな」


 日本では虫を食べるといってもコオロギが精々で、芋虫、カイコガの幼虫などは食べられない。自然を生きる部族集落なら話は別だが、生粋の日本人である俺は生理的に受け付けないモノを感じる。しかも自分より大きいとなれば、尚更怖気が止まらない。


 日本人で芋虫大好き、ペットにしたい! と思う人は少数に分類されるだろう。特に現代の若者ともなれば、こういう生物とはあまり関わりにならないし、なりたくないと思う者がほとんどだ。


 何が言いたいかというと、要するに。


 大っ嫌いということだ!


「フレイ! 全力で逃げろー!」


 俺は必死の思いで叫んだ。……俺、一回木から毛虫が降ってきて、顔に当たった時からちょっと過剰に毛虫に対するトラウマみたいなモノが生まれたんだよな。あの時は毛虫なんか全滅すればいいと思っていた。


「キュシャアアアァァァァァ!」


「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!」


 芋虫達は一斉に口から糸を吐いてくる。ネバァ、っとした嫌な糸だ。俺は思わず悲鳴を上げてしまう。……アルティやシルヴァ、フレイのいる場所で情けなく悲鳴を上げるとは……。だが背に腹は変えられない。


「……丁度いい。殲滅してやる……!」


 あの時の恨み、晴らさでおくべきか……!


「『ウエポンチェンジ』!」


 俺はツインフレア・オブ・チェンジエッジを展開する。


「……【エクスプロード・ツインスラッシュ】!」


 俺は紅蓮の双剣を持った両腕を交差し、腕を開くようにして振るう。すると刃で爆発が起こり、吐かれた糸を一網打尽に吹き飛ばした。


「今だ、フレイ! いくぞ!」


 俺はフレイと共に炎を巻き起こし、結局、芋虫系モンスターはあまり強くないこともあって、見える範囲全てが全滅するまで戦った。


 ……無駄にMPを消費してしまった。反省反省。


 だがあの頃の恨みは晴らしてやったぞ。満足満足。


 そうして俺達は谷を脱出し、海へと向かって飛翔していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ