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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
第一グランドクエスト編

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バハムートの襲来③:『狂戦騎士団』

「キュ……」


 昨日疲れたせいか、アルティがうとうとしていた。


「眠いなら留守番してるか?」


 まだ寝惚けてるし。


「キュウ……」


 首を左右に振って俺の服を掴む。


「……目覚めないと、負けちゃうぞ」


「キュウ」


 ちょっとはやる気で目が覚めたようだ。


「じゃ、行くか」


 アルティを抱えて、次の決戦場所である、カーシャ村へと向かった。


 ▼△▼△▼△▼△


「おっ? 人がいるな」


 珍しい。しかも、俺の見たことない連中だ。


「おーい、お前ら、グランドクエストに参加するのか?」


 とりあえず、話しかけてみる。


「ああ?」


 ギロッ。話しかけるなり、俺にガン飛ばしてきた。


「そう睨むなよ。一緒に戦うんだからさ」


 怖いし。


「あん? 一緒にだ? なめてんじゃねえよ、兄ちゃん」


 ……何だこいつら。目付き悪いし口も悪い。さらにはガラも悪いな。


「おい! 雑魚にかまってねえで待機してろ!」


 ビクッ。俺に絡んできたヤツが萎縮した。


「……雑魚呼ばわりされたくはないが、お前がこいつらのリーダーか」


「……ああ、俺は『狂戦騎士団』のリーダー、ベルセルクってんだ。凶騎士やってんだよ。んで、てめえは誰だ?」


 ……こいつがレア武器持ちの一人、『狂戦騎士団』のリーダーか。


 短髪に狂喜に満ちた眼。格好こそボロボロだが、腰に差してある短刀はレア武器らしい。


「俺はリューヤ。あんたの言う通り、雑魚いソロプレイヤーだ」


「ハッ! 嘘つき野郎が。リューヤっていやぁ、IAO最強のプレイヤーじゃねえかよ。……見たところ剣士みてえだし、ちょっと殺し合わねえか?」


 ……戦闘狂か。見た目通りというか、何というか。


「遠慮する。俺じゃ、あんたに勝てそうもないんでな」


「ハッ! 何の冗談だ、そりゃ? 強いヤツと戦ってこその俺だ。てめえとはぜってぇ殺し合わねえとな」


 ベルセルクは口端を吊り上げて、笑う。


「……そこまで言うならいいが、グランドクエストをクリアしたら、決闘デュエルで勝負だ」


「……チッ! 殺し合わねえんだったら面白くねえ! ……が、てめえと殺るんだったら面白そうだ。いいぜ、その条件を呑んでやる」


 ……ふぅ、よかった。


 ズズゥ……ン。


「来たな」


 バハムートがカーシャ村に降り立った。


「野郎共! 戦闘だ! 死ぬ気で殺しに行け!」


「「「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 戦闘狂の集まりだが、統率はとれてるんだな。


「……回復いなさそうだな」


 死亡率高いんじゃないのか?


「回復なんざ必要ねえ! 殺される前に殺す。それが俺達、『狂戦騎士団』のモットーだ!」


 ベルセルクがニヤリと笑う。


「……それが出来れば苦労しないっての」


 俺は呟きながらツインフレア・オブ・チェンジエッジを構える。


「まあ、俺も回復タイプじゃないんで」


 攻撃の方が性に合ってる。


「話がわかるじゃねえかよ。まあ、撤退させりゃいいだけだがな」


 そういや、こいつらも一応βテスターだったな。


「場数だけなら、俺より上ってか」


「ああ。言っとくが、邪悪竜ん時はサボってたが、今はてめえごとき、抜いたって確信があるぜ?」


「……まあ、剣一筋だろうからな」


 プレイヤーキルの方が経験値は入るらしいし。


「てめえみたいな剣も魔法も使う、半端なヤツが嫌いなんだ。……まあ、強さだけは認めてやるがな」


 ……俺も嫌われたもんだな。


「はっきり言って、俺はあんたらに負けると思うぜ?」


「あん?」


「残念ながら、俺は死にたくないからな」


「ハッ! とんだ甘ちゃんだな! 俺らは戦って死ぬ。それも、とびっきり強いヤツとな!」


 ……死ぬのも、暗いのも嫌いだ。カッコつけはするが、怖いしな。


「……お前の言う通りだな」


 少し自嘲気味に笑って言う。


「……ハッ! てめえみたいな腰抜けと殺り合ったところで面白くもねえよ」


 失望したような視線を向けて、ベルセルクもバトルに参加し始める。


「……」


 ……ふぅ。戦闘狂に、色々考えさせられるとは、情けない。


「俺も、頑張んないとなぁ」


 気分を戻すために、少し軽く言う。


「……さて」


 俺も参加するか。


「おい! 甘ちゃん! 死ぬ覚悟は出来たのか?」


 バハムートの近くまで駆けると、ベルセルクが声をかけてきた。


「いや」


「あん? じゃあ、何でこっち来たんだよ。臆病者は、部屋の片隅で震えてりゃいいだろ」


 確かに、ベルセルクの言う通りだ。


「ああ。臆病者の俺には、それがお似合いだろうけどな。守りたいヤツらがいるんだよ。――そいつらのために、俺は戦う」


「……ハッ! 調子乗ってんじゃねえ! ……だが、てめえと殺し合う程度には見直したぜ」


「……うわっ。それなら帰った方が良かったな」


「あん?」


 こえーよ、睨むなって。


「――俺は甘いから、一緒に戦ってるヤツ全員生きていて欲しい。もちろん、お前もだぜ、ベルセルク」


 俺はニヤッと笑って、ベルセルクの横に並ぶ。


「いい度胸だ! てめえを俺の殺したいリストに載せてやるぜ、リューヤ!」


「……それは遠慮したいな」


「あん? ノリ悪いヤツだな」


 いや、誰もそんなことは望んでねえし。


「まあいい。目の前のこいつ殺したら、次はリューヤだぜ?」


「わかってる。その代わり、今は協力……共闘してこいつを倒すぞ」


「当たりめえだ!」


 こうして、俺は戦闘狂のベルセルクとフレンドになった。『狂戦騎士団』のメンバーは何人か死に、その度に一丸となってバハムートに立ち向かっていった。


 性格はあれだが、根はいいヤツかもしれない。

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