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君が隣に住んだ理由  作者: 臥亜


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7/20

隣人

 隣に越してきた女性――榎本えり。


 それが、彼女の名前だった。


 あの日の挨拶から数日後。


 ひろは会社から帰ってきた。


 夕方。


 玄関を開けると、外から子供の声が聞こえた。


「待ってー!」


 長女の声だ。


 ひろは外を見る。


 庭の前の道路で、子供たちが遊んでいた。


 そのそばに、えりも立っていた。


 


 えりはしゃがんで、次男と目線を合わせていた。


「早いね」


 えりが笑う。


 次男は得意そうに言う。


「ぼく速い!」


「ほんとだ」



その様子を見て、ひろは少し驚いた。


 えりは、子供の扱いが自然だった。


 まるで昔から知っているみたいに。


 


 長女がひろに気づいた。


「パパ!」


 えりも振り向いた。


「あ、こんばんは」


「こんばんは」


 ひろは軽く頭を下げた。


 


「お子さん、元気ですね」


「すみません、うるさくて」


「全然」


 えりは笑った。


「むしろ、いいですね」


 


 次男がえりの腕を引っ張った。


「おねえさん、もう一回!」


「もう一回?」


「かけっこ!」


 えりは少し笑った。


「じゃあ最後ね」


 


 二人はまた走り出した。


 次男は全力で走る。


 えりは少しだけ遅れて追いかける。


 


 ひろはその様子を見ていた。


 そのとき。


 ふと気づく。


 


 笑い方。


 走り方。


 子供に話しかける声。


 どれも。


 どこか懐かしい。


 


 長女が言った。


「隣のおねえさん優しいよ」


「そうだな」


「今日ね、一緒に遊んでくれた」


 ひろは少し笑った。


 


 えりが戻ってきた。


「ふう」


「すみません」


「いえ」


 えりは少し息を整えて言った。


「子供好きなんです」


 


 次男がまた言う。


「また遊ぼう!」


 えりは笑った。


「いいよ」


 


 そのとき。


 えりの目が、ひろの家に向いた。


 窓の向こう。


 リビングの灯り。


 


 えりは小さくつぶやいた。


「いい家ですね」


「ありがとうございます」


 


 えりは少しだけ目を細めた。


 その表情は。


 どこか。


 安心したようにも見えた。


 


 そして言った。


「幸せそうですね」


 


 その言葉を聞いたとき。


 ひろの胸の奥が、少しだけざわついた。


 


 なぜだろう。


 


 この人と話していると。


 


 昔の時間が、少しずつ戻ってくる気がする。


 


 でも。


 そんなはずはない。


 


 だって。


 


 えいこは。


 もう、どこにもいないはずだから。

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