素直に言えたなら
「好きです」
ずっと伝えられなかった
この一言を
今日は
勇気を出して伝えます
このまま
何も言えずに恋が終わるのは
嫌だから
今日はあなたに
この一言を
伝えます
◇◆◇
「相談って何?」
正直、ここまで上手く事が運ぶとは、思わなかった。
「相談したい事があるんです」
そう言って、先輩を呼び出したのも、親友である希望の提案があってのことだった。
私には、一年間片想いの先輩がいる。名前は、片倉卓磨。
私より一つ上で、同じ吹奏楽部だ。でも、先輩は三年生なので、今月あった定期演奏会で引退してしまっていた。
「あーあ。先輩に会えないよ」
希望にそう嘆くと、希望はあっさりと、
「告白しちゃえば?」
と言ってのけた。
「え! そんな事出来ないよ」
私はうろたえた。
だって、先輩に彼女がいる事を知っていたから。
告白した事で、迷惑をかけたくないと、希望に言うと、
「告白されて、迷惑だと思う人はいないんじゃないかな。たとえ、その人に彼女がいたとしてもさ」
優しく答えてくれた。
「だから、告白しちゃいなよ。結果が悪かったとしても、素直な気持ちを伝えられれば、それだけですっきりできると思うよ」
希望のその言葉で、決心がついた。
「私、頑張ってみる」
あの時、言ってれば何か変わったかもしれないのに。なんて一生後悔するのだけは嫌だから。
そして、放課後。相談があるのでと、先輩を呼び出して、この状況になったという訳だ。
「ねえ。相談って何なの?」
先輩が、もう一度繰り返す。
・・・・・・どうしよう。希望はどう告白すればいいかなんて教えてくれなかった。
ここは、ストレートに『好きです』って言えばいいのかな。
しばらく黙り込んでしまった私に、痺れを切らしたのか、先輩は言った。
「美香ちゃん。それっていいニュース? それとも悪いニュース?」
やっぱり男の子って鈍感なんだな。よし、単刀直入に言おう。
私は決意して、口を開いた。
『好きです』
そう言うつもりだったのだが、なぜか急に恥ずかしくなって、口を閉じてしまった。
それから、何回か試みるも、どれも失敗に終わった。
金魚のように口をパクパクしている私を見た先輩が、
「頑張れ」
笑いながら励ましてくれた。
『私がこんな滑稽なまねをしているのは、先輩のせいなんですからね』
そう言えたら、どんなに楽だろう。
自分の素直な気持ちを伝えるのをためらってしまう自分がいた。
「美香ちゃん。どうしても言えないんだったら、紙に書いてきてもいいんだよ」
先輩の心遣いが嬉しい。
でも、私、この気持ちは直接伝えたいんです。
あなたを目の前にして言えたなら、気持ちの整理も、きっとつくでしょう。
「もう少しだけ、待って下さい。文字じゃなく、言葉として伝えたいんです」
私は、きちんと先輩の目を見ながら言った。
先輩は、分かったと言って、あとは黙っていてくれた。
私は、大きく深呼吸をする。
今までの、先輩に対する想いを、全て伝えたい。
それは、ただ、あの一言だけ。
「好きです」
やっとの事で、言えた。小さな声だったけれど、先輩から目を逸らしてしまったけれど、言えた。
先輩は、驚いて、目を丸くしている。
ちゃんと聞き取ってくれたんだ。私は嬉しかった。
先輩が口を開くよりも早く、私は言った。
「先輩に、彼女がいる事は知っています。でも、どうしてもこの気持ちを伝えたくて。こんなに他人の事、好きになれたのなんて、初めてだったから。迷惑、じゃありませんでしたか?」
今度は、先輩が黙り込む番だった。
素直に自分の気持ちを伝えるのが、こんなにも難しい事だなんて、知らなかった。
でも、言えて、すっきりしてる。結果なんて、目に見えてるけど、この気持ちを伝えられた。それだけでもう満足だ。
「迷惑って事はない。でも、今の俺は、彼女が一番だから。ごめんな」
しばらく経ってから、先輩からでた結論はそれだった。
「いいえ。でも、私、勇気出して頑張ったんですから、なにかご褒美下さいよ」
「もう。しょうがないなあ」
先輩は、私の頭をぐちゃぐちゃにした。
「これからも、仲良くしような。俺は美香ちゃんの彼氏にはなれないけど、友達だったらなれるよ。先輩と後輩の関係よりは上って事で」
とても嬉しかった。恋は実らなかったけれど、私は友情を手に入れた。
「ありがとうございます!」
自分の気持ちを、素直に伝えられて、よかった。
心から、そう思った。
文法的に変なところがたくさんあります(汗
興味を持って下さった方。ありがとうございました。
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