表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
流れる冷水編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/165

鎌鼬のカイ

時間が飛びます。

「……ふあぁ」


 俺は大きく欠伸をする。


 今日は前々から話し合っていた、エアリアとのクエストの日だ。


 エフィとナーシャの方は新メンバーの指導で遅れていて、結局、二ヶ月経った今でも実行出来てない。


 エアリアとは一ヶ月前に誘われて、受けた。


「さて、いくか」


 俺はゆっくり起き上がって、宿屋の部屋を出た。


 ▼△▼△▼△▼△


「よっ」


 待ち合わせ場所に立っているエアリアに声をかける。


「ああ、リューヤ」


 今回のクエスト『疾風の鎌鼬』は疾風の草原というフィールドにいる。内容は、鎌鼬を倒すか説得すること。エアリアは俺でいうアルティのような相棒が欲しいらしい。


 エアリアの速度についてこられる、『テイム』をゲット出来るクエストがこれだった。


「行こうぜ」


「ああ」


 俺とエアリアは疾風の草原に向かう。


 ▼△▼△▼△


「この辺か?」


 木が少ない。サバンナの草原に近いだろうか? 前に来た時はアルティがはしゃいでた。草原の覇者だからな。


「そのハズだが」


「あんちゃんら、何しに来とんねん」


「「っ!」」


 近くの木から声が聞こえた。


「そない警戒しなさんな。俺は誇り高き妖怪、鎌鼬や。俺を退治しに来よったんか?」


「いや。説得しに来た。鎌鼬、俺の所に来ないか?」


 エアリアは木の上にいる緑毛のイタチのようなヤツに答える。大きさはアルティより大きい程度だ。


「ふーん? あんさん、職業は何や?」


「忍者だ。今は暗殺忍者だがな」


「おぉ! 俺の故郷、大和の職業やないかい! 道理で俺んとこ来よったわけか!」


 鎌鼬は笑って喜ぶ。……こっちじゃ日本は大和なんだな。


「ああ。俺の動きについてこれるヤツが欲しくてな。鎌鼬、お前なら出来ると思ったんだ」


「当たり前や! 俺が人間に遅れを取るわけないやろ! ……まあ、口だけ達者なヤツもおるもんやしな。実力見たる。俺に一撃でも当てたらええで」


 ……まさかの、モンスターがルールを決めた。俺、必要ねえじゃん。


「二人がかりでもええ! 俺に一撃当ててみぃ!」


 シャッ、と鎌鼬が高速移動を始める。


「むっ。俺でも目で追える程度か」


「……速いな。ほとんど見えねえ」


 霞んで、大体の位置がわかる程度だ。


「だが、問題ない」


 シャッ、とエアリアが本気で鎌鼬を追う。


「……モンスターと同等ってどうよ?」


 獣か、あんたは。


 エアリアと鎌鼬はほぼ互角のスピードで、鬼ごっこをしていた。


「ええな! あんさん最高やで!」


 鎌鼬の嬉しそうな声が聞こえる。


「【三本クナイ】!」


 高速移動の中、エアリアが鎌鼬に向かってクナイを放つ。


「ちぃっ!」


 キキィンという金属音と共に、クナイが弾かれた。


「「……」」


 両者は一時止まる。


 エアリアは両手に手裏剣とクナイをいくつか持っている。


 鎌鼬は両手が鎌になっていた。


「あんさんええなぁ。名前を聞こうやないか」


「エアリアだ。お前は?」


「鎌鼬のカイや。よろしゅうな」


 自己紹介はともかく、二人共息が乱れていない。スタミナが半端じゃなかった。


「まあ、あんさんええけど、世の中にはもうちょい上がいるんやで。俺にはよ一撃入れて、一緒に戦おうや」


「そのつもりだ」


 エアリアは両手の手裏剣とクナイを一斉に投げる。


「【カマイタチ】!」


 鎌鼬は両手の鎌を振り回して風の刃を放ち、手裏剣とクナイを弾く。


「甘いな」


 投擲を牽制に、エアリアは鎌鼬の背後に回っていた。


「やるやないか! だが、俺には風の壁があるんや!」


 鎌鼬の周りを風が渦巻いてエアリアの攻撃を阻むーーことはなかった。


「なっ!?」


 エアリアの持つ風切りの小刀。アリシャ曰く、風なら切り裂ける。


「俺の勝ちだな」


 エアリアは鎌鼬の頬に浅い切り傷を付けた。


「何や、そないな傷でええんか?」


「ああ。これからは相棒になる相手だからな」


「おもろいな! 改めてよろしゅうな、エアリア」


「ああ。こちらこそよろしくな、カイ」


 こうして無事、鎌鼬のカイはエアリアのテイムモンスターとなった。


 ▼△▼△▼△▼△


「エアリア。あんさん、こないな美人の女がおったんか」


「美人だなんて、ありがとうございます」


 アリアはカイに褒められて照れていた。


「ええ女やんけ。俺も故郷にいた頃はモテモテやったんや。もし俺の女がおったら、アリアはんにテイムしてもらうわ」


「……マスターとテイムモンスターでイチャイチャする気か」


 俺は三人の様子を眺めて、聞こえないように呟いた。


「ダブルデートですね」


「まあ、そうだな」


「白い兄ちゃんの言う通りなったらええなぁ」


 ……忍者は聴覚がいいようだった。


「ところでエアリアとアリアはんはどこまでいったんや? Cか? Dか? Aはさすがにないやろ」


 ん? ABCってあれか? カップルがどれだけ進んでるか、みたいなヤツか?


「……むぅ」


「……えーっと」


 二人は返答に困っているらしかった。まあ、おいそれと人に言えることじゃないもんな。


「手、手を繋ぐぐらいは……」


「「はあ!?」」


 俺とカイがすっとんきょうな声を上げる。


「そない奥手でどうすんねん! 小学生かあんさんら!」


「Aがキスだろ!? それ以下って何だよ! 小学生か!」


 最後のツッコミが同じだったのは、仕方がない。


「……そう言われても、な」


「エアリア様が奥手なだけですが」


「「……ああ、そういうこと」」


 アリアの一言で何故か納得する俺とカイだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ