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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
最終章

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最終決戦

遅くなりました。大体モンハンと原神のせい。

 俺がいない間に、デルニエ・ラトゥールは九十階層まで攻略を終えていた。

 九十階層からは一度ボス部屋に入ると出られない仕様となっており、様子を見て撤退するという戦法が使えなくなったらしい。それで死者を出しつつも攻略を進めてきたのは流石だった。


 IAO史上最強のスキル五種が揃い、装備も十全に整えた。その上で本人なので言いづらいが死んだと思っていたプレイヤーが復活した。

 戦力強化、そして士気も充分。


 いざ攻略に向かうと流石に戦力大幅強化のおかげか九十四階層までは一人の死者もなく突破できた。


 九十五階層になって更にボスの難易度が上がり死者が一名出てしまう。

 このままいけるんじゃ……? という慢心が無意識の内にあったのかもしれないと気を引き締め直した九十六階層で三人死んだ。


 死者は出ているが、クリアできていないわけではない。犠牲者に目を瞑ればこのままクリアできる可能性もある。だがそれでは意味がないので、連日の会議や構成の確認を行った。装備品やレベルなどについてはもう最高の状態になっている。それ以外での工夫を凝らすしかなかった。

 それでも九十七階層でまた三人死んだ。


「……先に、謝らせてもらう。ここから先は、誰が死んでもおかしくないだろう」


 九十八階層に向けた対策会議の開口一番に、ジュンヤが重々しく言った。


「皆がわかっていることよ。ジュンヤが謝ることじゃないわ」

「それでも一応皆を率いらせてもらっている身としては、言っておかなければならないと思ってね」


 メナイアがフォローを入れるとジュンヤは苦笑した。その後咳払いをして空気を整えつつ、


「先日皆で案を出し合って九十七階層の攻略に臨んだが、結果は知っての通りだ。あれだけ準備をしても死者は出てしまった……。もう少し種類の違うプレイヤーが多ければ戦術も増えてなにか変わったかもしれないが、今から望むのでは遅い。俺達が全力を尽くした結果、死者が出る。……それは今後も変わることはないだろう」


 ジュンヤの言葉に部屋が重苦しい空気に満ちていく。


「だから俺達は覚悟を決めなければならない。――この先誰が死んでも、先に進み続けると」


 彼の真剣な眼差しに誰もが真剣に応える……わけではなかった。


「ハッ。くっだらねぇ」


 鼻で笑うのはベルセルクである。空気を壊すような物言いだが、彼もただ空気を壊したくて言っているわけではないことぐらいここにいる全員がわかっていた。


「どんだけ死者が出てもこれまで逃げ出したヤツなんていねぇだろうがよ。今更な話してんじゃねぇ。俺達は、とっくに覚悟できてんだよ」


 物言いこそアレだが、それはここにいる全員の総意だった。


「あなた含めての変人達はそうでしょうけど。そうでない人もいるって話でしょ」

「じゃあてめえは違うってのかよ?」

「はぁ? そんなわけないでしょ。覚悟なんてとうに決まってるわ。私だって、生きていて欲しい人はいるもの」

「そうかよ」

「ええ」


 隣り合って座り言い合う二人は目を合わせることがない。ただ最近ツァーリが傍目から見るとわかりやすくベルセルクにアピールしているところがあり、他から見た感じではイチャイチャしているようにも見えてくるのだが。


「そうか、それでもそうだな。すまない、ちょっと失礼だった」


 ジュンヤはくすりと笑う。


「さて、では確認は取れたとして九十八階層に向けての会議といこうか」


 言って、改めて攻略対策会議が開始された。


 ◇◆◇◆◇◆


 九十八階層の攻略は上手くいった。

 結局俺に合流したロキとの『UUU』が使えるようになったことも幸いしたのだろうと思う。


 ロキとの『UUU』で最も強力な点は、一戦闘につき一度のみ使用ができる【因果歪曲】。起こった事象一つを捻じ曲げることができる。と言うと強そうで実際に強いのだが、既に捻じ曲げることのできない事象も存在する。例えばプレイヤーの死とか。ただプレイヤーが死にそうな攻撃をなかったことにする、若しくは敵に当てるといった捻じ曲げ方は可能なようだ。大抵は大技前に使用して大技の発動をなかったことにすることが多い。


 九十九階層、最上階の直前では死者が二人出てしまった。

 嫌だったのは相手の強さと状況から仕方がないと考えている自分がいることだった。


 そして、遂にIAO最高難易度を誇るデルニエ・ラトゥールも最後の一階層を残すのみとなった。


 ボス部屋までの攻略を済ませてから、総力を挙げて十全に整える。ここにギルドの規模や所属は関係ない。各々ができる範囲全てのことを挙げて実行する。

 ボスは各階層の雑魚敵のボスといった風が多いのだが、流石に百階層ともなるとバラバラすぎてなにが出てくるか全くわからなかった。


 最悪の場合、俺が死んでも構わない。というよりも一度死んだ身なので今はもうなかったような命だ。使い切るつもりで挑んでいた。それは、最後の戦いになっても変わらない。


「いくぞ、皆。最終決戦だ! 臆する必要はない! 俺達は今日、この戦いのためにやってきた! その成果を全て発揮し、このデスゲームを終わらせよう!!」


 ボス部屋の扉の前。トッププレイヤーを率いるジュンヤが勇ましく味方を鼓舞し、味方もそれに応え雄叫びを上げた。


「お兄ちゃん、必ず勝とうね」

「私達なら勝てるわ、絶対」


 近くにいたリィナと姉ちゃんが声をかけてくれる。どうやら最終決戦を前に緊張していたのがバレてしまったらしい。


「……ああ」


 決意と覚悟を今更する必要はない。もう、とっくの昔に済ませてある。だから、後は戦うだけだ。


 ジュンヤがボス部屋の扉を押し開く。

 百階層のみ、人数制限のないボス戦となっていることは確認していた。そのため、トッププレイヤー全員がここに集っている。


 『ナイツ・オブ・マジック』五十二名。

 『軍』二十四名。

 『戦乙女』六名。

 『混沌魔術狂戦団』百二十三名。

 『SASUKE』二十二名。

 『格闘国家』十五名。

 『双子のエルフ』二十名。

 『銃軍(ガンレギオン)』十名。

 『月夜の黒猫(ナイト・キャット)』七名。

 『守護騎士団(ガーディアンズ)』十三名。

 『一夫多妻(ハーレム)』七名。

 その他のソロプレイヤー、計六名。俺、メア、センゾー、クイナ、リーファン、アリシャ。


 総勢三百五名での挑戦となる。

 足手纏いにならないギリギリまで戦力を投入した結果だ。特にベルセルクとツァーリ率いる『混沌魔術狂戦団』は参加人数が多い。それは他ギルドと違って全員が参戦を希望したからだろう。中には参戦最低ラインの者もいるが、死ぬなら死ぬで上等と考えているような集まりだ。もしこの戦いに負ければ、ギルドは全滅となる。だがそれは考える必要がない。後のことなんて、もう考慮する必要はないのだから。

 この戦いが終われば、俺達の勝利か敗北かが確定する。


 勝利は、デスゲームからの脱出。

 敗北は、ゲーム内での永住。


 俺達がここで全滅すれば、他のプレイヤーが攻略に挑むのにどれだけの時間を要するかはわからない。一応ジュンヤの意向でレアスキルの取得条件は記録してあるが、武器は戻ってこないだろう。そうなると厳しい条件下での戦いを強いることになってしまう。


 だがそんな負けた後のことを考える必要はない。何度言い聞かせても可能性として考えてしまうが、ここまで来れば後は勝つだけ。それでいい。


 緊張と覚悟を表情に出した約三百人ものプレイヤーが、次々に扉を潜り最後のボス部屋へと入っていく。


 中は明るく、神聖な空気すら漂う神殿のような場所だった。それもそのはず、これまでのボス部屋と違ってここには天井がない。天高くまで伸びているデルニエ・ラトゥールの最上階、屋上ということなのだろう。白い床と建物の骨組みが残ったようなフィールドで、特有のギミックはあまりなさそうだった。


 全員が警戒した面持ちで進む中、遂にラスボスを発見する。


 仮面のように滑らかな白い顔。女性らしき巨大な身体。生い茂った髪の毛は長く、全部で六本ある腕は細長かった。確認できるのは上半身のみで、下半身はないのか埋まっている。数百人規模で戦ってもただ殴られるだけで終わるボスではなさそうだ。


 そして。

 ボスの風体とは関係ないのだが。

 ボスの白い顔の上に、見覚えのある人影が乗っていた。


「“乗っ取り女王(ハッキング・クイーン)”……!!」


 最初は巨大化していたが今は通常サイズのようだ。それでも見間違うことのない相手、諸悪の根源がそこにいた。

 身内にして因縁の相手である彼女を前にして、アリシャがこそっと俺の後ろに隠れている。


「いやぁ、折角ラスボスまで到達したもんだから、観に来ちゃった♪ というのは嘘で、記念に私も混ざってみようかなって思ってねー」


 幼女は無邪気に笑うと、するりと落ちるようにボスの身体へと滑り込んでいく。


「よし、ハッキング完了、っと」


 軽い口調が聞こえたかと思うと、ラスボスが目を開き身体を起こし始めた。


『おー。思った通りに動くねー』


 ラスボスの口が流暢に動いているわけではなく、ラスボスの身体から声が発せられていた。声だけは感情がありそうなのにラスボスの顔が全く動かないちぐはぐさが不気味だ。


『チート、ハッキング……なんでも使っていいよー。それで私に勝てるなら、ね』


 IAO最強の敵に、史上最悪のハッカーが合わさった。


『理不尽すぎる攻撃はしないつもりだけど、油断はしないでね?』


 細長い腕で頬杖を突き俺達を脅してくる。……最悪の組み合わせだが、絶対に勝てないようにはしてこないと願いたい。だがギリギリしか生き残らないのでは意味がない。そして全滅させる気がないわけではないだろう。

 慢心は禁物。既に数千人がこのゲーム内で彼女に殺されているのだから。


『ステータスの数値は書き換えないであげるから、全力で挑んでおいで? 勝てば生きてるプレイヤー全員現実に還してあげる』


 口約束は反故にされる可能性もあるが、そんなこと考え始めたらキリがない。


『じゃあラスボスらしくこう言おうか。このゲームから脱出したければ、私を倒してから行くがいい!!』


 ネタに振っているようではあるが、脅威は本物だ。急いで陣形を組み臨戦態勢を整える。


「我が威を示せ。――『神聖七星剣』!! 皆、ここが正念場だ!! 警戒を怠らずに相手の行動パターンを読むぞ!!」


 先頭に立つジュンヤが率先して行動する。『神聖七星剣』に、メッシュ討伐の報酬として出てきたというエクスカリバー。この二つがある時点で彼は現在最硬のプレイヤーだ。俺も『トリックスター』の効果が運良く発動していなかったら長期戦になっていたことだろう。

 実はジュンヤにエクスカリバーを返却すると言われたのだが、断った。俺が持っていても最大限能力を発揮することはできないからな。


『私が入った時点で行動パターンとか減っちゃうんだけどね。まぁでもこれはサービスだよー、必殺技!!』


 女王が入ったラスボスの名前は偽造神・エラと言うそうだが、開幕からエラの大技を使用するらしい。サービスだと言っているのはおそらく、ジュンヤの『神聖七星剣』に耐性をつけて後々受けられるようにしてあげるという意味だろう。


『いっくよー。【太陽降臨(サンメテオ)】』


 軽い調子で放たれた大技は、ラスボスが使うだけはあって異常だった。

 遥か頭上に輝く太陽が段々と近づいてきて、俺達がいる場所へと落下してくる。


「ジュンヤにありったけのバフをかけて!!」


 メナイアが若干の焦りを声に乗せながら指示を出して、ジュンヤへとバフがかけられていく。様々なバフ効果を受け、エクスカリバーの能力を最大限に発揮したジュンヤがアビリティを使用した。


「【全滅か自死か(オール・オア・ダイ)】!!!」


 【全滅か自死か(オール・オア・ダイ)】。防御を得意とする騎士が辿り着く防御アビリティ。アビリティ名の通り、味方の全滅と自分の死亡を選択するような効果内容となっている。単純に、敵の全体攻撃を全て自分が受けるという効果である。味方を殺させない強力な効果だが、一人一人が受けるはずだったダメージを合算して受けてしまうため、ほぼ確実に即死してしまう。

 蘇生ありきなら使用回数制限二回であることを考えても強いアビリティなのだが、デスゲームとなった今好き好んで使うプレイヤーはいなかった。


 ではなぜジュンヤがこのアビリティで受けるのか。


 『死地にて戦え』を含む即死無効スキルを消費することで一度だけ死なないからだ。消費させないために全力でバフをかけているが、それでも生き残るかはわからない。ただ『神聖七星剣』であれば二度目を一人で受けることが可能だ。そのための布石である。『死地にて戦え』などは戦闘中一度しか発動しないため、特にジュンヤなどの壁役を務めるプレイヤーは極力発動させないようにしたいという思惑もあった。


 そしてジュンヤが攻撃の全てを受けるということは、他がフリーになるということだ。


「総員、攻撃開始ッ!!!」


 故に、落ちてくる太陽に構わず大半のプレイヤーが攻撃行動を取ることができた。しかもボスは技の発動中他の行動ができないのが一般的だ。そこを敵が突いてくる可能性もあるので油断は禁物だが、それでも強制的に隙を作り出せる。


『キャー。助けてー。襲われちゃうー』


 棒読みな声が聞こえてくるも、史上最悪の犯罪者相手に油断は一切なかった。素早く陣を張り技が終わった後の対応まで考慮して動く必要がある。

 代わりに、アタッカーは存分に全力を振るうことができた。


 アタッカーの筆頭はもちろん最強スキル残り四つを持っているプレイヤー達だ。


「『ドラゴン・ドラグーン・ドラグオン』!!!」


 俺が集めた四つの竜を基にした剣はリィナが『MMM』を手に入れる過程の時に姉ちゃんへ譲った。

 ただし姉ちゃんは元の剣を扱うスタイルではない。だから『鍛冶』で武器種を作り変えている。姉ちゃんが使う短剣へと。


 今手にしているのは聖竜短剣・ホーリードラゴンと邪竜短剣・イービルドラゴン。聖竜短剣・ホーリードラゴンは透き通った純白の直刃をしているが、邪竜短剣・イービルドラゴンは毒々しい暗い紫色の刃でイナズマのように曲がりくねっている。

 『闇竜紋』から昇華した『極竜紋』により全身を黒と白の筋が入り紋様で出来た翼が生える。『ドラゴンフォース』を発動して黒と白のオーラを纏っていた。

 その上で『DDD』を発動することにより、身体の一部を竜の鱗が覆う。


「『エンシェント・アルカディア・アルカンシェル』!!!」


 機械じみた武装で全身を覆うメア。機動力と火力を考えれば一番のスキルではないかと思う。俺がアルファ・ディ・ベルガリエを渡したことで完全体となった今、俺が手にした最強プレイヤーの称号にまた迫ってきている。


「『マジック・メンタル・メイジ』!!!」


 リィナがツァーリとの決戦を経て手にした魔法系最強スキル『MMM』。俺も実体を見たことはなかったためどんなスキルなのかと思っていたが、まず『HHH』を含めた六つのスキルの中で最もステータス補正が高い。魔法使用に必要なMP、魔法の威力に関わるINT、魔法に対抗するMDF。これら三つのステータスが大きく上昇する。

 更に『SSS』と同様長期戦に強いスキルとなっているようだ。


 『MMM』発動時、最初にフィールドを設置する。自分を覆うように設置されたフィールドはその中にいれば魔法の効力を大幅に引き上げ、自分を攻撃する魔法の一切を無効化する。魔法主体のプレイヤーを相手にするならこれ以上ない効果だ。効果詳細はリィナから聞いているが、『MMM』はどうやら全ての魔法を支配するスキルらしい。……強くないか?


「――【影神狼双牙士・シャドウレオンウルフ】!!!」


 俺も最初から全力だ。『ユニオン・ユニバース・ユニゾン』の中でも最強と言ってもいいアルティとの『UUU』。


『ふふふ……いいよいいよー。全力でおいで♪』


 惜しみない全力を見せる俺達を、女王は嗤う。事実上の最終決戦が、幕を開けた――。

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