プレイヤー鍛冶店
「とりあえず、試しに使ってみるか」
威力も知りたいしな。
ビックボニーを探しては魔法をぶっ放し、探しては魔法をぶっ放しの繰り返しをしていた。
ストーム系の魔法は、単体攻撃魔法ではないらしい。二体以上を相手にしてないからわからないが。
ボール系三発分のMP消費に、ボール系二発分のダメージ。約、だけどな。全体攻撃魔法だとすれば、かなりいい。
【クロススラッシュ】は、【スラッシュ】よりダメージが多いからいい。まあ、当たり前だが。
MPは魔法を使うのに消費するため、『剣術』などは得だ。まあ、使った後に数秒使えないが。魔法は連発出来るけどな。
……のはいいが、ボス級モンスターとやらにはいっこうに会えない。もうすぐ昼だし、一旦街に戻るか。
ボス級モンスター討伐を一旦諦めて、街に向かう。
▼△▼△▼△
金も素材も結構ゲットしたし、鍛冶職のプレイヤーでも探すか。
とりあえず街をブラブラ歩いてみる。
「おっ? 『プレイヤー鍛冶店・knight 』か。入ってみるかな」
カランカラン。
「……いらっしゃい」
中は鍛冶屋だけあって殺風景だった。カウンターの向こうに無表情な美少女が立っていた。……プレイヤーらしい。
長い黒髪に黒い瞳。無表情だが、顔は整っていて、美少女だ。
「店がもう建つなんて、早いな」
とりあえず話しかけてみた。
「……まあ、女性プレイヤーは重宝されるから」
照れているらしい。要するに、女性プレイヤーで鍛冶職が貴重で、多くの人から武器生産を頼まれたりした、ってことか。
「買い取りもやってくれるのか?」
アイテムを確認してないが、売れば金になるハズだ。
「……うん」
「じゃあ、とりあえず全部出していいか?」
「……うん」
よしっ。んじゃ、これとこれとこれと……。
「これで全部だな」
カウンターにどっさりアイテムが積み上がった。
「……凄い。これ、全部売るの?」
少し目を見開いて言う。まあ、今まで売らなかったからな。
「いや。武器か防具に出来そうだったら造って貰おうと思うんだが」
「ちょっと待って。【鑑定】」
【鑑定】? 鍛冶職のスキルだろうか?
「……欲しい武器の系統は?」
「片手剣と杖だな」
「……。これなら、かなりの武器が造れるかもしれない。特に、ゴブリンの素材は武器にいい」
なるほど。
「じゃあ、それで武器を五個ずつぐらい造れるか?」
「余裕」
「じゃあ、頼む」
「武器計十個で3250」
「はいよ」
アイテムウインドウから3250Gを出現させ、渡す。
「『武器生成』、エリナソード」
片手剣はエリナソードと言うらしい。少女の手にある素材が光り、武器が生成される。
「あっ。一つだけ、大成功した」
「大成功?」
何だそりゃ?
「大成功。通常より強い武器が生成される」
それは凄いな。ラッキー。
「エリナソード四つと、アヴァロンソード一つ」
それらがカウンターの上に置かれる。
「おぉ……。強そうだな」
黒い光を放つ、長く細い片手剣。
「これは貰おう。エリナソードも一つ。あとは売るから」
「……ありがと。結構強い武器だから、売れる」
そう言って、少し微笑む。
「そりゃ良かったな。次は杖を頼む」
「うん。エリナソード三つだから、防具と杖のお代はいらない」
「いいのか?」
「それが普通」
そうなのか。よくわからないが。
「『武器生成』、マジックロッド」
杖の方はマジックロッド、か。
そうして、マジックロッドが生成される。
「っ~~~~!」
完成した杖を見て、少女が驚愕に目を見開く。
「どうした?」
「……これ、激レア」
マジか!?
「ブレード・オブ・ロッド。杖の上級、魔杖剣の一つ」
魔杖剣? 何だそりゃ?
「杖を起動すると、杖の先から刃が出てくる。魔法戦士系専用武器」
何つう幸運だ。俺、魔法戦士じゃん。
「マジでありがとうな」
めっちゃ嬉しい。
「……うん。マジックロッドは一つだけ貰う?」
「ああ」
それでいい。
「防具の生成をするけど、どういう防具がいい?」
「う~ん。そうだな。アクセサリー系一種、黒いコートがあれば二着ぐらい、ズボンも靴も黒がいいな」
黒で統一したい。
「大丈夫。それならこの素材で造れる」
少女が取り出したのは、昨日の夜にやたらと出てきたバットバットの素材だった。蝙蝠っぽいから、夜行性だったんだろうな。
「じゃ、頼んだ」
「うん。『防具生成』、【一括生成】」
一括でも出来るんだな。鍛冶職のアビリティだろう。
「出来た。今の装備よりはいいハズ。大成功はなかったけど」
そりゃそうだ。大成功が毎回あったら攻略が簡単になっちまうからな。
「サンキュ。んで、これはどんな効果が?」
俺はアクセサリー、ブレスレットを持って言う。
「INT、MDF微上昇、魔法命中率補正」
俺にぴったりだな。
「そこまで気を遣ってくれてありがとうな」
俺に合う防具を選んでくれたみたいだし。
「ううん。喜んでくれたら、いい。……あとは全部売却?」
少女が聞いてくる。素材は武器と防具で三分の一ぐらいに減っていた。まあ、頑張れば取り戻せるけどな。
「ああ」
俺は頷く。黒魔法には回復がないからな。回復アイテムを買いたい。
「全部で2810G」
少女から2810Gを受け取る。高いのは装備に使ったんだな。あんまり多くない。
「サンキュ」
「フレンド登録、しない?」
「ああ、はいよ」
俺は少女、アリシャとフレンド登録してから、道具屋に向かい、HP回復とMP回復のアイテムを買い込んでから、西の草原のボスを探しに出掛けた。




