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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
幻想世界の異常編

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襲撃前夜

 俺は襲撃予告をした後宿泊を断ったことを少し後悔しながら、アルティを抱えて野宿していた。


 アルティは俺の服に入るとすやすや寝ていた。俺も特に寝づらいというわけでもなく、熟睡出来たと思う。


 だって、周囲にいるヤツに気付かなかったんだからな。


 翌朝俺を探しに来たアスラリアス五人に保護というか捕獲され、集落へと連れていかれた。


 基本人間の俺より優れたアスラリアスが五人で俺を捕獲するのは用心深いんじゃないかと聞いたら、


「特別待遇です」


 とあっさり答えられた。……嫌な特別待遇もあったもんだ。


 そんなこんなで長の家まで連れていかれた俺は、憮然とする中に憤怒の炎が見え隠れした長と対面した。


「……昨日のあれはどういうことだ?」


 長は単刀直入に、俺がした襲撃予告のことを聞いてきた。……まあ、そりゃそうだろうな。


「どういうことも何も、俺が昨日の位置から先に襲撃というか陽動をすれば、お前らが楽に倒せるんじゃないかと思ったんだよ。あとは私怨だ」


 せっかく刃を向けてまで脅した教徒があっさり口を割りやがった。おかげで自力でこっちに来るという挙動不審をとらずに済んだとも言えるんだが、処刑なんてその気になればいつでもされることが出来た。


 街を徘徊して、教徒を見つけてぶん殴ればいいだけだしな。気に入らないヤツを殴るのに躊躇なんかいらない。特に、アルティをバカにされたら殴る。


「……余計な真似を……!」


 長は俺をその鋭い眼光で睨んでくる。……どうして素直に受け入れられないかね。良かれと思ってのことなんだが。


「……別に、俺も手出ししていいって言ってたから、俺は俺のやり方でやっただけだ。それを言った長に文句を言われる筋合いはないな」


「……かといって、限度というモノがあるだろう! 度が過ぎている!」


 長は机をバン! と叩き、立ち上がる。


「俺は俺の考えで動いてるんだよ。文句は言わせねえ」


 俺はやってしまったことは未来への糧にしたいので、立ち上がって長にくってかかる。


「……分からず屋が」


「何だと? そっちこそ分からず屋だろうが」


 俺と長を互いに胸ぐらを掴んで睨み合う。


「……いいぜ、男同士がいがみ合ったら拳で片をつけるんよな?」


 俺がニヤリと笑って挑発すると、


「いいだろう。昨日と同じく倒してやる!」


 長はプライドが高いので、あっさりと俺の挑発に乗った。


 俺と長は表へ出て、再び殴り合いへと突入した。


 今回は俺も勝つ気で挑むので、昨日よりは善戦したが、やっぱりというか、人間はアスラリアス勝てないらしい。


 結果はもちろん、長の勝ち。俺は地面に仰向けになって倒れていた。


 集落の人々が長の勝利に歓喜を叫ぶ中、プレイヤーのモルネが俺の方に歩いてきた。


「……バカ」


 無表情にバカを見る目で言うもんだから、心にグサリときた。


 モルネはそれだけを言い逃げして長の方へ小走りに向かっていき、


「……大バカ」


 と囁くのが聞こえた。……俺が一介の冒険者なのに対し、長は集落をまとめる長だ。そんな長が軽い挑発に乗って熱くなったからだろうか、モルネの評価は俺より低かった。


 ……長はズー……ンと沈んでしまい、周りのヤツが頑張って慰めてやっと立ち直った。


 その後宴会が行われて、昼は豪勢になっていた。


 誇りを賭けた戦いに備えて英気を養うためだとか。


 その割りには酒を飲んでるヤツもいて、どんちゃん騒ぎだった。


 そこで俺は長と酒を飲み交わしていた。


 ゲームでは十四で成人のとこもあるし、俺も酒が飲める。まあ飲めるといっても脳のデータから読み取ったアルコール耐性に基づいて量によって酔い加減が決まるというシステム的なモノなんだが。


 しかし飲み過ぎると状態異常、泥酔になるので要注意。まず、立てなくなる。まあ、泥酔状態でフィールドに出るヤツなんか滅多にいないだろうけどな。


 俺は少量なら酔わないから、酒には強いらしい。


 大量に飲むってことはあんまりなくて分からない。


 ……俺のしっかりした妹リィナさんが酒の飲み過ぎについて厳重注意をしてくるからだ。


 何でも、リィナと姉ちゃんの実の父親は酒飲みで、仕事もせずに飲んだくれていたらしい。


 失業してからは堕落していき、泥酔状態でストレスの矛先が母さんに向けられ、DV、つまりはドメスティック・バイオレンスーー家庭内暴力が行われて、そこを親父に助けられて離婚したんだとか。


 その頃はリィナを身籠っている頃だったらしい。


 それからは母さんをサポートしつつ、その一年前くらいになるが俺の実の母親が俺が生まれた時に死んで、そこを母さんに支えてもらってーー。


 で、実家に帰ってこいとか色んなことがあって、俺が三歳の頃に結婚、という経過だったハズ。


 親の馴れ初めなんて、聞き流すもんだろ。


 しかも、ウチの両親の馴れ初めは重いし途中が暗い。あんまり聞きたくないのも本音だった。


 ……まあ、馴れ初め話の度にニヤニヤとあれやこれやを自慢する親父が面倒だったのが一番だったと思う。


 特に夜テクについて語る親父がヤバかった。最初は殴ったね。……その後は姉ちゃんかリィナの平手打ちが飛んできて、回数は極力減ったんだが、ふとした拍子に出てくるらしい。


 変な親父だ。


 まあ話を戻すと、飲んだくれ親父にさせないために酒の量をゲーム内でも制限するという二人の切実な想いが俺にあまり酒を飲ませていないと。


 とまあ兎に角前夜祭は盛り上がった。


 俺は大抵の相手なら勝つ自信があるので、教団ってのを警戒すれば成功すると思う。


 いや、成功させる。


 弱者を見下すだけの強者なんて、それは外道だ。


 俺は、偽善だとしてもそれが許せなかった。

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