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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
流れる冷水編

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番外編:聖夜の夜に

間に合いました

「……くっ!」


 俺はトナカイが午後十時になっても見つかっていないと知り、ダッシュやら転移やらで世界中を探し回っていた。


 トッププレイヤーが散策しているが、すれ違いや行き違いでまだ見つかっていない。


 アルティに俺がサンタだってバレないように、トナカイを見つけ出してサンタが配ったことにしなければ。子供の夢を壊してしまうことになる。


 実際にサンタはいるんだが、アルティのとこには来ないんだよな。


「どこだよ、ったく!」


 俺はフィールドを走り回っていた。


 リィナと姉ちゃんはサンタの見張りをしてくれている。


 一度トナカイを渡した二人には二度トナカイを渡せないからだ。サンタの居場所が分かっていれば、すぐに連れていける。


「リューヤ」


「リューヤさん、こんばんは」


 サンタ姿のエアリアとアリアの忍者カップルが俺と同じように全力疾走しながら声をかけてきた。


「ああ。お前らもトナカイ探しだろ? カイはどうした?」


「ああ。カイはクリスマスなんて異国の文化や! とか言ってふて寝しているが、実は寝ていないとプレゼントが貰えないとアリアが言ったからかもしれないな」


 エアリアは苦笑して言った。


「そうか。でもカイって結構年上だよな? プレゼント買うのか?」


「ああ。一応買っておく。だが、どうやってあのカイの近くにプレゼントを置くのか」


 ……あいつ、聴覚いいもんな。


「ま、俺もアルティにプレゼント置くけど。……そうだ。エアリア、お前なら気付かれずに置けるんじゃないか?」


「……多分な。それは後にしよう。今はトナカイだ」


「ああ!」


 俺とエアリアとアリアは三手に分かれ、トナカイを捜索する。


 それから一時間四十分後。ギリギリでトナカイを発見し、リィナに連絡してサンタの居場所を教えてもらい、サンタにトナカイを渡した。


「……ふむ。子供達に夢を配る。それがサンタクロースという者じゃよ。これでその使命が達成出来る。トナカイを届けてくれた諸君らにも、プレゼントをやらねばの。いい子で待っているといい」


 サンタはそう言い、光輝くソリに乗って、赤鼻のトナカイ二体に合図し、空を駆けていった。


「……アルティのプレゼント、やっぱ自分で何とかするわ」


「……ああ。お前自身で渡してこい」


 まあ、バレないようにはするが。


 俺は少し急いで宿屋に向かい、部屋に入る。すると、アルティが静かに寝息をたてて寝ていた。


「……メリークリスマス、アルティ」


 俺は小さく呟いてプレゼントをソッと、アルティの頭枕元に置いておく。


 俺もアルティを起こさないようにベッドに入り、寝てサンタを待つことにした。


 ▼△▼△▼△


「キューウッ! キューウッ!」


 アルティがプレゼントを抱えて小躍りしていた。


 喜んでくれたみたいで嬉しいんだが、プレゼントが三つあった。


「……ん?」


 俺の方にも一つプレゼントがある。


 サンタが一つずつくれたんだろうか?


「アルティ、開けてみな」


「キュウッ!」


 アルティは意気揚々と帯をほどき、箱を開けていく。


 俺のあげたクマのぬいぐるみと赤いマフラーに加え、アルティにぴったりなサイズのサンタ服が入っていた。


「キュー!」


 アルティは全部気に入ってくれたようで、サンタ服とマフラーをまとめて置いて、ぬいぐるみを抱えてとてとてと歩いていく。


 行き先は女将さんのとこだった。


「キュウッ!」


 ぬいぐるみを抱えたままなんとかカウンターに登り、女将さんに見せる。


「ぬいぐるみかい? よかったね。大事にするんだよ」


 女将さんはチラッと俺の方を見て言った。


「キュ~?」


 アルティはぬいぐるみを置くと、女将さんが何やら作業してることに気付き、小首を傾げた。


「……ああ、私からもお客さんにプレゼントを配っていてね。小さいけどホールケーキだよ」


 包装された箱とリボンとケーキが置いてあった。


「キュウッ!」


 アルティはとん、と自分の胸を叩く。手伝うということらしい。


「手伝ってくれるのかい? じゃあ、これと同じようにリボンが出来るように練習してごらん」


 女将さんはアルティにリボンを縛ってある箱と別々のモノを渡す。


「キュウッ!」


 アルティは嬉々としてそれに取りかかった。


「リューヤ。朝ご飯はいるかい? ケーキだけ食べる?」


 女将さんは俺に聞いてくる。


「ケーキだけ貰おうかな」


「はいよ。……あれ? アルティは?」


 女将さんが不意にカウンターを見ると、アルティがいなかった。あるのは箱とリボンが縛ってある箱の二つだけ。


「……ュ」


 ん?


「アルティ?」


 声が聞こえた気がして、呼ぶ。


「キュー!」


 アルティ!?


 リボンのない箱の中から聞こえた。


「……」


 ゆっくり箱を開けてみると、赤いリボンが身体中に絡まったアルティが入っていた。


「……私がプレゼントです的な?」


 違うよな。アルティ涙目だし。リボン結ぼうとして絡まって転けたら箱の中に入って蓋が閉まったと。


「今ほどいてやるからな」


 アルティを箱から出して、リボンをほどいてやる。


「……よしっ。じゃあ、夜になったらプレゼント着て緑の王国ファンドリアに行って、街の中心にあるでかいツリー見に行こうな」


 イルミネーションが綺麗らしい。


 ▼△▼△▼△▼△


「……おぉ」


「……キュゥ」


 俺とアルティはでかいツリーを見上げて感嘆の声を漏らす。


 アルティはプレゼントのサンタ服に赤いマフラーをしている。


 俺はサンタから貰ったプレゼントの装備の漆黒のマフラーだった。結構長いのは少し問題だが、効果がいいのでこれからも着けておく。


「……綺麗だな」


「……キュウ」


 ……来年も見るのかどうかは兎も角、この景色は忘れないようにしよう。


 アルティと見たこの景色を、俺はきっと忘れないだろう。

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