決裂
すいませんかなり遅れました
DIWの方は今日中に更新出来ると思います
出来れば他も……
俺が席に着くと、重々しい空気の中、ジュンヤが口を開いた。
「……それではリューヤも来たことだし、昨日零時を回った時点で発生した第二グランドクエストについて説明しよう。第一グランドクエストで戦ったバハムートが言っていたように、モンスターしかいない幻想世界に異変が訪れているらしい。どういう異変かは行ってみないと分からないが、荒れている、とだけ言っておこう。モンスターの世界だから、当然モンスターも強い。異変を解決すれば終了だ。何らかの期限は設けられると思う。アリシャ、補足頼んだ」
ジュンヤは笑みを消し、真剣な表情で言った。
「……ん。幻想世界とこっちを繋ぐゲートを開くには、サモナーが開く方法以外にはない。数人分のMPが必要。『双子のエルフ』を中心にサモナーにゲートを開けてもらい、突入。その間MPを消費し続けるため、大人数を送り込む場合には回復アイテムかたくさんのサモナーが必要。全員一気は到底不可能。ゲートは一回ごとに転送場所が変わる。特に、人数の多いギルドは回復アイテムをその分寄付」
アリシャはこくん、と頷くと言った。
「……それは俺達に言っているのか?」
『軍』のマスター、メッシュがアリシャに聞いた。
「……ん。当たり前。その他には『ナイツ・オブ・マジック』、『狂戦騎士団』、『暗黒魔術師団』、『戦乙女』、『SASUKE』は寄付。『双子のエルフ』はサモナーを使うため最後。十人以上から貰う。メンバー引く十の数、MP回復アイテムの大を寄付。出来ない場合は十人ずつ乗り込んでもらう。そうした場合、MPが回復するのを待ってから突入になる。嫌なら不参加。分かった、負け犬?」
アリシャはやや早口に、メッシュに向かって言った。珍しく刺々しい。負け犬ってのはメッシュのことだろうが、どういう意味だろう。
「っ! 貴様、ただ気に入られているだけの分際で……!」
メッシュが円卓を強く叩き、アリシャを強く睨む。
「……落ち着けよ、おっさん。で、アリシャ。それは、MP回復アイテムさえ渡せば同盟を組めるってことか?」
俺は邪魔なおっさんを宥め、アリシャに聞く。それに円卓にいたメンバーはピクリと反応した。
「……ん。リューヤ、一緒に行く?」
アリシャは頷き、誘ってくれた。
「いや。俺一人で行くし」
「「「っ!」」」
俺が即答で断ると、全員が驚いたような顔をしていた。……何でだよ。
「……俺ずっとソロでやってく気だし。協力はするけど。そういや、帰還ってどうするんだ?」
「…………終わったら帰ってこれる」
何故かアリシャの間がいつもより長い。どうかしたんだろうか。
「……じゃあ、準備が整い次第突入みたいな感じか? その間同盟組んだりMP回復アイテム大を揃えたりする訳か」
俺はふむふむ、と腕を組んで頷く。俺の肩でアルティも真似していた。
「……ん。ギルドは人数が多ければ多い程時間がかかるけど、ソロならすぐ行ける。リューヤは準備が出来たら出発していい」
アリシャはこくん、と小さく頷き言った。
「……待て。トップクラスのプレイヤーとは言え、一人で行くなど自殺行為だ。モンスターを甘やかすような甘ちゃんに先行などさせる訳がないだろう」
アリシャは、俺は俺のタイミングで行けばいいと言ってくれたんだが、メッシュがそれを制止した。
メッシュの言葉に、『双子のエルフ』両マスターや他のアルティを知る者がピクリと反応する。だが、一番頭に来たのは彼だったんだろう。
「……何やと? それは俺に喧嘩売っとんのか?」
エアリアの相棒、鎌鼬のカイだ。目を鋭く細め、今にも襲いかかりそうな雰囲気さえある。
「……モンスターの分際で俺に口答えするのか?」
だがメッシュは嘲りさえ含んだ笑みで返した。それにカイが飛びかかりそうになるが、エアリアが手で制した。
「……俺の相棒を侮辱するのは止めろ。『SASUKE』と戦争する気があるなら別だが?」
エアリアが強面の顔をさらに険しくして牽制した。
「……ふん。忍者集団ごときが『軍』に勝てるとでも思ってるのか? モンスターを相棒などと呼ぶその愚かさもそうだが、そのマスターは頭も回らないのか」
メッシュがさらに挑発めいたことを、嘲笑を浮かべながら言うと、エアリアをバカにされて怒ったのは、カイとアリアだ。エアリアはしかし、それも手で制した。
「……エアリア様……!」
「エアリアはん!」
二人の声に、エアリアは黙したまま答えない。……腸煮えくり返る思いだろうな。
マスターとして、場を弁えようとしている、か。二人よりは大人のいい判断と言いたいところだが。
「……そんな男を好むアリアもアリアだな。いい加減、分かれーーっ!」
メッシュがアリアをバカにし始めた時、疾風が会議室に起こった。エアリアの姿が消え、一瞬の内にメッシュの背後へと回り、首筋に忍者刀を突きつけた。……速いな、相変わらず。そして相変わらずアリアのことになるとすぐキレるし。
「……俺のことをどう言おうが勝手だが、アリアを侮辱するなら、殺すぞ」
エアリアが冷たい声で言った。……これじゃあ会議も何もぶち壊しじゃねえかよ。まあ用件は済んだし、もう帰ってもいいんだが。
「マスターに手を出すな!」
副マスターがエアリアに向けて剣を抜いた。
「……はいはい。そこまでにしようぜ、お前ら」
まさに副マスターがエアリアに斬りかかろうとしている時、俺は手を叩いて仲裁に入る。
「……ったく。会議に来たらこれって、場を考えろよ」
俺は言いながら、席を立って止まっているエアリア達の方に歩く。……モルネに関しては、分際と言われたアルティの仕返しをしないことが不思議らしく、唖然としていた。
「……ああ、それとおっさん。一つ訂正だ」
俺が仲裁に入ったことにより、微妙な戸惑ったような空気が流れる。
「……何だ」
エアリアが離れると苛立たしげに鎧を直したメッシュが聞いてくる。
「……トップクラスのプレイヤーじゃない。トッププレイヤーだ。勘違いするなよ」
俺はとりあえずどうでもいいことを訂正しておく。
「……はっ。何を言うかと思えば、そんなことか。残念ながら勘違いはお前だ。お前のような甘いガキに俺が負けてるとでも?」
メッシュは余程自信があるのか、嘲笑して言った。
「……ああ。お前、もう特殊職言ったんだって? まあそれはセンゾーもシンヤも一緒だし別に自慢出来ることじゃないよな。じゃあレベルか? お前が自信あるのは」
俺はメッシュの方を見ずにアルティを撫でながら言った。
「ああ、そうだ。俺はレベル七十二。ソロでもマスターでも七十を越えているのは俺だけだ」
メッシュが周囲を見下して言うと、全員が苦虫を噛み潰したような顔をしていた。メッシュの言う通りだからだろう。
七十から必要経験値が跳ね上がるからな。レベルに乗じて必要経験値が上がっていくが、五十と七十と九十の境は跳ね上がる。それでも二レベも上げてるんだから大したもんなんだろう。
「……足りないな」
「あ?」
「……やっぱり、アリシャの言う通り負け犬ってことか。もしくは井の中の蛙」
「何だと!?」
俺がメッシュに哀れんだ視線を向けると、メッシュが怒りを露にして怒鳴ってきた。
「……七十二、か。アルティは七十三なんだが、分際と言ったモンスターよりも弱いってのはどんな気分だ?」
俺はメッシュを見下し、嘲笑を浮かべる。メッシュや他の皆は驚愕に目を見開いていた。
基本モンスターの必要経験値はプレイヤーよりも高い。まあ俺がアルティばっかり使ってるからだな。他ももちろん高いが。
「……七十三だと……? モンスターで何故そこまで……!」
「……無限迷宮。あれの階層突破記録は全部俺だ。俺がレベル上げに無限迷宮を使ってるのは分かると思うが、アルティぐらいの大きさなら余裕で入れる。一緒に戦うのは当然だろ?」
「キュウッ!」
俺の言葉に呼応するように、アルティが俺の肩で立ち、メッシュを見下して得意気な顔をする。
「くっ……!」
「……因みに、リヴァアが七十二。クリスタが七十。フレイが七十一。シルヴァはまだ新入りだから六十前半だな。お前、これでもバカに出来るか? 分際以下の負け犬が」
俺はここぞとばかりにフッと笑う。それがさらにメッシュの怒りを煽った。
「……お前はどうなんだ! モンスターが強く飼い主が弱いのはよくあること! 雑魚が俺を負け犬と呼んでいいと思うな!」
メッシュは怒鳴り散らす。どうやら、自分のレベルを言わない俺がメッシュよりも低いと思っているらしい。……熱くなってバカになってるのか、それとも元からバカなのか。まあどっちにしろ、情けをかけてやってたのに。
自分からプライドをへし折られに来るとはな。
「……七十八だ」
「……は?」
俺が小さく呟いた言葉に、メッシュは聞き返してくる。聞こえなかったのか、それとの聞こえたのに信じられなかったのか。
「……だから、言ってるだろ。俺のレベルは七十八。無限迷宮のレベル六十以上を相手にしてるんだから、当然のレベルだ」
「……なっ……」
メッシュがポカーンとアホっぽく口を開けているのに満足したのか、他の皆はニヤリとしていた。
「……分かったら出直してこい、負け犬。エフィ、ナーシャ。至急サモナー集めてくれ。ちょっと幻想世界、行ってくるわ」
俺はメッシュから興味をさらになくし、ナーシャとエフィを向いて、笑って言った。




