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君が隣に住んだ理由  作者: 臥亜


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14/20

病院

 それから数日後。


 朝。


 ひろは出勤の準備をしていた。


 ネクタイを締めながら、窓の外を見る。


 隣の家のカーテンは閉まったままだった。


 


 少し気になった。


 


 えりが倒れてから三日。


 


 庭に出てくる姿を見ていない。


 


「どうしたの?」


 


 妻が聞いた。


 


「隣の人」


 


「うん?」


 


「最近見ないな」


 


 妻は少し考えた。


 


「昨日も静かだったね」


 


 そのとき。


 


 玄関のチャイムが鳴った。


 


 妻が出た。


 


「はい」


 


 少しして、妻が呼んだ。


 


「ひろ」


 


「ん?」


 


「隣の人」


 


 ひろは玄関へ行った。


 


 そこには。


 


 えりが立っていた。


 


 少し顔色が悪い。


 


「おはようございます」


 


 えりは微笑んだ。


 


「この前はすみませんでした」


 


「大丈夫ですか?」


 


「はい」


 


 そう言ったが、声は弱かった。


 


「病院行ったほうがいいですよ」


 


 ひろが言うと。


 


 えりは少し困った顔をした。


 


「もう行ってます」


 


「え?」


 


 えりは静かに言った。


 


「定期的に」


 


 その言葉に、妻が反応した。


 


「どこか悪いんですか?」


 


 えりは少し考えた。


 


 そして笑った。


 


「たいしたことじゃないです」


 


 でも。


 


 その笑い方は、少しだけ無理をしているように見えた。


 


 ひろは聞いた。


 


「どこの病院ですか?」


 


「駅前の総合病院です」


 


 それを聞いて。


 


 ひろは少し驚いた。


 


 そこは。


 


 十年前。


 


 えいこが働いていた病院だった。


 


 えりは続けた。


 


「通い慣れてるので」


 


 その言葉に、ひろは少し引っかかった。


 


 通い慣れている。


 


 どういう意味だろう。


 


 妻が言った。


 


「無理しないでくださいね」


 


「ありがとうございます」


 


 えりは軽く頭を下げた。


 


 そして帰ろうとした。


 


 そのとき。


 


 ひろは思わず聞いた。


 


「榎本さん」


 


「はい?」


 


 えりは振り向いた。


 


 ひろは少し迷ってから言った。


 


「この町」


 


「うん?」


 


「どうして来たんですか」


 


 えりは少しだけ空を見た。


 


 そして答えた。


 


「静かだから」


 


 それは普通の答えだった。


 


 でも。


 


 少し間があった。


 


 ひろは感じた。


 


 本当の理由は。


 


 別にある。


 


 えりは小さく笑った。


 


「住みやすそうだったので」


 


 そう言って帰っていった。


 


 ドアが閉まる。


 


 妻が小さく言った。


 


「やっぱり」


 


「何が?」


 


 妻はひろを見た。


 


「何かあるよ」


 


 ひろは黙っていた。


 


 そのとき。


 


 ふと。


 


 思ってしまった。


 


 もし。


 


 本当に。


 


 えりが。


 


 えいこだったら。


 


 なぜ今。


 


 ここに来たのだろう。

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