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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
幻想世界の異常編

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幻想世界へ

 ……結局滅茶苦茶になってしまったグランドクエスト対策会議だったが、ひとまず、準備の方法は決まった。


 中小ギルドやソロプレイヤー、トップギルドまでが手を組んで幻想世界へと向かう。


 そのためのMP回復アイテム大集めから始まるだろう。


 トップギルドによる買い占め。『アイテム調合』系のスキルを持つプレイヤーへの依頼。MP回復アイテム大の素材の収集。


 こんなとこだろうか。


 俺の場合一人なので自分の準備をするだけだ。向こうに宿があるとは思えないので、HPとMP回復アイテムを買い込む必要があるが、素材は腐る程あるし、アリシャが言うには幻想世界は人間が足を踏み入れてないため、自然素材の宝庫だとか。レア素材も色々あるそうなので、楽しみだ。


 素材採集しながら過ごせばなんとか持つだろう。


「……いくわよ!」


 ナーシャが言って、『双子のエルフ』のサモナー五人で両手を前に伸ばし、目を閉じて何やら集中する。


 五人は五芒星の頂点に立つように並んでいて、五人を繋ぐように輝く線が引かれ、五芒星が現れる。


 そこに、穴が開いた。


「……おぉ」


 外で見ていた俺は感嘆の声を上げる。底が見えない、暗い穴。アンドゥー教教祖は空にゲートを開けたんだが、行くと来るの違いだろうか。


「……早く行って! 五人でも結構キツいのよ!」


 ゲートを開けてくれているナーシャが言った。見ると、もうすでに半分くらいMPが減っていた。トップクラスのナーシャでもこれなら、他で五人だと厳しいな。


「おう。ありがとな、ナーシャ。じゃ、ちょっと行ってくる」


 俺はナーシャに礼を言い、穴に飛び込んだ。


「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ……!」


 重力がかかっているのか、どんどん落ちていく。


 暗い穴が何秒か続くと、上の光が消える。ゲートを閉じたんだろう。これでもう後戻りは出来ない。


 さらに数秒すると、足元に光が現れ、すぐに暗い穴を抜ける。


 光に目を細めながら穴を抜けて、慣れてきた所で目を開く。


「……おぉ!」


 俺は目を輝かせる。


 落下していくため風を全身に受けながら、両腕を伸ばしてスカイダイビングのような気分だ。


 眼下に広がるのは、淡い色の大自然。淡い色彩が幻想的な雰囲気を醸し出している。


 だが、遠くの空にはワイバーンらしき影があったり、果てしない大地の先に巨人の群れがいる。


「キューッ!」


 アルティが俺の肩辺りで同じようにして落下していく。


 ……って、


「キューッ! じゃねえ!」


 俺は重大なことに気付き、叫んだ。


「キュッ!?」


 アルティは怒られてショックを受けていたが、後でフォローするとして。


「落下してんじゃん! あれか? 地面と空って繋がってるのか!? 兎に角このままだと死ぬ! フレイ!」


 俺はアルティを引き寄せて抱き、フレイをモンスターBOXから呼び出す。


「ピイィ!」


 金色の炎を纏ったフェニックスが現れる。


「フレイ! 俺達を乗せてそこら辺に着地してくれ!」


 俺が指示すると、フレイは頷いて俺達の下に飛んできて、乗せてくれる。フレイはゆっくりと地面に降り立った。


「……ふぅ」


「……キュゥ」


 俺とアルティは無事に地面に着地出来て、かいてもいない額の汗を拭った。


 ……幻想世界、か。


 全てのモンスターはここから始まる。


 もしかしたら、リヴァイアサンやレオンウルフ、フェニックスやキャニオンタートル、バハムートなどがいるかもしれない。


 そういえば、アリシャに忠告されたことがある。


 幻想世界はモンスターの領地で区切られていて、その境界線を踏み越えた場合抗争が行われる。抗争に負けたモンスターは領地から去るか、駆逐される。弱肉強食の世界だ。


 そして。


「……オオォ!」


 もちろんゲートを通った先に辿り着く幻想世界の大地は何かしらのモンスターの領地なので、出来るだけ会わずに移動すること。


「……ウオオォォォォ!」


 もし会ってしまった場合、交戦すると敵と見なされてしまうので注意。


「ーーって、もう囲まれとるー!」


 牛ぐらいの大きさのハイエナだ。オオハイエナと言う。レベルは四十前半。……マジか。オオハイエナってあっちじゃモンスターと動物の間って呼ばれるくらい弱かったのに。


「……グルルル」


 ズラリと鋭い牙が並んだ口の端から、涎が垂れている。……そうか。領地に入ってきた他の生物は、肉食系モンスターだったら全てエサ!


「……数は五十以上か。フレイってこんな幻想的な世界でも一際目立つからな。そりゃバレる」


「ピイ!?」


 俺が呟くと、フレイが自分のせい!? みたいな感じで俺を見てきた。


「……逃げられるか? いやーー」


 俺はこのままフレイに乗って空に逃げようかと思うが、空を見上げると、空域も領地が決まっているのか、二つ首の怪鳥が何体も飛んでいた。……無理ゲーだろ。大体、落ちてくる時点で飛べないヤツ死ぬし。落ちて生きてても地面にいるモンスターと空にいるモンスターに囲まれてジ・エンド。


「……しゃーない。ここの領地、奪うか」


 俺は大人しくフレイの背から降りる。……何か最近、考えが野蛮になってきてる気がするな。戦いに身を置くばかりだからだろうか。


「シルヴァ。クリスタ。リヴァア」


 俺は他の三体を呼び出す。


 巨体がいきなり出てきたからか、オオハイエナや怪鳥は少し距離を置く。……クリスタは止めとけば良かったな。空まで届く。


「クリスタとフレイは上を。他はハイエナを、殺るぞ!」


 こうして幻想世界での、最初の戦闘が始まった。

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