ダークドラゴンとDDD
「レムちゃん!!」
咆哮の効果が終わり、動けるようになったエフィが消えゆくレムに駆け寄る。
「オオオオオォォォォォォ!」
危ない、と言おうとしたが、ヘカトンケイルのカイルが怒りを込めてダークドラゴンをぶん殴り、吹っ飛ばした。
「レムちゃん! やだよ! 逝かないで!」
エフィが泣きながらレムに叫ぶ。
「……ゴォ」
最後、レムはエフィの頭に手を置き、笑ってーー穏やかな雰囲気で消えていった。
「……レムちゃん」
「……エフィ」
俺はエフィに何て声をかけたらいいかわからなかった。ゴーレムは比較的序盤でゲット出来るモンスターなので、エフィとレムは長い付き合いだったかもしれない。
「……よくも、よくもレムちゃんを!」
しかし、エフィは顔を上げ、涙を拭うと、恨みの籠った瞳でダークドラゴンを睨む。……怖い。
「【ビーストストロング】! 【ゲインスピード】! 【アスラアーム】! 【ゴッドブレス】! 【ガードディフェンス】!」
突如、テイマーのモンスターのステータスを上げるアビリティを連発するエフィ。
【ビーストストロング】は獣のようなパワーを手に入れるという意味で、攻撃が上がる。
【ゲインスピード】は移動速度が上がる。
【アスラアーム】は魔神の腕力を手に入れるという意味で、攻撃が物凄い上がる。
【ゴッドブレス】は状態異常、怯みなどにならなくなり、全ステータスが程々に強化される。
【ガードディフェンス】は防御をかなり上げる。
「……エフィって怒ると怖いな」
攻撃重視だし。
「絶対、許さないんだから!」
エフィのその言葉に応えるようにモンスター達が吠える。
そんなアビリティがあるんなら最初っから使え? バカ言うなよ。テイマーは基本MPが少ないんだ。序盤で使って、HPが五割を切ると攻撃が上がる能力を持ったヤツだと、アビリティの効果が切れて殺される。念のためとっておくのが常識……らしいけど。
「リューヤさんもボーッとしてないで!」
「はい」
エフィに怒られてしまった。
「……じゃあ、やるか」
俺は目を細めて、身を呈して俺を守ってくれたレムの敵、ダークドラゴンを睨む。
そこから、ダークドラゴンへのレムの敵討ちが始まった。
▼△▼△▼△▼△
「【フロスト】!」
ヨトゥンがダークドラゴンの足元を凍らせて動きを封じる。
「【聖竜斬】!」
俺は聖竜剣・ホーリードラゴンを上段から振りかぶって、ダークドラゴンの左翼を切り落とす。
クエストには破壊部位報酬もある。
「【アイシクルニードル】!」
アイスバハムートが氷のトゲをいくつも放ち、ダークドラゴンの全身に突き立てる。
「これでとどめ! 【アスラブラスター】!」
エフィが叫び、残り少しのダークドラゴンのHPを削るため、ベヒーが黒いモノと紫電を放った。
「グガアアアアァァァァ!」
ダークドラゴンは断末魔を上げて粒子になって消えていく。
「……ふぅ」
最近楽ばっかりしてたから、ダークドラゴンの相手はキツかった。
「……レムちゃん」
エフィはレムを失って落ち込んでしまった。
「……エフィ」
俺はエフィにあるものを渡す。
「あっ。ダークドラゴンの卵?」
漆黒の卵に銀の翼の模様がある卵だ。ダークドラゴンが消えた後に残っていた。
「ナーシャも」
もう一個の卵はナーシャに渡す。
ピキッ。
早速、殻にヒビが入った。生まれるらしい。
ピキピキッ。
「「クウッ!」」
ちっちゃな黒いドラゴンが顔を出した。
「「可愛い~!」」
二人は目を輝かせて、ダークドラゴンの子供を見る。
……いつも冷静なナーシャがこうやって喜んでると、新鮮だな。
「ん?」
俺は奥の方に突き刺さってる長剣を見つける。
「……闇竜剣・ダークドラゴンか」
アヴァロンソードより黒い漆黒の剣。聖竜剣・ホーリードラゴンと形状が似てる。
「……」
俺はそれを左手で抜こうと、柄を掴む。
「っ!」
触れた瞬間、左手の甲に痛みが走った。
「……?」
ーーーーあなたはこの闇竜剣・ダークドラゴンの使い手に選ばれました。利き手の甲にダークドラゴンの呪い、闇竜紋が出来ます。竜紋はドラゴンの呪いの総称です。呪詛と同じようなものだと思ってください。そして、闇竜剣・ダークドラゴン、邪竜剣・イービルドラゴン、光竜剣・シャインドラゴン、聖竜剣・ホーリードラゴンの四対の長剣を最大限に発揮出来るようになります。竜紋を持つ者の固有スキル『ドラゴン・ドラグーン・ドラグオン』、通称DDDが使えるようになります。
「……」
左手の甲には、漆黒のドラゴンを模した紋章が出ていた。……手袋買おっかな。
「リューヤさん?」
振り向くと、ダークドラゴンの子供を頭に乗せたエフィと、サモンモンスターとなったのかダークドラゴンの子供がいないナーシャがいた。
「ああ、闇竜剣・ダークドラゴンを見つけてな。ちゃんと俺の物になったぞ」
闇竜紋のことは隠しておく。
「良かったね。……私も、落ち込んでないで頑張らないと。ギルドマスターなんだから!」
ダークドラゴンのおかげで、エフィは立ち直ったようだ。
「そうよ。もっと強くならないと。帰るわよ」
「うん」
ナーシャが言って、二人並んで歩いていく。
「……」
やっぱ、ソロって寂しいな。まあ、こうやって他のプレイヤーと組むことも増えてきたけど。
「……まあ、いいか」
一人の方が動きやすいし、俺の攻略に他のヤツらを巻き込みたくない。
聖竜剣・ホーリードラゴンの場合、実際にホーリードラゴンを倒したわけではないので竜紋は手に入りません。
倒せば手に入りますが。




