現実:阿迦井利彦
短めです。
「……ふーっ」
俺は大きく息を吐く。
「……」
“乗っ取り女王”に俺の作ったInfinite Abilities Onlineを乗っ取られ、プレイヤーにデスゲームになったことを告げた。
「リューヤ、か」
デスゲームだということを告げても俺も責めなかった。
「どうかしました?」
「……いや。面白いプレイヤーに会ったのでな」
心配そうに見つめる秘書に向かって軽く手を振る。
「……ふぅ」
さて。リューヤの言っていた三人の情報を仕入れるか。
俺ーー阿迦井利彦は行動を開始した。
▼△▼△▼△▼△
「もしもし」
俺はリューヤ、龍ヶ崎燈夜の通う高校へと電話をかける。
このご時世だ。個人情報など、インターネット上にいくらでも載っている。
「はい、どちら様でしょうか」
「阿迦井利彦、Infinite Abilities Onlineの開発者だが」
名乗れば、だいたいの事情は伝わる。あのハッキング女は、自分のしたことをネットに載せる傾向があるからな。IAO乗っ取り事件もすでにニュースになっている。
「あ、はい。阿迦井利彦様。何のご用でしょうか?」
僅かに緊張が声になる。
「まず、貴校の生徒を今回の事件に巻き込んでしまったこと、誠に申し訳ない」
先程まで、巻き込んだプレイヤーの家族や会社、学校に電話をしていた。……それで燈夜のことを調べるのが後回しになってしまったのは言うまでもない。
一応アップデートなどの管理はしているので、今はプレイヤーが急な南の森のイベントクエストに困惑して対策を練っている頃だろうか。
「……いえ。全ては“乗っ取り女王”の仕業ですから」
……心の中では俺を非難しているに違いない。
「すまないが、本題に入っても?」
「本題、ですか?」
わざわざ燈夜の高校を後回しにしたのは、リューヤの言っていた三人のことを知るためだ。謝罪義務とは別に聞く必要がある。
「ああ。ゲーム内でリューヤ……燈夜くんと直接話し合ったのだが、“乗っ取り女王”からInfinite Abilities Onlineを取り戻せる可能性がある三人を紹介され、その三人の所在を知りたいのだが」
「ああ、二年の特別待遇生のことですかね。燈夜くんの言う三人ならば」
あっさりと納得されてしまった。
燈夜の名が事務の教師に知られていることも意外と言えば意外だ。
「……龍ヶ崎燈夜の人物像を聞かせてもらっても?」
「いいですよ。龍ヶ崎燈夜くんは、優しく誰にでも気兼ねなく接し、スポーツや勉強もこなし、明るく社交的な性格、ですかね。簡単に言えば、生徒ウケも教師ウケもいい次期生徒会長候補ですよ」
思った通りというか、燈夜はリーダーシップを発揮する側なようだ。
「そうか。それで、三人の所在だが……」
「はい。いいですよ。――」
教師は三人の住所を口にする。
「性格は会えばわかると思いますが、単位が免除されている引きこもりの娘なので、気を付けてください。あと、燈夜くん以外は簡単には会えないと思いますのでご注意を」
教師は意味深に言って電話を切った。……俺はあまりいい印象を持たれていないらしいな。
「……では、行くか」
俺は、“乗っ取り女王”に対抗するために三人の女子高校生を訪ねに向かった。




