アスラリアス
一ヶ月以上も間を空けてすみませんm(__)m
予定よりもかなり遅れてしまい、すみませんでした
次話は出来るだけ早くしたいと思います
「……えーっと」
俺は少女に声をかけようと思ったが、どう声をかければいいか、迷ってしまう。
「……トドメは任せた」
少女はそう言って、去ってしまう。
「……アルティ。いいぞ」
蹴り飛ばされて隙だらけのダークネス・ブラックグリフォンに、アルティが影の刃で切り裂いて、トドメを刺す。
美味いだろうから、アルティに食わせてやろう。
「ケプッ」
さすがに量が多かったのか、可愛らしくゲップする。
「キュ~」
アルティが座り込んで俺を見上げ、両手を伸ばす。これは、抱っこのポーズだ。
「はいはい」
腹一杯で満足げなアルティを両手で抱え、モルネの行った方へ歩く。
▼△▼△▼△▼△
「……」
モルネと同じ髪の色、眼の色をした人達がボロい小屋に集まっていた。みすぼらしく、痩せている。モルネが痩せていないのは、プレイヤーだからだろう。
「モルネ、さん。状況説明、してくれるか?」
俺はモルネに声をかける。
「……ここだとマズイから、あっちで」
モルネは俺を他のヤツとは離れた場所に連れていく。
「……これはどういう状況だ?」
モルネと同じ種族らしいヤツらは皆生きた目をしていない。どこか諦めたような表情だ。
「……。ここは亜人が集まる区域。私以外はNPCだけど、私はここにずっといる。ログインしてデスゲームになった頃からこの国を滅ぼすことをクエストにされていた。けど、私一人じゃ出来なくて、何故か最近やっと依頼出来るようになったから、依頼した」
……なるほど。さっきの敵への攻撃を見るに、かなりの高レベルだと思ったんだが、一度も見かけたことがないのは、ずっとここにいるからか。
そして、クエストを依頼出来るようになったのはそろそろ第二グランドクエストを発生させてもいいと思ったからか。
「何で出来ないんだ?」
「……ここにはNPCなのに大人は大体私より強い人がいる。本気になればこの国を落とすことも出来る」
マジか。まさか、ゲーム内固有の種族で、モルネもそれなのか?
「……私はホビットを選択したハズ。なのに、種族はアスラリアス。このゲーム固有の種族で、身体能力と肉体の強度は種族一。アスラリアスは昔からこの辺に住んでいて、今は数が減ってるけど、集落は国一つが落とせる程の勢力だった。そこにこの国の原型の国が作られ、集落はそこに入ることにした。だけど、教団が来てからは表で虐げられるようになり、ここに追いやられた。定期的にモンスターを入れられ、不意打ちでだんだん減ってる。今はもう戦う気力もない」
モルネは、チラチラとアルティを見ながら言う。
「……長とか、そういうのはいるのか?」
「……いる。ここにある一番大きな家にいる」
「そうか。じゃ、アルティ。俺はちょっと用事があるから、モルネさんのとこでのんびりしてな」
アルティの頭を撫でて言い、さっきから気になってるらしいモルネに渡す。
「……いいの?」
「ああ。危ない目には合わせるなよ」
「キュ~」
アルティはモルネに抱っこされて、睨むようにモルネを見る。
「……」
「キュウッ!」
しばらく睨み合って? いたが、アルティがモルネの手から脱出し、ペチッとモルネの頬を叩いた。……何を伝えたいんだ?
「……可愛い。子供達に会わせる」
一方叩かれたモルネは気にせず、アルティを抱えて小走りに去っていった。
「……さて」
俺は長とやらに会いに行くかな。
▼△▼△▼△▼△
「……誰だ、お前は?」
俺は長の家っぽいでかい建物を見つけ、一応長か確認して家に入っていた。
「俺はさっきここに落とされたばっかりの冒険者だ」
「……そのさっき落とされたばかりの冒険者が何の用だ?」
「……ちょっと、話をしようかと思ってな」
長はモルネと同じ髪の色瞳の色だったが、目付きが鋭く髪はポニーテールで長い。体格は細マッチョって感じだ。
「……」
長は何も言わなかったが、俺と話すことなんて何もないと言いたげだった。
「モルネから聞いたんだが、お前らアスラリアスはこの国に反乱を起こしても勝つ力を持ってるらしいな」
「……。モルネはお喋りで困る。確かに種族として人間よりも上位にある我らだが、現にここまで数を減らしてきている。それは、人間が我らより上になってしまったことを示しているのだ」
「だけどさ、奇襲をかければ人間なんてチョロいもんだぞ? 例えば、一斉に壁を壊して兵を無力化しながら上がっていけば、余裕でてっぺんまでいける」
「……それかもしれないが、我らは殺さず、人間は殺すという有利不利のあるお前の意見では厳しいだろう。第一、お前が人間のスパイの可能性もある」
長は俺を睨んでくる。……怖いな。
「……信じろ、とは言わないが、俺にはテイムモンスターがいてな。そいつがバカにされたからついつい反発しちまったんだ」
「……どんな理由にしろ、我らは反乱を起こす気はない。どうせ、それがお前の用件だろう。モルネはここ最近、そればかりだからな」
長は頭が痛いかのように頭をおさえて言う。
「……モルネはこの状況をどうにかしたいんだ。ここにいれば投入されるモンスターによって数を減らし、全滅してしまうかもしれない。……今思いついたんだが、このまま逃げるのは無理なのか? 壁ぐらい登れるだろ?」
反乱が嫌なら、逃げればいいんじゃないか?
「……よじ登るしかない。だが、後ろから蜂の巣だ」
……それもそうか。
……。
…………。
仕方がない。あまりいい方法じゃないんだが、上手く乗せてやろう。
「……結局、意気地なしの臆病者ってことか、アスラリアスってのは」
花見でエアリアにしたように、俺が立派に悪役を演じてやろうじゃないか。
俺は心の中でニヤリと笑い、現実では見下したような笑みを浮かべる。




