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Infinite Abilities Online   作者: 星長晶人
煮えたぎる溶岩編

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アルティの冒険

二週間の予定でしたが書き上がったので更新しま


次は二週間後になる予定です

 相変わらず、アルティの朝は早い。


 だが今日は二度寝せずに、リューヤを叩き起こした。


「……ん? アルティ、まだ時間じゃないぞ……」


 リューヤは一時的に寝惚けたまま目覚めるが、時間を見たのかすぐに目を閉じてしまう。普段ならもう少し寝かせてあげるのだが、今日のアルティは違った。


 ぺちぺちぺちぺち、とリューヤの頬を連打して叩き起こす。


「……分かったって。起きるから」


 リューヤは渋々上体を起こし、アルティと共に部屋を出た。


 何故アルティがここまで急いだ様子なのか。


 それは、アルティの退屈を紛らわすためにリューヤがテイムモンスター同士での買い物を持ちかけて、相手方二人にも了承を貰っているからで、今日がその当日となる。アルティは街のある場所で待ち合わせており、待ち合わせは午後二時頃とまだまだ先の話なのだが、楽しみで寝ていられない、というのがアルティの心境だった。


 その後アルティはいつものようにリューヤを見送った後、朝食と昼食時にアリーンによって呼ばれた者達によって忙しい時間を過ごした。


 そして午後一時半、その少し前になった。


「……いいよ、アルティ。いってらっしゃい」


「……キュウ」


 まだ昼食の忙しい時間帯であり正直アルティがいても回らない状況だったが、アリーンはソワソワと周囲を見渡すアルティにそう告げた。アルティはそんなアリーンの気遣いを感じ取って感動に瞳を潤ませていた。


「……こっちのことはいいからいってらっしゃい。外は寒いからマフラーして、知らない人についていっちゃダメだよ」


「……キュウッ!」


 アリーンの優しげな視線に元気よく答えたアルティは、クリスマスに貰った赤いマフラーを小さな手で器用に巻くと、ぺこっとアリーンに頭を下げて宿を出た。


 宿を出ると冷たい北風がアルティの身体に吹きつけられるが、アリーンの忠告通りきちんとマフラーをして出たため、思いの外寒くない。それはアルティがこれからのことを楽しみにしてきて、寒さなど苦にならないからというのもあるのかもしれない。


 アルティは待ち合わせ場所である噴水前に、自分より大きな人混みを駆け足ですり抜けて向かう。


「……キュウッ!」


 噴水まで行くとアルティを待っていると思われる二匹の影があり、アルティは片手をブンブン振って声をかける。


「……クウッ!」


 アルティより身体は小さいが尻尾を入れるとアルティと同じくらいになると思われる、小さく漆黒の鱗を持つドラゴン。ドラゴンだが小さく可愛らしい雰囲気を醸し出していて、アルティの声を聞いて嬉しそうに顔を綻ばせ同じように手をブンブンと振っていた。


「……おぉ。これで全員揃ったんやな」


 関西弁でアルティを視界に捉え呟いたのは、茶毛の鼬。もちろんただの鼬ではなく、鎌鼬というモンスターである。二匹よりやや大きく、大人っぽく見える。戦闘時には両腕の肘から先を鎌に変えて戦うのだ。


「……キュッキュー!」


「……クックウ!」


 二匹の下に辿り着いたアルティは、漆黒のドラゴン、ダークドラゴンのクドラとちっちゃい手同士でハイタッチをする。


「……女子はやっぱ、テンション高いな」


 やれやれと腰に手を当てて首を左右に振るのは、鎌鼬のカイ。アルティとクドラが女の子に対して、カイは唯一の男子で大人。この場で言えば保護者という立場である。カイ自身も女の買い物などについては充分理解しており、今日は引っ張り回される覚悟でここに来ている。


「キュウッ!」


「クウッ!」


 すっかり意気投合した様子のアルティとクドラ。しかし出会いは最悪だった。アルティとクドラは会った瞬間から睨み合い、数秒の睨み合いの後アルティからリューヤに抱き着いて泣きついたのだが、それからアルティとクドラはあまり仲がいい状態ではなかった。回数を重ねる内に、戦闘をこなす度に二匹の距離は縮まっていき、今ではこうして意気投合するまでになっていた。


「……ほな、行きましょか」


 カイはテンションの高い二匹を見て苦笑しつつ、往来の真ん中で騒ぐ訳にもいかないと常識で判断し、二匹に声をかけて移動し始めた。


 それから三匹は、一緒に色んな場所を見て回った。


 武器屋に行って主の使う武器はどれだと言い合ったり、武器を落とした拍子に爪先数センチ先に突き刺さって肝を冷やしたり。


 八百屋に行って自分の好きな食べ物は何だと言い合ったり、お腹が減ってしまったので次は夕食にしようかと言ったり。


 アルティがリューヤと何度か行った屋台に向かい、しっかり金を払ってアルティのことを覚えてくれていた店員と少し話して、一緒にクレープを食べたり。


 途中ウエディングドレスがショーウインドウに飾られているを見つけたアルティとクドラが目を輝かせて食い入るように見つめ、カイがやれやれと呆れたり。


 楽しい時間はあっという間に終わりを告げ、別れの時間となる。だが寂しくはない。別れてもまた会うことが出来、特にアルティとクドラは一緒に出かけようと約束したからだ。


 二匹と別れ、アルティはアリーンが待つ宿屋へと歩く。上機嫌に、悠々と。


 しかし、アルティが浮かれて油断を生んだのが、事態を急転直下させる。


「……アルティ」


 上機嫌に街道を歩くアルティの耳に、リューヤの声が聞こえた。


「……キュッ?」


 アルティは思わぬ声に立ち止まり、声が聞こえた小路を覗き込む。そこにはアルティの知るリューヤがいて、にこやかに手招きをしていた。


「……キュ?」


 こてん、とアルティは首を傾げる。


「……ほらおいで、アルティ」


 そんなアルティに対してリューヤは手招きして言い、小路の角に曲がって姿を消す。


「……キュウ?」


 アルティは不思議そうに首を傾げる。頭にはいくつもの「?」が浮かんでいるようだった。


 声も、顔も、格好もリューヤ。それは間違いない。だがアルティの鋭敏な嗅覚は、異なる匂いを発していることに気付いた。


 リューヤと異なる匂いを持つ者が、リューヤの声と見た目でアルティを呼ぶ。しかもアルティの鼻は曲がった角の先に複数の匂いがあることも嗅ぎ取っていた。


 普段なら、無視して宿に帰っていたかもしれない。


 だが今日のアルティは浮かれていて、一刻の早くリューヤに今日のことを話したかった。


 だから、アルティは呼ばれた方に向かう。


「……アルティちゃんゲットー♪」


 だからこそ、角の先に待つ、リューヤの顔をした何者かに、何らかの睡眠作用があるアイテムをかけられてしまった。


「……キュ」


 ニタニタと笑う複数のプレイヤー達に囲まれて、しかしステータスの高いアルティでも即効性があるのか、すぐに眠気によって意識を刈り取られてしまった。


ここから先、アルティの姿を見た者はいなかった。

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