『神聖七星剣』
八十階層のボスとしての正体を露わにした《軍》のギルドマスター、メッシュ。
彼は俺との一騎討ちに拘りを見せ、他プレイヤーの干渉を弾く壁を形成した。
ボス部屋の中央で、俺とメッシュは互いの武器を構えて対峙している。
メッシュが俺の戦い方をわかっているように、俺もメッシュの戦い方を知っていた。
トッププレイヤーの中でも『ナイツ・オブ・マジック』のギルドマスターであるジュンヤと最硬を争い合う生粋の盾役。
全身を覆う白銀の鎧と大盾。右手に持った純白の片手剣。いずれもトッププレイヤーに相応しい性能を持っている。
ジュンヤが魔法と剣を両立して戦う魔法騎士なら、メッシュは回復と光属性攻撃と剣を扱う神聖騎士。回復役が間に合わなくても自分で回復をして延命することができるため、ソロ安定で挙げられるスタイルなのかもしれない。
中でもメッシュが得意とするのは、攻撃を受けている間に溜めて、『カウンター』と同時に解き放つ反撃の一手。これがボス戦で決まって大きくHPを削れると非常に盛り上がるのも何度も見てきている。それが今度は自分に向けられるとなると、非常に厄介だ。タイミングを見計らって、防御で隙を作らせてからの『カウンター』も警戒しなければならないし、かと言って魔法耐性もかなり揃えているはず。
俺もトップクラスではあると思っているが、攻撃が突出して高いタイプだ。そんな俺が盾役を倒す定石は、反撃の隙を与えないほどの猛攻で押し切る。……ただ、それが通用するわけもない。
「……」
メッシュは盾を正面に構えてじっと俺を見ていた。メッシュの本領は防御。攻撃主体の俺の出方を窺う姿勢だった。俺としてもどう攻めていくか考える余地が出るので有り難い。
周囲は不可視の壁の外で固唾を呑んで見守っている。
「『ドラゴンフォース』、『闇竜紋』、『ドラゴン・ドラグーン・ドラグオン』、『聖邪昇華』」
最初に取り出した武器に合わせてスキルを使用する。普段使う竜系の三つに加えて、アリシャの助言に従い取得した『聖邪昇華』。このスキルは聖と邪、相反する二つの力を身に宿している時、相乗効果を生んでそのスキルの効果量を大幅に引き上げるという効果を持つ。
聖竜剣・ホーリードラゴン、闇竜剣・ダークドラゴンの『二刀流』を用いる俺にとってはかなりいいスキルだ。
俺が戦闘態勢に入ったために、場の緊張感が高まり空気が張り詰めていく。
俺は待ち構えるメッシュに対して、ゆらりと身体を倒すようにして駆け出す。そうすることで『縮地』が発動し移動速度が一時的に上昇した。それ以外にも移動速度を上げるスキルを多数所持しているので、八メートルほどあった距離がほぼ一瞬で縮まっていく。速度特化のプレイヤーには流石に及ばないが。
ガキィンッ! と俺の振るった剣とメッシュの大盾が激突する。相手もバフスキルを使用したのか数センチの後退もなかった。その後も交互に剣を叩きつけていくが、なかなかメッシュの防御を破ることができないでいる。
「【断罪の柱】!」
防御に徹していたメッシュが攻勢に出た。俺の足元を光が照らし、咄嗟に大きく後退する。直後天井へ向けて光の柱が立ち昇った。その中をメッシュが突っ込んでくる。自分の放った攻撃でダメージを食らわないことを利用したようだ。
右手に掲げた剣が光を帯びているので、おそらく『チャージ』の類いだろう。ずっと盾の後ろでチャージ時間を稼いでいたらしい。
「【神聖光破】ッ!!」
「【竜撃】」
更にアビリティを使うことで一撃の威力を高めていく。メッシュの一撃に対して、俺も真っ向から迎撃することを選択した。
光を纏う強大な一撃と、暗黒の竜を纏った一撃がぶつかり合い衝撃波が奔る。『チャージ』を行っても互角程度だったことに顔を歪めているのが見えた。……俺としても『チャージ』したとはいえ『聖邪昇華』の効果でかなり強くなっているはずの一撃を、攻撃主体じゃないプレイヤーに相殺されたことに少しだけ眉を寄せる。溜めた時間はそこまで長くないと思うのだが、それでも強くなっていると確信できる状態で相殺された。防御はこの攻撃以上と考えると、防御を貫くにはどれだけのスキルを組み合わせればいいのか。
「【竜双撃】」
【竜撃】の威力を持った一撃を、左右の剣で続け様に放つ。左、右、両方の三連撃だ。メッシュは盾でしっかり受けたためにHPの減りは僅かだった。だが後退させることはできたので、つけ入る隙は必ずあるはず。
攻防一体、攻撃主体の戦闘は均衡を崩さないまま、しかしメッシュの攻撃は俺が相殺または回避するために僅かながらHPが削れていってHP上では俺が有利となる。直撃はなくとも防御はHPが多少減ってしまうため、残りが八割を切っていた。ただ二割なんて削ってないも同然だ。メッシュも決め手には欠けるようで、なにかを考えながら防御に専念している様子だった。
相手が冷静である以上、俺も冷静でいなければならない。なによりメッシュを倒したところでボスが一人減るだけであって、ゲームのクリアに直接の繋がりがあるわけでもない。だから冷静に、着実に倒す必要がある。
……ただ、一つ懸念があるとすれば。これまでのメッシュとは俺への態度が違っていることくらいかな。
俺に対して普段から敵意に近い感情を向けてきていたメッシュが、やたら冷静に見える。もっと言うとまともに見える。……まぁ『軍』を率いている時は俺への態度とは裏腹に厳しくも優しい、とはジュンヤから聞いているのだが。
ただ相手の思惑を探るほどの余裕はない。多少のHP差が余裕にならないことは知っている。
「【ヘブンズ・フィールド】!」
メッシュが剣を頭上に掲げてアビリティを使用した。大きく後退して彼を中心にした光のドームから逃れる。確か範囲内にいると光属性の継続ダメージを受けるんだったか。近づけさせないようにした後は、回復か装備の切り替えなんかが有力だが……。
「そう睨むな。このままでは埒が明かないと思ったのでな。先に切り札を切らせてもらう」
メッシュは言って、フィールドの中央で盾を下げ剣を握る手を胸の前に持ってくる。刃を真っ直ぐ上へ伸ばす形にして、切り札の名を口にした。
「我が威を示せ。――『神聖七星剣』ッ!!」
メッシュの構えた剣から、虹色の光が放たれる。知らないスキル名だ。聞いたこともない。俺も色々と手を出しているが、極めたスキルは知らないから当然か。
「……『SSS』!?」
アリシャが驚きの声を上げたのが聞こえてきた。思わず横目で見てしまう。名前がそれと一致しなかったからだ。
「『神聖七星剣』が?」
「……『セイクリッド・セブンスター・ソード』。で、『SSS』。IAO上では唯一万能防御とも呼べる効果を持ってる」
なるほど。和名だとわかりにくいが、正式名称だと確かに『SSS』だ。というか俺が持っている二つよりもまともな名前に思える。
そしてその効果は防御。しかもアリシャが万能と呼ぶほどの効果と来たか。正しくメッシュが扱うに相応しい。というより、メッシュは女王側の人間だからそのスキルの存在を知って習得できるようにスキルを会得していったのかもしれないが。
「そうだ。この『神聖七星剣』は防御特化の性能を誇る。貴様が攻撃特化だとするなら、これは最強の矛と最強の盾の戦いというわけだ」
メッシュは余程自分のスキルに自信を持っているのか、不敵に笑っていた。……『DDD』や『UUU』と同じ系統のスキルだとするなら、その自信も頷けるな。防御特化だと言われようと、俺がやれることは変わらない。ただ攻め続けるのみ。
フィールドが消えたタイミングで駆け出し、距離を詰める。両手の剣を叩きつけるように攻勢へと転じたが、メッシュは防御に専念するらしくどれだけ攻撃を重ねても直撃を与えることはできなかった。しかも。
……受けるダメージが減っていってる?
防御はダメージを軽減する行動だ。ダメージがないわけではない。ただ俺の一撃を防御した時に減るHPが減少していっているのがわかった。その上で、HPが徐々に回復しているのも確認できる。最初は微々たるモノだったが、おそらく時間経過によって回復量が上がっていっているから、次第にわかりやすくなっている。回復量が増えたのは攻撃された回数に応じてかと思って手を止めたが、それでも増えていたので時間経過で間違いない。
俺の攻撃が効かなくなっていったのも、おそらく時間経過によるモノ。となると『SSS』の効果は――。
「HP持続回復と、受けた攻撃の耐性獲得ってところか」
防御特化、と言われて納得だった。しかも時間経過でその二つの効果量が増していくと来た。……厄介極まりないな。一つのボス戦だったら無敵とも言える防御力を誇ることになる。
「その通りだ。『神聖七星剣』共通の効果として、効果を発動している間に受けた攻撃の耐性を獲得し、時間経過によって効果量を増していく。その上で第一の効果、【寿老人】で時間経過によって増加する継続回復を得るわけだ」
攻撃の手は休めていないのに、余裕たっぷりに説明してくれる。その理由はわかっていた。俺の攻撃が、一切ダメージを与えなくなったからだ。その代わり、HPの回復量も上限に達したらしく一定になった。
「……最終的に無効にまでなるのかよ」
「ああ。でなければ、万能防御とは言えないだろう?」
「そうだな。――『ウェポン・チェンジ』」
得意気なメッシュに頷きながら、俺は両手にあった剣を左手のみのアヴァロンソードに変更する。武器性能としては劣る一品だが、これでメッシュがどんな耐性を得ているかわかるはず。スキルを全て解除した上で盾の上から攻撃――ダメージはなかった。
「……チッ」
思わず舌打ちが出てしまう。一旦距離を取って整理しようとしている間にも、メッシュのHPが継続回復によって全快してしまった。ただ、MPの減りはあるようだった。
「ほう、気づいたか。流石戦いに明け暮れていたプレイヤーだけのことはある」
にやりと笑ったメッシュの説明を聞く気はなかったため、先んじて告げる。
「武器の攻撃耐性まで取得してるってことだろ」
「その通りだ」
厄介ここに極まる、といったところだ。アヴァロンソードで攻撃したのは、武器の攻撃の種類にまで耐性がつくか試したかったから。二本の剣は武器自体に属性が付与されているので属性耐性を獲得されるとダメージが軽減されてしまうのはよくわかった。だから、武器に属性のついていない剣でダメージが通れば武器攻撃には耐性がつかない、ということだったのだが。
「今は聖属性、闇属性、竜属性、斬撃に対して耐性を得たってところか」
俺が持てる手の中で、メッシュの継続回復を上回って攻撃できる手段は、おそらくそう多くはない。『DDD』はもう使えない。『DDD』は発動すると竜の力による侵食で強化、竜属性を付与するという効果を持っている。竜関係のスキルを使うと更に効果を引き上げるモノだが、竜属性無効がついてしまった以上実質使用不可だ。……一応耐性の上から攻撃できる手段もあるが、それは最終手段だ。
「……それより、七福神とはな。“神聖”ってのはそこから来てるのか?」
「ああ。七福神由来の効果を、時間経過毎に足していく。一段階目は終わった。さぁ、次の形態に移るぞ。言っておくが、時間経過が終わるまで攻撃しない、というのは通用しない。形態毎、神が切り替わる毎に耐性を獲得していない攻撃を受けてから経過時間のカウントが始まるからな」
流石にそこまで甘くない、か。俺がもし『UUU』を持っていなかったら詰みだった可能性もあるな。
「なら、次の攻撃を始めるしかないか。――『ウェポン・チェンジ』」
俺は浮遊する巨大な四角い大砲を出現させる。『バハムートの襲来』で手に入れたアルファ・ディ・ベルガリエだ。……小細工はなし。この時間経過は砲撃耐性だけしか与えない。
「発射!」
二つ現れた砲口から絶え間なく砲弾を放ち続ける。この砲弾は属性付与がないため、砲撃のみ耐性を獲得されるはず。ただ攻撃するだけでもかなりの威力を誇るので、最初こそHPを削れていたのだが。徐々にダメージが減っていきやがて無効化されてしまう。
「これで二つ目の形態を経た。しかしいいのか? 第二の神、【福禄寿】の効果を探らなくて」
「どうせ後でわかる」
「なるほど。なら、早速第三へ移るとしようか」
一応予測してみようかとも思ったのだが、【寿老人】が長寿を司るからHP継続回復という由来なら、異名の神ともされた【福禄寿】がどんな効果を持っているか予想しづらい。もっと七福神に詳しければわかるのかもしれないが、俺は名前くらいしか知らないからな。
「第三の神、【布袋】」
今度は最初に宣言してしまうようだ。メッシュの頭上に大きな白い布の袋が出現した。
「これは簡単でな。時間経過が必要のない効果だ。先に教えてやろう。袋を経由してアイテムを即時に、動作なしに取り出せる。これだけだ」
メッシュはそう告げると、袋の口からMP回復ポーションを出現させた。落下して当たる直前で消失し、代わりにメッシュの消費したMPが回復する。
「『神聖七星剣』は強力だが、どうしてもMP消費が大きくなってしまうのでな。こうして回復手段を確保できるわけだ」
光属性や回復もできる職業ではあるが、本職を比べるとMPが低い。それを補うアイテムを、素早く取り出せるわけか。
「アルファ・ディ・ベルガリエ。打撃形態」
俺が呟くと、二門の大砲が空中で変形し巨大なハンマーへと姿を変える。柄の細い部分を両手で握った。これを使うのも久し振りだな。滅多に使わないから、色々な攻撃手段を使おうと思わなければ思い出せなかったかもしれない。
だがこれなら、条件さえ合えば無効化される前に削り切ることができるかもしれない。
「【雷神起動】。対象選択、座標固定。殲滅開始」
アルファ・ディ・ベルガリエが打撃形態となって使用できるアビリティ。青白い雷を纏って攻撃の威力と速度を増幅させる。加えて振るった時にハンマーの尻側からジェットみたいなのが噴射されるのでその分も加算される。ただこれで打撃と雷に耐性を獲得されてしまう。打撃武器はあまり持っていないので、後半あまりキツくないはずだが。
座標固定は、電磁波によって敵をその場に固定する能力のようだ。これによって、次の攻撃が確定で当たる。これは状態異常ではないため、防ぐ手立てがあまりないというのが利点だった。一度アビリティを撃つと解除されてしまうので、次の攻撃を当てるためだけの能力とも言えるが。
「チッ……! 『キャッスル・ウォール』!」
メッシュは俺がなにをしようとしているのか大体理解できたのだろう。『神聖七星剣』の耐性獲得だけではなく、純粋に防御力を上げるスキルを使ってきた。
「【雷神鉄槌】!」
ハンマーを左に構え、後方に向けた鎚の半分からジェット噴射が行われる。地面を滑るようにそのまま急接近して、ダン! と強く床を踏みつけた。
「【雷神連鎖】ッ!!」
そこから、最後の技に移行する。モーションは単純で、その場に留まりハンマーを左右から振り続けるのみ。ジェット噴射と青白い雷によって加速し続け、威力を上げ続けることができる。ただ相手がその場に留まってくれるかどうかは怪しいので、大抵は途中で終わってしまう。
一撃目をメッシュに叩き込む。大きくよろめいたが盾を手放すこともなかった。二撃目、三撃目とどんどん叩き込んでくる。速度と威力が上がり続けて敵に抵抗する気力さえ奪う猛攻。耐性を獲得し始めたばかりだからかHPの減りも早い。【雷神連鎖】はメッシュの『神聖七星剣』とは異なり、攻撃した回数によって技の威力と速度が上がっていく。その上がり具合が耐性の上昇を上回れば、HPが回復するよりも早く削っていくことができる。
「ぐ、おおおぉぉ……!」
激しい打撃の嵐に、流石のメッシュも呻き声を漏らしている。……クソッ。思ってたよりHPの減りが遅い。バフさえかけられなければ、いやここからなんとか削り切る。
時間を重ねる毎に一撃のダメージが減っていき、それを攻撃回数でなんとか対応する。それでもやがて耐性獲得が上回り継続回復で相殺されるようになってから、ややメッシュが安堵したのがわかった。雷が舞っているので顔が見えたわけではないが、それでも対面しているからこそ理解できた。
なら、ここが好機。
「アルファ・ディ・ベルガリエ。【超過駆動】!!!」
「ッ!!?」
俺に呼応して、アルファ・ディ・ベルガリエ自体が赤く発熱し始める。HPを継続的に消費する代わりに、攻撃力と攻撃速度を二倍にする。短い時間だがこれがあればまた削っていける。
ただしこれはそれぞれの形態で発動条件が異なり、打撃形態の時は一分間に千発以上の条件達成が必要だ。普通にやっていたら達成できないので、【雷神連鎖】を継続できなければ不可能と見ていいだろう。条件が難しい代わりに、発動すれば大きな効果を発揮する。
「ぐううぅぅぅぅぅ……っ!!」
更に激化する攻撃に、またメッシュのHPが減少していく。順調にHPを減らし続け、袋から出てきたアイテムも途中で消失してしまっているのか効果を得られていない。HPは既にレッドゾーンへ到達していた。
「【アトラス】!!」
「【継続は力なり】!!」
メッシュが攻撃力を下げて防御力を大幅に上げるアビリティを、俺が攻撃し続けていると攻撃力が上がっていくアビリティを、それぞれ使用する。途中からでもそれまで継続していた攻撃回数分効果があるから、急に減らすにはいいかと思って取っておいたのだが、決めにかかりたい俺と耐えたいメッシュのタイミングがほぼ同時。状況がほぼ変わりないと見て追加のスキルをどんどん唱えていく。
結果、メッシュのHPが残り僅か、一発分となる。次の回復が来る前に決めなければと急いで次の一振りを叩き込み――HPが削り切れなかった。
「なにっ!?」
動きは止まらない。次も一撃を与え、しかしHPが減らなかった。継続回復で回復した分は削れるのに、あと数ドットが削れない。この光景を俺は知っている。
「……『死地にて戦え』か!」
「その通りだ!」
『死地にて戦え』。効果時間中、HP1で耐えるというモノだ。大きな効果のため戦闘中一度しか発動しないスキル。だが、『神聖七星剣』とは頗る相性がいい。
こうなると俺にできることは、効果が切れるまでHP1のままにして切れた瞬間に攻撃を叩き込むことだけだ。だが効果時間が切れる前に無効化まで達してしまったらしく、HPが回復しても削れない。……クソッ! ここまで来たのに!
下手に別の攻撃手段に切り替えて耐性を獲得されても後が困る。攻撃手段が限られている中、それは悪手だろう。ただいつ相手が形態を切り替えるのかがわからない以上、一回目の攻撃が無効化された後に耐性を獲得できるのかもわからない。
「残念だったな、リューヤ! これで第四の神だ!!」
メッシュは回復するだけとなったHPで、そのまま四つ目の形態に移行するようだ。……形態移行の条件は、おそらく時間経過。または耐性を無効化してからと言ったところか。次はずっと新しい攻撃はせずに時間を経過させる。多分、時間経過は三分間だ。攻撃してからの時間は二回目の余裕のある時に数えていた。形態が進んでも変化がないかは今の第三で判明したが。
「だが、流石は最強と名高いプレイヤーだな。まさか『死地にて戦え』を第三で使わされるとは」
メッシュは思ってもいないような顔で告げてくる。……第一で能力が判明したなら、第二で使わせるべきだったとでも言いたそうだ。
ただ今も継続回復でHPが戻っていっているので、話す暇もなく攻撃に移るしかない。
さて、次はなにを使おうか。




