裏ギルド
「船長、モンスターもいますぜ! テイマーもやったんでしょうか!」
「気にすんな! どうせ見掛けだけの雑魚モンスターだ! やっちまえ!」
「「おう!」」
……騒がしい。
そいつらは帆にドクロのマークを掲げた船四艘だ。真ん中の一艘が巨大なガレオン船だから、あれが本体だろう。
「……可哀想な奴らだ」
俺は呟く。
「海の上で俺に勝てるとでも思ってんのかよ?」
全く。
「身の程をわきまえろよ。……いくぞ」
言って、アルティを肩に乗せて、リヴァアに乗って沖に出る。
「フレイ、空中から攻撃。特にマストを狙ってくれ」
「ピイ」
「クリスタ、後からでいいから戦闘に加わってくれ」
「コオォ」
よし。
「じゃあ、俺らが雑魚じゃないって見せつけてやれ!」
そう言ってから、海賊の方へ向かう。しかし、武器は変えない。
「『釣竿武術』の真髄、見せてやる」
そんなもん知らないが。
「こっちに向かって来ますぜ!」
「関係ねえ! やっちまえ!」
やれるもんならやってみろ。
「避けろ、リヴァア!」
大砲が放たれ、それを超スピードで避ける。リヴァアは大人になってでかくなったが、遊泳速度が格段に早くなったらしい。
「『船釣り』」
針を船に引っ掛け、思いっきり引っ張る。
「うおっ?」
船は傾くが、倒れなかった。
「ピイイイ!」
フレイが【フレイムダイブ】でガレオン船のマストを燃やす。
「コオオオオオォ!」
クリスタが追い付いてきて、海一面を凍らせた。
「ったく。やりすぎだ。リヴァア、動けるか?」
「ガアアアァァァ!」
氷を砕いた。確か、そんなスキルがあったな。
「【投げ縄】」
そろそろ頃合いなのでたくさんの縄を投げる。
「何だこれ!?」
「くそっ! ほどけねえ!」
海賊全員を縄で縛った。
「【シャドウブレード】」
アルティのスキルを発動する。
各々の影から刃が出現し、首に突きつけた。
「ひっ!」
「死にたくなかったら降伏しろ」
俺はそう言って、海賊全員を捕らえた。
▼△▼△▼△
「あっ、お兄ちゃん。これ見て」
街に戻ると総合掲示板の前にリィナがいた。
「どうかしたのか?」
「うん。最近、お兄ちゃんが海岸のエリアボス、全部倒してたよね?」
「ああ」
「それで海が安全になったからか、海賊が結構出てきたんだって。ほら、賞金首もいる」
「へぇ。まあ、俺の狩り場は海岸が主だしな。会ったら捕まえるさ」
「ふぅん。――で、その人達は?」
リィナが半眼ジト目で俺の後ろを見る。
「ああ。その海賊だ」
「……うん、賞金首が四人。海賊ギルド、『イーグル海賊団』に間違いないね」
「報酬がありそうで何よりだ。それで、こいつらはどうする?」
「……監獄行き。新しく監獄っていう施設が出来たから、そこに送っとくね」
「サンキュ」
「くそっ。まさか噂に聞くリューヤに会っちまうなんて……!」
「……お兄ちゃん、氷漬けで監獄行きでいいかな?」
「……いいんじゃないのか?」
ちょっと怒ってるリィナは、杖を構える。
「アイスプリズン!」
カチィン。見事に全員氷漬けにされた。
「転送」
アイテムウインドウから何かの玉を出して投げる。氷塊に当たると、どこかに消えていった。
「お兄ちゃんに手を出したら、氷漬け決定なんだから!」
それで怒ってるのかよ。
「ありがとうな」
久し振りにリィナの頭を撫でてやる。
「……うん。お兄ちゃん、報酬は引き渡した後に貰えるから、もうあると思うよ」
リィナはさすがに恥ずかしいのか、俺の手から逃れて言った。
「そうか。……ふーん。結構いいのがあるな」
「どんなの?」
「金はもちろん、回復アイテムもある。刀、月凪と銃、T・Gの二つの武器だな」
どっちもレア武器だ。
月凪は固有スキル『月凪剣術』が使え、長い刀の柄の先に鎖が付いていて、その先端に三日月型の金属が付いていた。
T・Gは固有スキル『三連銃術』を使え、黒光りする全体のフォルムはトリガー式の片手銃。俺は銃に詳しくないから名称は知らないが、重く、かなり大きい。特性は一回で三発同時に撃てることだな。
「へぇ。お兄ちゃんがまだ極めてない職業で使える武器だね。良かったね、お兄ちゃん」
「ああ。銃使いと武士を極めたら生産系の初期職を極めようと思ってる」
「そうなんだ。お兄ちゃんは何で初期職ばっかり極めるの?」
「別に。ただ、現実ぐらいには家事が出来るようにしたいな、と」
まあ、ホントは魔法や剣術を極めまくって攻略を進めたいだけだが。
「まあいいけど。そういえば、生産系はちょっと極めてなかった?」
武器職人、防具職人、調合士の三つだけだが。
「ああ。鍛冶職人と薬剤調合士、アイテム調合士と料理人を極めるんだよ」
全部初期職で上の方になる職業だ。
「初期職を片っ端から極めるんだ?」
「まあな」
その後はちゃんと下位職も極めてくが。基本、初期職を極めるかな。
「お兄ちゃん今釣り師? だったらもうLvMAXになってると思うよ」
「ん? 何でだ?」
「だって、海賊は下位職だもん」
「意外と高いんだな」
「うん。PKまでする犯罪者だよ」
そんな危険な奴らだったのか。
「プレイヤーをキルすれば経験値は高いから、多分平均20くらいかな」
一般のプレイヤーにしては高いな。海で狩りまくったんだろうか。
「他の、『戦乙女』とかの正規ギルドじゃない、裏ギルドって言うんだけど、犯罪ギルド、暗殺ギルド、海賊ギルド、盗賊ギルド、山賊ギルドとかが増えてるの。もちろん、その対策はトップギルドがやってるけど」
トップギルドも大変だな。
「トップギルドでも、『戦乙女』と『ナイツ・オブ・マジック』は関わらないようにしてるよ」
「何でだ?」
「その、裏ギルドの中には女性プレイヤーを狙う人が多いから……」
なるほど。
「女性プレイヤーがいるギルドは避けてるってことか」
リィナと姉ちゃんもいるしな。
「だが、他のギルドも女性プレイヤーはいるだろ?」
「うん。『軍』にはいないけど。『一夫多妻』はそういうことには興味ないし。『狂戦騎士団』と『暗黒魔術師団』は競い合うように裏ギルド狩りをしてるから……」
後者二つのギルド、好戦的すぎ。
「ちなみに、後者二つのギルドは仲間が殺られたらギルドメンバー全員で仕返しに来るから、裏ギルドも手が出せないんだって」
おぉ、仲間想いのギルドだな。……いや、仲間を倒す程の強者がいるんだったら、戦ってみたい、ってことなのか。
VRMMOモノ、Dive in the world を始めました。
よかったら読んでみてください。




