バハムートの襲来⑦:ソロプレイヤー大集合
「リューヤ殿、いくでござるよ」
「ああ、はいよ」
こいつも努力の人なんだろうな。
「……待て」
「ん?」
急にメアが話しかけてきた。
「お前がリューヤか」
「そうだが?」
俺も有名になったもんだな。
「そうか。俺はメアだ」
メアはフードを外して握手を求めてきた。……歩いて近づいていたらしい。
「ああ。よろしくな」
メアは黒髪に黒い瞳。少し暗い印象を受ける。
「……リューヤ。俺はお前を見ていた。……デスゲームになったと宣言された時、俺は素直にお前を尊敬した」
「……ただ、俺は俺のやりたいようにやっただけだ」
正面から言われると照れるな。
「……お前のように強くなりたいと思いフィールドに出た。だが、お前は落ちぶれたのか?」
……。
「最強と呼ばれていた頃の影はないと言われるくらいに」
「……ああ。今はアルティ達がいて楽してるからな。あん時みたいにがむしゃらにレベル上げしてないんだよ」
自嘲気味に笑って言う。
「なら、いい。……兄として妹を現実に返そうと必死になっていると思っていたが、そうでもないみたいだからな」
「……」
俺は俺なりに頑張ってるつもりだ、とか言いたかったが、言えなかった。
「メアは、カナを返すために頑張ってるんだな」
「当たり前だ。俺は自己犠牲をしてでもカナを返す」
……まあ、俺は臆病者だからな。死ぬ気で戦えねえや。
「やれることはやるつもりだぜ、メア」
「……そうか」
本当に興味なさそうに言う。
「……リューヤ。落ち込んでないで戦いに参加して」
アリシャが言う。すでにバハムートと忍者軍団が戦っていた。
「ああ。わかってる」
俺は集中する。
「『ウエポンチェンジ』」
俺は手にT・Gを出現させる。
「『ウエポンチェンジ』」
メアも鎌をしまって漆黒の銃を出現させる。
「……デッド・オア・アライブ。弾丸に闇属性が付与される、裏ギルド討伐報酬武器」
アリシャが武器の説明をしてくれる。
「おー! 二人共銃ならクイナも入れてよ!」
クイナが片手に鋼色の銃を持っていた。
「……ブラストガン。目に見えない空気の弾丸を撃つ音と風の銃」
そういや、レア武器の一つだって言ってたな。
「「「【フレイムボム】」」」
くしくも、三人同じアビリティを、同じタイミングで使った。
炎を纏う三つの弾丸、黒炎を纏う漆黒の弾丸、炎だけの弾丸がバハムートに放たれる。
『魔砲』のアビリティの一つ。触れた瞬間爆発を起こす。
「『ウエポンチェンジ』」
クイナはもう武器を変える。俺達に合わせたらしい。
移動式の巨大な大砲だ。
「……千天大砲。固有スキル『千天砲術』が使える『魔砲』専用武器」
専用武器か。ブレード・オブ・ロッドもそんな感じだろうから、かなりのレア武器か。
「【千天流星】!」
ガン! と思いっきり千天大砲をグーで叩く。
砲口から金色の弾丸が不規則な軌道を描いていくつも放たれる。
「グガアアアアァァァァァァァ!」
三人同時の【フレイムボム】とクイナの【千天流星】によってバハムートがイラついたようだ。その怒りの矛先は近くにいる忍者軍団へと向けられる。
「『ウエポンチェンジ』」
メアも武器を変える。
今度も鎌じゃなく、大振りな剣の、剣先に銃口がついている漆黒の武器だ。
「……剣砲ダークシャドウ。闇を纏い闇を放つ剣砲。裏ギルド討伐報酬武器」
……そういや、さっきから討伐討伐って、捕獲じゃないのか?
「【ダークネス・デザガイア】」
剣砲を両手で持って呟く。砲口から黒々とした波動が放たれる。
それは忍者軍団を狙ったバハムートの尻尾に当たって、弾いた。
「……やるなぁ」
俺は苦笑する。
「……【魔装第十七番・破戒奏】」
アリシャが『魔装』を使う。忍者軍団から俺やメアまで、両手にガントレットが出現した。
「【魔装第十三番・疾走戯】」
リーファンも『魔装』を使う。今度は全員の両足に風を纏わせる。
「ガアアアアァァァァァァァァァ!!!」
バハムートがブレスを放つ。その先にはセンゾーが立っている。
「……」
「っ!」
センゾーは動こうともしない。俺はそれに叫びそうになるが、センゾーにも考えがあるんだろう。
「『明石剣技居合い流』、【一の型・八咲仁】」
腰の日本刀を一閃。それだけでバハムートのブレスは真っ二つになった。
「おいおい。どんな自己流剣技だよ」
明石剣技なんて聞いたこともない。道場で作ったんだろう。
「……噂では現実にある剣術らしい」
なるほど。それなら、道場で作るのも簡単だろう。
「……『絶対刀剣区域』。拙者の間合いに入ったならば、全方位のいずこにも拙者の刀は届く」
決めゼリフのように呟いた。
「……パッシブスキル。今までに一度も自分の間合いで攻撃を受けてない。確か、五十回は必要」
剣術を知ってるヤツはこっちに来ても役に立てるんだな。
「……リューヤ」
「ん?」
メアが話しかけてきた。
「この戦い、お前に勝負を挑む。どちらが真の最強かを決めるために」
「……はいよ」
全力で攻略するつもりだったのに、サボり気味だった根性を叩き直すには丁度いい相手だ。
「「『ウエポンチェンジ』」」
二人同時に武器を変える。
俺はツインフレア・オブ・チェンジエッジ。
メアは最初に背負っていた大鎌と、やや小さめの柄の先に銃口のようなものが付いている漆黒の鎌。
「では、いくか」
「ああ!」
本格的に、バハムートとのバトルを開始した。
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その後。
バハムートの襲来戦は順調に進み、残すところ最終決戦のみとなった。
ベルセルクとツァーリがケンカしたり。
リィナがツァーリに目をつけられたり。
久し振りに本気で姉ちゃんとリィナと共同戦線をしいたり。
ベルセルクがセンゾーに目をつけて、武士道がなってないとバトルの約束をしたり。
メアとカナとアリシャという似た者同士、二人兄妹が一緒に戦ってたり。
エフィとナーシャとラウネと一緒にモンスター大進撃やったり。
残りのバハムート戦はトラブル続出だった。
次回は随分前にやって放っておいた現実世界の話になります。
バトルばっかりで飽きてる人もいると思いますので




