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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
第一グランドクエスト編

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46/165

やれることをやろう

「……」


 俺はあるアパートの部屋の前に立っている。


『不審者はいれないよ?』


「っ!?」


 急に声が聞こえて思わずビクッとなる。


「……井剣可奈、であっているか?」


 俺はリューヤに示された三人の内の一人、井剣可奈の住むアパートを訪ねている。


『あってるけど?』


 インターホンから話しているようだ。……普通のインターホンは中からは話せないが。


「龍ヶ崎燈夜に言われたのだが、“乗っ取り女王(ハッキング・クイーン)”からInfinite Abilities Onlineを取り戻して欲しい」


 短く、用件だけを伝える。


『燈夜が私を頼ってくれたの!?』


 いきなり井剣可奈の声音が明るくなった。


「……あ、ああ。他の二人もだが」


 俺は戸惑い気味に言って、しまったと思う。


『……ふーん』


 井剣可奈の声音は冷たく、無機質なものに変わった。


「だ、だが、順番は井剣可奈が最初だったな」


 俺は慌ててフォローする。……俺は他人の感情には鋭い方だ。


『……まあいいよ。燈夜のそれは今に始まったことじゃないからね』


 意外とあっさりしていた。


『阿迦井利彦、阿迦井って呼ぶけど。阿迦井は自分で取り戻す努力した?』


 井剣可奈は大人である俺に全く敬意を払っていない。……俺はそれを不快だとは思わない。俺だって、他人に敬意など払わないからな。


「……した。第一、俺の会社のセキュリティが突破された時点で差は歴然としていたが」


 何度か会社員を総動員してハッキングを行ったが、全て失敗に終わっている。


『ふーん。ま、どうでもいいけど。でも、僕もハッキングはしてみたんだけど、無理だったね』


 あっさり、重要なことを言った。


「何っ!? ハッキングを試みたのか!? 何階層まで辿り着けた!?」


 俺は声を荒らげる。深くまで辿り着けたなら、俺の会社と共同でやればいけるかもしれない。


『……落ち着いてよ。まあ、僕は三階層までだったね』


「っ!?」


 “乗っ取り女王(ハッキング・クイーン)”のセキュリティ階層は十階層まである。それを考えると、大した数字ではないが、一人でやったとすれば、俺の会社と同等(・・・・・)だと?


「……末恐ろしい」


 第二の“乗っ取り女王(ハッキング・クイーン)”になれるかもしれない。


 他二人も同じぐらいなんだろうか? だとすれば、いけるかもしれない。3+3+3+3が十以上だからというわけではなく、足りない部分を補えばいける可能性がある。


『……一応教えてあげるけど、他二人も三階層までだって』


 ! ……想定内だ。


「俺の会社と三人で協力しないか? 協力すれば燈夜だって早く助けられるだろう」


 俺は本題に持ち込む。今回の訪問は三人に協力を求めるためだ。


『……もういいや。もう三人でやったよ。僕達はライバルだけど、それなりにお互いの実力は認めてるんだ。だから協力したんだよ? でも無理だった。……五階層まではいったけど、見たこともないウイルスにパソコンごと殺られたよ。……わかったら、会社に戻って少しでも早く攻略出来るようにアップデートでもすれば?』


「……」


 俺は言葉を失った。俺の会社と同等のハッキング能力を持つ三人が協力して五階層? そんなの不可能ではないか。


『それは悪い知らせ』


「えっ?」


 どういうことだ?


『いい知らせもあるけど。私達三人は五階層までハッキングして、それぞれが攻略の手助けをした』


 ……焦らせるな。絶望して脱け殻のようになるところだった。


『私は各プレイヤー一回、武器生成で大成功する確率を上げた。天利はイベントクエストの追加と、フィールド効果の追加。シャルロットは時間差があるけど、新スキルと武器スロットの開放。まあ、燈夜の手助けが出来るようにってそれにしてるんだけど』


「……燈夜を手助け出来て、他のプレイヤーにも効果のある手助けというわけか」


 ……ハッキングが出来なくても、ただでは終わらないのが凄い。


『じゃ、責任持ってゲーム管理してね。――もし燈夜が死んだら、企業を片っ端からハッキングして倒産させるから』


 ゾクッと背筋を寒気が走る。……本当にやりかねないのが怖いところだ。


「……わかった。ではな」


 俺はアパートを離れる。向かう先はもちろん、会社だ。


 俺は、俺がやれることをする。


 ▼△▼△▼△▼△


「聞いてくれ。“乗っ取り女王(ハッキング・クイーン)”へのハッキングは諦める」


 俺は会社に戻ると、開口一番そう言った。もちろん、会社員はざわつく。


「だが、希望を捨てるわけではない! スキルの追加やアップデート等、我々が出来る範囲でプレイヤーを全力でサポートする! 我々は、我々のやれることをやろう!」


 先程自分で決意したことを叫ぶ。


「「「――はい!」」」


 五十人以上の管理者が、声を揃えて答えた。

現実の話は終わりです。


次は最終決戦になるかと。

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