デスゲーム開始
あまり面白くない話です。。。
この場面が終われば本格的に始まりますので
「――っ!?」
目が覚めた俺は、移動させられたことを理解した。
しかし、それほど移動した訳でもないらしく、あまり景色が変わっていなかった。一つ、変わったとすれば、プレイヤーの多さだろうか。
まるで、全プレイヤーを集めたようだ。
プレイヤーが最初にログインする場所は決まっている。それがここ、『始まりの街』だ。街の中にログインする。
「リィナ、大丈夫か?」
まだきょとんとして動かないリィナに声をかける。
「……」
「リィナ!」
「……」
駄目だ。ポケーとしてて反応しない。
「リューヤ。私に任せて」
いつの間にか姉ちゃんがいて、というか、あの場にいた全員が固まって移動させられたみたいだな。『戦乙女』のメンバーは全員ポケーとしている。
「……(ボソッ)」
姉ちゃんが小声でリィナに何か囁く。
「っ!?」
すると、リィナは顔を真っ赤にして目を見開いた。
「お、お兄ちゃん……?」
ちょっと怖がってるようにも見えるくらいの顔で、ギギギ、と俺の方を向いてくる。
「ん?」
どうした?
「お兄ちゃん、私が一瞬裸だったってホント?」
「は? ……知らんけど」
何の話だよ。
「ホントよ。ここに来る時は、光が一瞬、裸にしたのよ」
マジか。って、何で姉ちゃんが知ってるんだ?
「ああ、私はすぐに目を覚ましたの。って言うか、私は移動させられた時は意識なかったけど、こっちに来てからすぐに回復したのよ」
なるほどな。
「別に、見てないけどな」
俺もんなこと知らんかったし。
「そ、そうなんだ」
リィナはほっとして言う。
「ここ、街のどこなんだ?」
俺は誰に聞くでもなく言う。
「大広場だよ、お兄ちゃん。真ん中の噴水が目印」
ほら、と真ん中に位置する噴水を指差す。でかいな。
「それにしても、強制招集をかけるほどの権限を持った人が、何の用なのかしら」
姉ちゃんは冷静に状況分析していた。
「さあな。だが、あいつに聞きゃあいいんじゃねぇの?」
俺は噴水の上空に浮き上がっている影を睨む。
「あっ――」
『ようこそ、infinite ability onlineの世界へ。諸君、私が阿迦井利彦だ』
「あ、阿迦井って、あの?」
「何でこんなヤツが……」
そいつの名前を聞いた人達がブツブツと囁いていた。
「阿迦井利彦…………って誰だ?」
思わず、少し大きい声で言ってしまった。
ガクッ。
……スゲェ。全員が、阿迦井も一丸となってずっこけた。
『……意外だな。このゲームをやっていて私の名を知らないとは……』
阿迦井は驚いたように首を振る。
「おいおい。全員が自分の名前を知ってるって思ってるって、どんだけ自意識過剰なんだよ」
ナルシストめ。
「「「いや、お前が知らないだけだから!!」」」
「えっ?」
まさかの、全員にツッコまれた。ノリがいいな、ニート達よ。
『……自意識過剰ではない。このゲームをやっているならば知っていると考えただけだ。――阿迦井利彦、このゲーム、infinite ability onlineを開発した者だ』
おぉ。開発者だったのか。道理で皆知ってる訳だ。
「開発者直々に呼び出したってことは、この状況を説明してくれるんだな?」
俺は問い質すように聞く。
『……ああ、その通りだ。――IAOは、多くの人を楽しませるために作られた。しかし、今さっきのことだが、ログアウト、ログインが不可能となった』
阿迦井の一言で、全体がざわめく。
「……メンテナンスミスか?」
『我々も最初はそう思っていた。が、ある者によるハッキングだったのだ』
ハッキング?
「あんたんとこの会社は最新技術、最高機密って聞いてるんだが?」
『ああ。しかし、ハッキングされたのだよ、IAOの全システムをな』
「「「っ!?」」」
この状況は、だからか。
「あんたんとこの会社をハッキングするって、どんなハッカーだよ」
有り得ねえ。しかも、正式サービスが始まって間もないってのに。
「お、お兄ちゃん。テレビでニュースになってた人なら出来ると思うよ」
ニュースになってたヤツ?
「ああ、“乗っ取り女王”ってヤツか」
企業などのハッキングをする女ハッカー。ただし、今までずっと逃げられている。……とかいう。
「違うよ。“乗っ取り女王だよ」
リィナに訂正される。どっちでも一緒じゃねえ?
『その通りだ。その女にIAOはハッキングされ、デスゲームと化した』
「「なっ!?」」
阿迦井の一言でさらにざわめく。デスゲーム、だと?
「HPがなくなったら、死ぬってのかよ?」
冷静を保とうとするが、掠れた声が出た。
『……ああ。こんなことになってしまって、本当に申し訳ない』
阿迦井が深く頭を下げる。……開発者として、自分の作ったゲームが犯罪に使われるのは、かなり嫌だよな。
「謝って済む問題じゃねえよ! ここから出せ!」
一人の男が叫ぶと、愕然としていた人々が次々に呼応して叫び始めた。
「そうだそうだ!」
「ここから出せ!」
うるさいな。喚いてどうなる問題でもないってのに。
「……すー」
俺は大きく息を吸う。
「てめぇら、いい加減にしろ!!!」
思いっきり怒鳴った。
「「「……」」」
「お、お兄ちゃん……?」
「……リューヤ」
全体が静まり返った。姉ちゃんとリィナが驚いたように呟いていたが。