表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
煮えたぎる溶岩編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

146/165

本領発揮

 八十階層の厳かなボス部屋で、俺はメッシュと対峙していた。


 メッシュの持つ『神聖七星剣』は万能の防御力を誇るスキル。次々と耐性を獲得し無効化してしまうという恐るべき能力と七つの固有能力を持つ。それを打ち破るには、無効化される前にごり押しするか無効化のフェーズが終わった後に倒すかのどちらかとなる。……一応ごり押しでは最上位の攻撃を乗り切られた以上、最後まで無効化させて、無効化されていない攻撃で戦う、という方針になるだろうか。


 今無効化されてしまっているのは、光属性、闇属性、竜属性、斬撃、砲撃、雷、打撃。

 近接武器での耐性を獲得されるのは後々倒す術がなくなってしまうので慎重に次の攻撃手段を選ばなければならない。……最初に斬撃と闇属性を無効化されたのは痛かったな。今のところ最強の一手であるアルティとの『UUU』が早々に無効化されてしまった。最高火力を誇るアビリティもあるし、防御無視攻撃も持っているのでメッシュ相手なら有力だったんだが。


 先程の猛攻で減ったメッシュのHPは継続回復と袋から降ってくるアイテムによってもう半分近くまで回復してしまっている。今の俺の手札でこれを削り切れるかと言われると怪しいが、挑む以外に手はない。


「第四の神、【弁財天】」

「【海古竜槍士・リヴァイアサン】」


 メッシュが第四の神の効果を発揮したのとほぼ同時、俺も新たな攻撃手段を得る。

 水と槍による刺突。まだ無効化されていない二つを使える『UUU』はこの局面で重要だ。……だが、果たして本当に必要かと思ってしまう。武器攻撃よる刺突は、他の『UUU』でも使う。ここは念のために水のみで攻撃した方がいいか? できるだけ少ない攻撃の種類で七回乗り越えなければならない気がする。


「【大津波】」


 手を翳し、大量の水を生み出してメッシュの身体にぶつけた。しかし押されることも、多くのダメージを与えることもなかった。

 俺はそれ以上攻撃することなく、無効化された後の攻撃手段を考える時間に費やした。


「なるほど、削り切るのを諦めたか。いい判断だリューヤ」


 ニタリと笑うメッシュ。向こうとしても耐えるスキルを使ってしまったので、時間内に削ってくるのをやめてもらった方が好都合なのだろう。『神聖七星剣』は俺が持つ他のシリーズとは違って晩成型というか、時間をかければかけるほど強くなるスキルだ。


「だが斬撃と闇を無効化されていて、貴様に俺のHPを満タンから削ることができるのか?」

「確かにアルティとの『UUU』は強いが、俺の手札を全部見せたとは言ってないぞ」

「……チッ!」


 挑発に乗らなかったからか、盛大に舌打ちされてしまった。口を噤んだメッシュは、第四の神が水の無効化に至るまでじっとしていた。空中に現れた【布袋】の効果によってMP回復を行っているため、HPの継続回復が切れることもない。


 残る俺の『UUU』は、アルティ、シルヴァ、クリスタ、フレイ。闇と斬撃、銀と鋼と竜と斬撃、氷と炎と打撃、炎と光と刺突。これらを除いた攻撃手段、属性で残りの形態をやり過ごした方がいいかもしれないな。


「第五の神、【恵比寿】」

「【ウインドボール】」


 メッシュが次の形態を使用した直後、一番簡単な魔法で風の球体を飛ばし風属性の耐性を獲得させる。


「第六の神、【大黒天】」

「【ロックブラスト】」


 時間経過を待って第六の神へ。発動した直後に石礫(いしつぶて)を食らわせて土属性の耐性を与える。


「第七の神、【毘沙門天】」

「【ウッドボール】」


 そして最後。七まで到達してから木で出来た球体を当てて木属性を捨てる。


「これで七つ目か。なるほど、後半はできるだけ耐性を獲得させないようにしたわけだ」


 それもそうだろう。『神聖七星剣』は無効化される前に倒し切るか、無効化を終わらせてから他の攻撃手段で倒すかのどちらかしかない。……一つ目に失敗したので、仕方なく二つ目の策にするしかなかったわけだ。冷静に努めてはいるが、負ければ死ぬ戦いだ。俺としても賭けには出たくない。


「これで、貴様の思惑通り耐性獲得はなくなったわけだ。だが明らかになっていないいくつかの能力を知らないまま、最強となった『神聖七星剣』を破れると思うか?」

「やってみなきゃわからないな」


 肩を竦めると苛立ったように眉を顰めていた。


「【パラライズ・ストーム】」


 俺はまず、防御に類する耐性を確認することにした。黄色い粉の混じった暴風がメッシュに襲いかかるが、効果はない様子だ。『看破』のスキルを発動して答えを得る。

 麻痺の状態異常を与えやすいアビリティだが、確率で外れた、装備で無効化した、スキルで無効化したなどいくつか麻痺にならない理由が存在する。


 『看破』は自分の行動による影響が正常に作用しなかった場合に使えるので、相手の耐性を見抜くためのアビリティと言っていい。


「……なるほど、【福禄寿】の効果は全状態異常無効か」


 確か、福禄寿は健康を伴う長寿を司っている。麻痺や毒などは健康を害するモノなので、全て無効化されるというわけか。


「それだけではない。【福禄寿】は発動時間に応じて金の増幅も可能だ。家族のいる幸福も加わるが、害されればステータスが大幅に上昇する。貴様がナッシュを殺してくれたおかげでな」


 実の弟の死すら利用して、力を得ていたらしい。金の増幅が今関係あるかは怪しいところだが、強力な効果なのは違いない。


「金を使う【大黒天】の効果はアイテムを購入する時に使用するからな。設定しておけば常に所持数MAXまで補充する優れモノだ」


 くくっ、と笑って得意気に語った。ぺらぺらと無駄なことを、とも思うが【布袋】から出てくるアイテムに限りがないということである。語らず罠に嵌めてくる可能性もあったのだろうが、明かしても問題ない能力だからこそ喋ったのだろう。残る【弁財天】、【恵比寿】、【毘沙門天】の能力は語らないはずだ。


「他の能力は明かしてみせろ、元最強プレイヤー」


 メッシュは言って、改めて武器を構えた。元をつける辺りに傲慢さが出ている。だが慢心はないらしく、迂闊に突っ込んでくるような真似はしてくれなかった。


 仕方がない、次の手を切ろう。


「【銀鋼竜騎士・シルバーブレードバハムート】」


 『UUU』でシルヴァの力を纏った。シルヴァが使える銀、鋼、剣、に加えて種族の竜。四つの力を使うことができる。無効化されていない銀と鋼しか効果を持たないが、それでもいい。

 攻撃力で言えば、アルティ、リヴァアに次ぐ三番目。だが対応力で言えば応用の効く能力であるためトップに躍り出る。シルヴァ自体が優秀なこともあって、仲間の時は心強い。俺が使うとなるとちょっと話が違ってくるのが残念なところだ。


 髪と瞳は銀色に変わり、銀色の甲冑で首から下を覆っていた。銀色の刃を持つ双斧を右手に持って肩に担ぎ、左手に銀の直剣を携えている。背中には銀色の翼、尻尾の先端が剣のような形状をしているのはシルヴァ譲りだ。

 見てわかる通り、残念ながらシルヴァの『UUU』は武器に斬撃がついている。ただそんなことは関係ない、と言い切れる特異な能力が、この【銀鋼竜騎士・シルヴァーブレードバハムート】の本領である。


「無駄なことだな」


 斬撃に竜、と見てメッシュがせせら笑った。だがその油断が命取りになる。それをわざわざ教えてやる義理などない。俺は無言で翼を羽ばたかせ地面すれすれを飛んで一気に接近した。メッシュはタイミング良く剣を振るってくる。いきなり攻撃に出るなんて珍しい。咄嗟に回避を選択。特大の斬撃が放たれて咄嗟の判断を信じて良かったと確信した。


「チッ!」


 メッシュは舌打ちして、盾を正面に構えるが明らかに反撃を狙っている様子を見せる。どうやらステーアス大幅アップなどの効果によって、攻撃力がかなり上がっているらしい。

 まだ明かされていない能力だとやはり――


「【毘沙門天】は攻撃力の底上げか」

「それだけではないがな!!」


 呟いた声に応えるように、メッシュの周辺にエネルギーの砲弾が出現した。……アルファ・ディ・ベルガリエで撃ち出した砲撃と同じ、だと。


「くっ……!」


 俺は仕方なく銀を操って壁を築き、砲弾を防ぐ。


「ならばこれはどうだ!?」


 メッシュは銀の壁の向こうで、壁に向かい盾を突き出した。【シールド・バッシュ】の系列では壊せない、はずだった。

 だが青い雷が炸裂して、金属である銀を通して俺へと放電が起こる。痺れるような痛みに俺のHPが削れていった。……これはアルファ・ディ・ベルガリエの打撃形態。クソ、ってことは【毘沙門天】の一番重要な効力は――。


「わかったようだな。そう、【毘沙門天】は素の防御力を攻撃力にそのまま加算し、その上で無効化した攻撃を利用できる」


 【毘沙門天】と言われて、戦いの神だと思う人は多いだろう。実際、そういう能力のようだ。……炎がないとはいえシルヴァとの『UUU』だと雷が厄介だな。

 金属を操る都合上、一部の攻撃が防げなくなってしまう。だがメッシュも滅多に使わない能力達のはず。自在に操れるとは考えにくい。逆に、金属で電気を受け流すのもありかもしれない。


「だからと言って、同じことができるわけじゃないんだろ?」

「嘗めるなよ!!」


 それこそ【雷神連鎖(トール・チェイン)】を叩き込まれたら俺は死ぬ。だがあくまでメッシュが使えるというだけのことだ。

 バリバリと迸る青い雷を、銀の道を作って逸らす。メッシュは忌々しそうに舌打ちした。


「だが貴様に攻撃の手段がないことは確かだろう?」

「それはどうだろうな」


 言って、俺は左手の剣をメッシュに向ける。眉を寄せる彼に、俺は剣から大量の銀を放出させた。


「なにっ!? ぐぅ……!!」


 メッシュは銀の波を押し返すことができず、呑み込まれてしまう。武器のままで攻撃したり、アビリティを使ってしまうと斬撃などに分類されてしまうが、自在に銀を操った場合は銀属性のみの攻撃となる。


 故に。


 思い描いた通りの銀による圧死であれば、メッシュの耐性を無視できる。剣を振るうと思わせ液状で殴るなどしても同じだ。特定の形にしなければ判定が入らない。


「嘗めるなと、言っているッ!!」


 銀に呑まれてHPが減り続けるかと思われたメッシュだが、光と闇の奔流が巻き起こり銀の波を掻き消していく。


「【ドラゴン・アヴェイル】!!」

「【銀竜戒槍】!!」


 竜の力を纏って強化した直後に、竜相手だと威力が増幅するアビリティで攻撃する。防御は銀を操って盾を退かしていたため間に合わず、直撃した。目に見えてHPが減少した。


「小癪な……!!」


 青い雷を全身から迸らせて銀を嫌うメッシュだが、俺は構わず攻撃に移った。銀を操りメッシュの身体をトゲで刺し貫く。おまけに固定した。そのまま猛攻を続けるが、メッシュが絶えず雷を放っていたため先に俺のHPが尽きそうになってしまい、仕方なく後退して攻撃を銀で逸らしながらアイテムでHPとMPを回復する。

 銀を操れるという利点があれば、メッシュの【布袋】を封じることができる、と思っていたのだが。やはり能力を全て解放した『神聖七星剣』は強い。手を抜いているつもりはないが、じわじわと追い詰められていくのは俺の方だ。……やっぱり、アレを使うしかないか。


 俺はシルヴァでは不利な面もあるため、仕方なく『UUU』を解除する。

 メッシュもメッシュで態勢を整えるためにHPとMPを回復していた。


「『ウェポン・チェンジ』」


 俺が持つ最強の武器。天叢雲剣を呼び出した。

 このゲームでは、両手用武器であってもアビリティとステータスさえ揃えれば片手持ちができるようになる。天叢雲剣も両手剣ではあるが、レベルMAXまで鍛えた俺のステータスなら片手で持つことも、不可能ではない。


 だが俺は白い柄を両手でしっかりと握った。


 武器を両手で持つことによって、俺が普段使っていないアビリティがパッシブで発動していく。

 『一刀流』、『両手持ち』、『渾身』、『一撃無双』、『我が身体は剣で出来ている』、『剣身一体』、『破砕は我にあり』。

 ステータス上昇、主に攻撃威力の上昇が激しいアビリティ達だ。


 これ以外に、なにも特別なことはいらない。


「……第二回グランドクエストのMVP報酬武器か……!!」

「ああ。最強の名が欲しいならかかってこい。――切り伏せる」

「ッ……!!!」


 俺の安い挑発に、メッシュは乗ってきた。あまり気の長い方ではないということは、これまででわかっている。

 だからこそ、全力攻撃いによるぶつかり合いで制する。


 俺はそのつもりで駆け出したメッシュに合わせて走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ