全プレイヤー共同作戦
「っ!」
俺はバハムートを攻撃することだけを考える。
だから、いつものようにブレスを受けたりしない。無駄にHPを消費するだけで、今回は防衛戦じゃないからだ。
防御は最低限で、攻撃はなるべくかわす。
「グオオオオオァァァァァ!!」
最前線にいる俺に狙いを定めたらしいバハムートが、尻尾を薙ぎ払ってくる。無防備に当たると即死しかねい、高威力な攻撃だ。
「はっ!」
俺はタイミングを見計らって、ジャンプする。
空中で転がるように尻尾の薙ぎ払いを避ける。
尻尾を薙ぎ払った後、バハムートは必ず無防備な背中を見せる。
「ここだ!」
絶好の攻撃チャンスだ。それを見逃さず、俺は全速で駆け、
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」
ジャンプした。
「はっ! せいっ! おらぁ!」
バハムートの背中を切りつけて蹴り上がり、切りつけて蹴り上がり、切りつけて蹴り上がって、三回目で頭まで上がってくる。……少し無駄に攻撃したかもしれない。
「グガアアアァァァァァ!」
バハムートが俺の方を向いて吠える。
口に光を収束させていく。
「おせえよ。【マグマ・ダブルバースト】!」
両手の紅い大剣を二つ同時に振り下ろす。その刃には大気を蒸発させるマグマが纏われていて、敵に触れるとマグマが吹き出て相手を溶かす。
まあ、バハムート相手だと頭を吹き飛ばす程度だな。
「ガアァ!」
溶けた鋼が頭を再構成する。頭が吹き飛んでダメージは大きいが。
俺はバハムートが頭を再構成させている間に地面に降りる。
「……ふーっ」
一息ついて、気持ちを鎮める。闇雲に突っ込んで返り討ちに遭う前に、冷静さを取り戻さないと。
「っ!」
俺はすぐに攻撃に移る。
「【マグマウェーブ】!」
バハムートに攻撃される前に、ツインフレア・オブ・チェンジエッジからマグマの波を放って牽制する。
「【アイシクルフェザー】!」
聞き覚えのある声が聞こえ、バハムートに氷の羽根がいくつも突き刺さる。
「【火遁・火龍炎】!」
これも聞き覚えのある声だ。炎で出来た東洋の長い龍がバハムートを襲う。
「【フォトンレーザー】!」
光の光線がバハムートの右翼を切断する。
「【ダークネス・ディザスター】」
バハムートの足元から闇のトゲがいくつも出現していき、バハムートを闇の針山に閉じ込めた。
「……ったく」
俺は呆れながら、笑う。
バハムートが一時的に動きを封じられてるので、後ろを振り向く。
そこには、顔馴染みの皆と、多くのプレイヤーが集まっていた。
「一人よりも皆で戦った方がいいよ」
ジュンヤが言う。
「当たり前だろ。あーあ、折角一位になって報酬武器貰おうと思ってたのに」
俺は安堵しながら、嘘をつく。
「お兄ちゃん、無茶したらダメだからね!」
リィナが少し遠くから声をかけてくる。
「はいはい。わかったよ、協力プレイだろ?」
「ええ。今のリューヤの攻撃のおかげで、バハムートのHPは、二本ある内の一本になったわ。だから、総攻撃を仕掛ければ何とかなると思うのよ」
姉ちゃんは言う。
アルティ達があの四体を相手している間に本隊が頑張ったからだ。俺の攻撃なんて、それに比べればほんのちょっとだしな。
「……作戦がある。皆でやれば出来るハズ」
アリシャが頷きながら言う。
「作戦?」
「……ん。バハムートは溶けなければ、普通のドラゴンと同じ身体の作りをしてる。だから、鱗の中は柔らかい。……リューヤに危険な役割をさせることになるけど」
「……任せろ。んで、その作戦ってのは?」
「……それは――」
アリシャの口からその作戦ってのが語られる。
「……面白いことを考えるんだな」
「……ちなみにアリーン、女将の案」
マジか。……まあ、いつも使ってるようなもんを使うからな。
「んじゃ、いくぜ。ベルセルク、センゾー、メア、千代、シンヤ、カナ」
俺は作戦で俺と同じ班になった六人に声をかける。
「はっ! てめえなんざに遅れは取らねえよ!」
「そりゃ、頼もしい」
ベルセルクに答え、作戦を開始する。
バハムートはもう、闇の針山からでていた。
「【アイスノネットドラゴン】!」
リィナが氷の九頭の龍でバハムートを襲う。連発出来ない魔法らしい。半分以上のMPを消費する。
リィナは今回、補助に回っている。氷魔法は作戦には直接関係ないので、ありったけの魔法を喰らわせればいい。MP回復要員の初期プレイヤーが何人か付いている。
「はっ!」
俺達七人の役割は、バハムートの鱗を斬り、傷を付けること。だから、俺はツインフレア・オブ・チェンジエッジはつかわない。アヴァロンソードとブレード・オブ・ロッド使う。
「はぁ!」
エアリアとアリアと忍者軍団、それから姉ちゃんなどの素早さが高い職業が集められている班。作戦の要となる班だ。
この班は攻撃しない。ただ、白い粉を巻いているだけだ。……避けることに専念して余裕のエアリアは、白い粉を俺達が付けた傷に擦り付けていた。
……神経図太いな、エアリア。
「ガアアアアアアァァァァ!!」
イラついたバハムートがブレスを放ってくる。
「「「【シールドガード】!」」」
ブレスは一直線に後方にいる班に向かうが、盾を構えたプレイヤー達に阻まれた。
後方は五つの班に別れている。
ブレスを防ぐための、盾戦士や防御の高いモンスターなど、とにかく防御に特化した班。プレイヤーは『軍』のメッシュを筆頭に、モンスターはエフィのゴーレムことレムとアイアン・ゴーレムことイアンを筆頭にしている。後方の班では一番前だ。
バハムートの気を前衛の俺達に向けさせないための、弓や銃などの遠距離武器を使うプレイヤーと攻撃魔法しか使えないプレイヤーの、遠距離特化班。武器はクイナ、魔法はリィナを筆頭にしている。防御特化班の後ろにいる。
前衛のプレイヤーと防御特化班に補助魔法などをかける、付与補助班。魔装を使うアリシャとリーファン、自分のモンスターを強化するエフィとナーシャを筆頭にしている。遠距離特化班の後ろにいる。
攻撃を喰らってしまった前衛のプレイヤーと防御特化班のダメージを回復する、回復班。ミュリアとイルネアを筆頭にしている。付与補助班の後ろにいる。
一番後方、まだ何もしない魔法職が集まっている。エアリア達同様、作戦の要となる班だ。
「そろそろいいぞ!」
俺は頃合いを見て、前衛の皆に叫ぶ。
「退却! 捕縛魔法班は捕縛魔法を!」
後方からのジュンヤの合図があり、前衛のプレイヤーが退却していく。それに攻撃しようとするバハムートを、地面から出てきた色々な蔓や縄で動きを封じる。
「さあ、終わりだ」
全員後方に下がったのを確認して、
「フレイムボール」
俺はその一番前で、バランスボール並みの大きさの炎の球を放つ。
「捕縛魔法解除!」
ジュンヤの指示で捕縛していたモノがなくなる。
炎の球がバハムートまであと数メートルまで来た瞬間。
ドガガガガガガガガガガガッ!!!
大爆発が起こった。
粉塵爆発。小麦粉などの粉塵に火を放つと爆発するあれだ。詳しい説明は省くが、エアリア達は小麦粉をばらまき、遠距離特化班の魔法職(リィナを除く)が粉塵爆発に必要な環境を整え、俺達はバハムートの鱗に傷を付けて内部にまでダメージを与えるようにし、準備が整ったら退却して捕縛魔法班はバハムートの動きを止め、最後に俺が火を与える。
これが一連の流れだった。……女将さんの思いつきだが、唐揚げを作る時に思いついたらしい。
粉塵爆発はバハムートを襲い、煙幕ですぐに見えなくする。
……バハムートはどれくらい喰らっただろうか。




