異常事態発生
ストックがたまってきたので不定期更新にします。
今日は二話ぐらいいけそうです。
「お兄ちゃん、大丈夫!?」
リィナと姉ちゃんが心配そうに駆け寄ってくる。
「ん、大丈夫だ」
姉ちゃんの【ヒール】でHPも満タンになったしな。
「よかったわ。リューヤ、あんな上まで飛ばされてたから心配だったのよ」
「ああ。めっちゃ痛かった。半分も減ったしな。けど、二人がいて良かった」
マジで。
「今日はまだやる?」
リィナは不安そうに言う。
「何言ってんだよ。今日の目標、ビックボニーを一人で倒す。に決定したからな」
笑って言う。
「え~」
リィナは不満そうだったが。
その後も、会っては吹っ飛ばされて、会っては吹っ飛ばされての繰り返しで、午後になってやっとコツを掴んだ。
「はっ!」
すれ違い様に片手剣で一撃を喰らわせてやる。
「ブヒィ!」
ビックボニーのHPが真っ白になり、消えていった。
「やっと倒せた~」
疲れが襲ってきて、座り込んでしまう。
ビックボニーの経験値は高かったので、一日でレベル5になった。
ステータスはSTRとINT、VITとAGIに降り、ちゃんとバランス良くしといた。
「今日はもう終わりね」
姉ちゃん達も暇があったらモンスターを狩ってたから、俺よりレベルは上のハズだ。
「二人は何レベまでいった?」
「「10」」
二人揃って言った。……上がり過ぎじゃねえ? チートかよ、全く。
「ビックボニーの討伐数よ」
チートではないらしい。
「βテスターは装備がいいから、すぐに倒せるの」
むぅ、ズルいな。
「金もちょっと貯まったし、まあいいか」
βテスターとのレベル差は頑張って埋めるしかないが。
全財産、500ちょっと。ここはそこまで強くないから、金稼ぎには使えないらしい。
「う~ん。5レベだったらまだここがいいかな。難易度が二番目に易しいのは推奨レベル10だし」
10か。遠いな。
「装備が買い揃えられる程お金持ちでもないし、しょうがないわね」
ここでしばらくやって、段階的に難易度を上げてくって訳か。
「なあ。二人はギルドの方に行かなくていいのか?」
二人共ギルドメンバーがいるし。
「大丈夫よ。何日か様子見て、それから攻略に挑むらしいから」
「うん。ギルド的には私の方が進んでるんだよ」
そうなのか。まあ、デスゲームになって進んでプレイするヤツなんて少ないだろうしな。
「じゃあ、余程好戦的なヤツ以外はまだ街にいるのか」
不安だろう。
「うん。百人いればいい方だと思うよ」
少ないな。まあ、当たり前か。
「今日は終わりにして、とりあえず街に帰るか」
俺は言って、『索敵』でモンスターを避けながら帰った。
▼△▼△▼△
「あっ。いいところに来たね」
街に戻ると、にこやかな青年に声をかけられた。
「ナッシュさん。どうしたんですか?」
姉ちゃんの知り合いらしい。
「うん。説明するより、広場の総合掲示板を見た方が早いよ」
にこやかな顔を歪めて言う。どうやら、緊急事態のようだ。
「とりあえず行こう」
ナッシュさんが先行して、広場へと向かった。
「あれだよ」
広場の中央、噴水の隣にある半透明なウインドウ。それを指差して言う。
「「「っ!?」」」
三人共驚愕した。
そこに表示されていたのは、こうだ。
南の森、死亡者51名。
「確か、今日フィールドに出たのが百人ちょっとだから、半分は南の森で亡くなったらしいね」
言葉が出ない俺達に、ナッシュさんが言った。
「南の森は精々真ん中くらいの難易度では……?」
「うん。南の森はおかしいんだよ。何も知らないプレイヤーはともかく、βテスターまで殺られてる。難易度が上だと思われていた北の洞窟は生還したからね」
それは、おかしい。普通のプレイヤーはともかく、βテスターまで殺られただと?
「何かのイベント、でもないんですよね」
「うん。クエストだったらちゃんと通知が来るハズだからね」
「南の森に強い敵がいるってことですか?」
「……わからない」
そんな、βテスターも殺られるような強い敵がいたら、攻略が進まねえじゃんかよ。
「僕達はβテスターということもあって、相談して南の森を調査することにしたよ」
「えっ? それは危険じゃ……」
「うん。だけど、βテスターがやらなきゃこの問題は解決しない」
……確かに。βテスターが殺られる程の強さなら、βテスターが束になって戦えばいい。
「なあ。だったら、βテスター時のギルドとかに当たってみて、普通のプレイヤーでもレベルが高いヤツを誘えばいいんじゃないのか?」
俺はナッシュさんに聞いてみる。
「そうだね。ギルドでも参加するかしないかは自由だから、いい案だね」
「そりゃどうも」
適当に返事をしておく。
「……じゃあ、こっちでも募集はしとくから、三人も参加はしなくていいから、人を集めといてね」
そう言ってナッシュさんは去って行く。
「要するに、互いで互いを募集させて、姉ちゃんと『戦乙女』に参加して欲しいってとこだな。意外と腹黒いヤツだ」
美青年のくせして。
「よくナッシュさんの狙いがわかったわね」
「あの人、ああいうとこが嫌いだよぅ」
姉ちゃんが驚いたように言って、リィナが嫌そうに言った。
二人共、腹黒いことわかってて付き合えるんだな。まあ、もしかしたら『ナイツ・オブ・マジック』のメンバーかもしれないし、一応善人なんだろう。




