未知
砂場の隅で此方を見て「何だと思う?」と問われる。
差し出されたマッチ箱を受け取り、開けると中に羽虫がある。
私はそれを砂場に埋める。
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玄関先で此方を見て「何だと思う?」と問われる。
差し出された水筒を受け取り、開けると中に花がある。
私はそれを軒先に埋める。
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コンビニ横で此方を見て「何だと思う?」と問われる。
差し出された体操着袋を受け取り、開けると中に鳩がある。
私はそれを植え込みに埋める。
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「ねえ」と声を掛けると同時、弾かれた風に身を竦め、吃驚した顔で此方を見る。
「どうしてこういう事するの」と訊くと、脇も腿もぎゅっと締めて、指を揉み、斜め下を向き、瞬く間に頬を上気させ、蒸されて濡れた目を彷徨わせる。
おろおろ再び此方を見て、口を開け、掠れた息を漏らし、次には放たれた矢の速さで踵を返して走り去る。
残されたスクールバッグを持ち上げ、開けると中に服がある。
私はそれを河原に埋める。
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放棄された作業小屋の中で此方を見て「何だと思う?」と問われる。
赤黒くへばり付く服を背景に差し出された両手を見ると中に肉の塊がある。
滴って湯気を上げ動いている。
私は今夢を見ていると分かっている。
そこは嘗て私達が始めて会った場所。
それは屹度あなたが初めて埋めた物。
*
朝早く目が覚めて家を出て、作業小屋の前へ着き閉ざされた戸を凝視する。
隙間から此方を見て「何だと思う?」と問われる感覚に陥る。
昔気軽に手を繋ぎ、頬を寄せ、くすくす言い交わした気持ちを、今度はあんな眼差しと面持ちで、改めて告げようとして呉れていたのかなと思う。
引き止めておけば良かったろうか。
もう会えないかもと過っては、そんな事ないと思い直す。
近頃この辺りではとても酷い事をした人とされた人とが捜されている。
心当たりを訊かれたけれど、この戸を開けて仕舞わない限り、私は未だ知らないので分からない。
終.




