南の森調査隊
「ふあぁ。さて、広場に行くか」
俺は目を覚ましてから、欠伸をして立ち上がった。
「ん~。ステータスはバッチリだよな」
昨日の内に準備は整えたハズだ。
よし。オッケ。
「んじゃ、行こう」
俺は宿を出て、広場へと向かった。
▼△▼△▼△
「おっす」
「……おはよ」
俺は広場に着いてから、まずアリシャを見かけて声をかける。
「へぇ。結構来てんだな」
周りを見渡して言う。
「……うん。けど、リューヤは少し遅刻」
マジか。間に合うつもりで来たのにな。
「皆さん、注目して下さい」
今回のことを提案し、俺達をここに集めた張本人、『ナイツ・オブ・マジック』のリーダー、ジュンヤが言った。
「まずは、今回の作戦に協力してくれてありがとう。提案者として、ありがたく思うよ」
普段の、好青年の笑みに変わって言う。
「今回の作戦は、グループに別れて行う。その前に、主戦力となる人達を紹介しよう」
ジュンヤはそう言って周りを見渡す。
「まずは、IAOのアイドルグループとも言える十代女子限定ギルド、『戦乙女』!」
ジュンヤは腕で『戦乙女』の方を示して言う。歓声が上がった。
「男性諸君の羨望を一手に引き受ける女性率九十%ギルド、『一夫多妻』!」
そりゃそうだろ。だってモテモテだし。
「構成員多し、規律厳しいお堅いギルド、『軍』!」
……そんなこと言って大丈夫なのか、ジュンヤ?
「そして、我ら『ナイツ・オブ・マジック』の皆」
自分達も紹介する。
「お次は特別ゲストの紹介だ」
ゲストね。
「まずはこの街で一番の鍛冶職人、アリシャ!」
おおう。アリシャがそうだった。注目を浴びて照れてるようだ。
「ソロで魔装を極める魔装使い、リーファン!」
おっ? アリシャの他にも魔装を使うヤツが。背の低い、気の弱そうな女の子だ。
「ソロで、しかも魔砲というユニークスキルを発見した魔砲使い、クイナ!」
魔砲? 魔法を銃器で放つとかそんな感じかね。可愛い系の女の子だ。
「知られざるソロの忍者、エアリア!」
忍装束を着た、二十代の兄さんだった。顔を隠しててわかりづらいが、右目に傷があって貫禄がある。
「そして、本日のビックゲスト! エリアボスを二体も倒し、レベルは現在トップ! 最強の称号を欲しいままにするノーβテスターのソロプレイヤー、リューヤ!」
おぉ。俺と同じことをしたヤツがいたのか。
「って、俺?」
同じ名前はいないんだった。
「主戦力の紹介が終わったところで、グループの発表をするよ」
ジュンヤはどんどん進めていく。
「まず、本隊として、『ナイツ・オブ・マジック』の半数、『軍』、『一夫多妻』、リーファン、クイナ」
良かった。俺は入ってない。
「第二グループは、『ナイツ・オブ・マジック』の残り半数、『戦乙女』、アリシャ、リューヤ、エアリアと残り少しのプレイヤー、ということにしよう」
アリシャやリィナと同じグループか。
「調査は二手に別れて行う。第二グループは人数が少ないが、戦力はあるので大丈夫だ。さあ、行こう!」
「「「おおおおおぉぉぉぉぉ!!」」」
ジュンヤの合図から、雄叫びを上げて呼応する。
それからそれぞれのグループに別れ、南の森へと向かった。
▼△▼△▼△
「三人共同じグループになったな」
姉ちゃんとリィナに声をかける。
「ジュンヤがそうしたのよ」
なるほど。
「あ、あの、お三方はお知り合いなんですか?」
プレイヤーの一人が聞いてきた。黒のマフラーをしたダークエルフの少女だ。
「敬語は止めてくれ。くすぐったい。まあ、現実での兄妹なんだよ」
「えっ? え~っと、誰が上なんですか?」
敬語は止めて欲しいんだがな。
「私が一番上ね。『ナイツ・オブ・マジック』のメンバーで、今はマジックシーフ、フィオナよ」
自己紹介してるし。
「俺が真ん中だな。さっき大袈裟に紹介されたが、ソロでやってる。今は、魔導戦士、だったな。リューヤだ」
俺も自己紹介をしておく。
「私が一番下だね。『戦乙女』のメンバーで、今は氷の魔法使い、リィナだよ」
リィナも同じように自己紹介する。
「あっ、私はエフィって言います。『双子のエルフ』っていうギルドに入ってて、テイムマスターです」
「私はナーシャよ。『双子のエルフ』のメンバーで、サモンマスターよ」
もう一人の、モコモコした白い服を着た浅色の髪のエルフが言った。
「『双子のエルフ』は私達二人だけのギルドなんだよね、ナーシャちゃん」
「そうね。『戦乙女』みたいな女子限定ギルドにしたかったけど、そう人数がいる訳でもないし、二人だけにしたのよ」
……ふむ。誰かに似てると思ったら、姉ちゃんとリィナだな。種族が逆だが、そんな気がする。
「そうか。よろしくな」
「お兄ちゃん、何でまだ魔導戦士なの? 結構やり込んでるっぽいのに」
挨拶が終わって、リィナが聞いてきた。
「別に。のんびりしてただけだろ」
「……嘘。かなりの素材を買い取ったから、やり込んでるハズ」
アリシャめ、余計なことを。
「何で?」
リィナが詰め寄ってくる。
「……はぁ。他の職業も極めてたからだよ」
諦めて、言う。
「MAXにした職業、全部言って」
むっ、しょうがないな。
「魔法戦士、魔法使い、剣士、戦士、騎士、武器職人、防具職人、採集士、調合士、裁縫士、シーフ、ファイター、テイマー、サモナー、だな」
指を折りながら数える。十四職か。結構極めたな。
「……やり込みすぎ」
「……何を目指してるのよ」
「……バカ」
リィナ、姉ちゃん、アリシャに呆れられる。別に何を目指したっていいじゃんかよ。
「て、テイマーまで……。何をテイムしたの?」
やっとエフィが敬語じゃなくなった。
「まだ三体しかいないな」
全然テイムしてない。
「リヴァイアサン、フレイムバード、キャニオンタートルだな」
「えっ!? フレイムバードはともかく、あとの二体は伝説級のモンスターじゃ……。どこで手に入れたの!?」
エフィが驚いていた。他の皆も同じことを思ってるようだ。
「リヴァイアサンが東の海岸のエリアボスを五回以内の攻撃で倒して、その後のイベントクエスト報酬。キャニオンタートルは北の洞窟の最深部で寝てたから、起こした」
「……その時点で色々ツッコミたいわね。けど、キャニオンタートルの方はどういうこと?」
「そうだよ。洞窟内はβテスターがくまなく探したハズだよ。エリアボスは最深部にいて、ちゃんと倒したし」
姉ちゃんとリィナが責めるように言う。
「βテスターに『索敵』持ったヤツいた?」
「ううん。βテスターなら、慣れてるから平気なの」
「それだな。んで、最深部に氷の塊があったろ?」
「うん。氷系モンスターが多いし、所々にあったね」
「それがさ、最深部で『索敵』使ったら、その氷の塊がモンスターらしくて、攻撃してみたら起きて、仲間になった」
炎の魔法で一発。
「……はぁ。何ていう幸運の持ち主よ。今は連れてないみたいだけど?」
姉ちゃんは呆れて言う。
「モンスターBOXに入れてる」
モンスターBOXは、モンスターをミニチュアサイズにして入れるアイテムだった。餌も少なくていいから、結構便利だ。
「かなりの戦力になるね」
そりゃそうだろ。頑張って育てたからな。
「おい、そこ。ジュンヤから通信が入った。強敵がいて危ないそうだ。合流するぞ」
第二グループの統率役が言って、本隊に合流しに向かった。
ようやくか。




