お荷物
この惑星の空気は、腐った果実とバッテリー液を煮詰めたような匂いがする。
最初の一呼吸で、私は盛大に嘔吐した。胃液が喉を焼き、鼻腔の奥まで酸っぱい刺激が突き抜ける。二呼吸目で肺が焼けつき、三呼吸目には気管支が錆びたパイプのように軋んだ。
皮膚には正体不明の湿疹が地図のように広がっていく。痒みと痛みの中間のような不快感が、一日中、神経を逆撫でし続ける。掻けば掻くほど、黄色い膿のような液体が滲み出した。
私たちはここを「緑の牢獄」と呼んだ。
見渡す限りの密林。空を覆い尽くす巨大な葉は、地球の植物より遥かに肉厚で、光を通さない。そのせいで、昼でも薄暮のような薄暗さが続く。葉の裏側には、ぬめぬめとした粘液が蜘蛛の巣のようにこびりついていて、触れると指が痺れた。
地面は常に湿っていた。踏み出すたびに、ぐちゅり、と不快な音を立て、靴底から水分が染み込んでくる。足の指がふやけて、豆が潰れ、血と泥が混じった臭いが自分の体から立ち上った。
そして、常に何かが湿った茂みの中から私たちを監視している気配。振り返っても何も見えない。でも、後頭部にべっとりと張り付くような視線の圧力だけが、決して消えなかった。
不時着から三日目。私たちの神経はすでに限界に達していた。
そんな中、彼女は最初から「お荷物」だった。
エンジニアの男たちが必死にシェルターを設営している間、彼女は簡易トイレに閉じこもり、幼児のように泣きじゃくっていた。「帰りたい」「怖い」「もう何もわからない」という悲鳴のような嗚咽は、薄いアルミの壁を越えて私たちの耳にこびりついた。鳴き声というより、喉が裂けそうな悲鳴だった。聞いているだけで鼓膜の奥が疼いた。
正直に言えば、私たちは彼女を軽蔑していた。
適者生存。それがこの過酷な環境での唯一のルールだ。誰もが涙を飲み込み、恐怖を押し殺して作業をしているのに、彼女だけが感情を垂れ流している。
彼女の名誉のために言っておくと、全てが彼女のせいというわけではない。配給された圧縮食料を食べるのも遅く――あの金属臭のする、砂を固めたような味の塊を、彼女は涙を流しながら一口ずつ噛んでいた――見張りに立てば何もない暗闇に怯えて悲鳴を上げ、水の浄化装置の使い方も覚えられなかった。
私たちは彼女をこの「新しい環境」に慣れさせようと、ある意味では努力した。怒鳴りつけたり、無視したり、時には冷ややかな視線で「役割」を果たすよう促したりして。
だが、彼女は他の誰とも気が合わなかった。いや、合わせようとしなかったのだと思う。
ただ、一つだけ奇妙なことがあった。
私たちの誰もが、この星の空気に吐き気を催し、湿疹に苦しみ、咳き込んでいたのに、彼女だけは違った。
泣いてはいたが、咳はしなかった。肌も、私たちほど荒れてはいなかった。私たちの肌が赤黒く腫れ上がっているのに、彼女の肌はむしろ、微かに緑がかった透明感を帯び始めていた。
ある夜、彼女が食べ残した圧縮食料の欠片に、見たこともない白い蛾のような虫が群がっているのを見た。蛾の羽は、月光を反射して真珠のように光り、触角が彼女の指先に向かってゆらゆらと伸びていた。彼女はそれを払いのけもせず、じっと見つめていた。
不思議なことに、その虫たちは私たちの食料には見向きもしなかった。私が近づくと、まるで汚物を避けるように飛び去っていった。
私はその光景を「偶然だ」と片付けた。
今思えば、それが最初の兆候だったのだ。
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あの日、私たちは初めて「ビッグレッド」を目撃した。
それは夕暮れ時だった。空が毒々しいオレンジ色に染まり、森全体が息を潜めたように静まり返った瞬間だった。鳥の声も、虫の羽音も、風の囁きも、全てが消えた。
そして、その沈黙を破るように、低周波の振動が伝わってきた。
最初は地鳴りかと思った。地面が震え、私の内臓がびりびりと共鳴した。心臓のリズムが乱れ、吐き気がこみ上げる。
木々が薙ぎ倒される音。メキメキ、バキバキ、ドサドサ。巨木が悲鳴を上げるように折れ、葉が雨のように降り注ぐ。
そして、それが現れた。
濡れた赤い皮膚。血と粘液が混じったような、ぬらぬらと光る表皮。体高は五メートルを超え、その巨体が動くたびに、生臭い風が吹きつけた。腐肉と、硫黄と、何かの発酵した臭い。息を止めても、皮膚から直接その臭気が染み込んでくるようだった。
複眼は不気味な蛍光色に輝いている。無数の小さな目が、一斉に私たちを捉えた。見られている、という感覚が、氷の針のように背筋を貫いた。
警報が鳴り響く暇もなかった。
私たちは本能的な恐怖に凍り付き、そして次の瞬間、誰からともなくシェルターの裏口へと走り出していた。
彼女は眠っていた。
高熱を出してうなされ、シェルターの隅で泥のように眠っていたのだ。額には冷却シートが貼られ、乾いた唇が微かに動いていた。何かを呟いている。うわ言のような、あるいは誰かと話しているような。
揺り起こす時間はあったはずだ。肩を叩き、「逃げろ」と叫ぶくらいの猶予は。
エンジニアのカーターが、一瞬だけ足を止めた。
彼女の方を振り返り、口を開きかけた。
私は彼の背中を押した。
彼の汗で湿ったシャツの感触が、今でも手のひらに残っている。
「早く」と、それだけ言った。
私は最後尾だった。
振り返れば、起こせた。彼女の肩を掴み、引きずり起こし、一緒に走ることができた。
でも、足が動かなかった。動かなかったんじゃない。動かさなかったのだ。
だって、彼女を連れていけば足手まといになる。
だって、誰かが囮になれば、他の人間は助かる。
だって、私だけが悪いわけじゃない。誰も起こさなかったんだから。
私は自分にそう言い聞かせながら、音もなくシェルターを抜け出し、闇に紛れて走った。
泥が跳ね上がり、顔に冷たく張り付く。枝が腕を切り裂き、血が滲む。でも、痛みなど感じなかった。ただ恐怖だけが、私を前へ前へと駆り立てた。
背後で何かが破壊される音と、獣の咆哮が聞こえた。
金属が引き裂かれる悲鳴。シェルターの壁が紙のように破れる音。
私は耳を塞いだ。
彼女の名前を思い出さないようにした。
罪悪感を生存本能で塗りつぶして、ただ走り続けた。
翌朝、私たちは別の場所に仮設キャンプを張っていた。
誰も彼女の話をしなかった。「死んだ」と口にすれば、自分たちが「殺した」ことを認めることになるからだ。
空気は重苦しく、私たちは互いの目を見ないようにしていた。誰もが同じ罪を背負い、誰もがそれを認めたくなかった。朝食の圧縮食料は、いつもより不味く感じた。喉を通らなかった。
その時だ。
ガサリ、と茂みが揺れた。
男の一人が銃を構える。金属の擦れる音が、静寂を切り裂く。またあの怪物か、あるいは別の捕食者か。
現れたのは、彼女だった。
服は泥だらけだったが、不思議なことに外傷は一つもなかった。それどころか、肌の湿疹が消えていた。私たちの肌が膿と血で醜く腫れ上がっているのに、彼女の肌は滑らかで、朝露のような水滴が光っていた。髪に、あの白い蛾のような虫が一匹止まっている。触角が、彼女の頬を優しく撫でていた。
彼女は幽霊のようにふらりと現れ、驚愕する私たちを見回し、何も言わずに水の入ったタンクへ歩み寄った。彼女が歩くたびに、足元の苔が微かに発光した。
「……おい、どうやって」
リーダー格のカーターが声を震わせた。
彼女は答えなかった。私たちを責めることもしなかった。「なぜ置いていったの」とも、「殺す気だったの」とも言わなかった。
ただ、水を一口飲み、静かに座り込んだ。その目は、私たちではなく、森の奥を見つめていた。
ただ、その日から彼女は変わった。
もう泣かなくなった。私たちの顔色を窺うこともなくなった。
彼女はただ静かに、何か別のものに耳を澄ませているようだった。
時々、彼女は森の縁に座り、不気味な色の花を撫でていた。蛍光色の紫、血のような赤、吐瀉物のような黄色。私たちが近づくと萎れ、悪臭を放つのに、彼女が触れると、その花は微かに震え、まるで猫が喉を鳴らすように、低い振動を発した。花弁が彼女の指に巻き付き、花粉が彼女の肌に金色の模様を描いた。
彼女はその振動に合わせて、小さくハミングを返していた。私たちには聞き取れない、低い周波数の音だった。
私たちは見て見ぬふりをした。
彼女を連れて帰らなければならない。それだけが、私たちが「人殺し」ではなかったという証明になるからだ。
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救助船が到着する予定ポイントまで、あと数キロの地点だった。
私たちは焦っていた。通信機に入った微弱な信号によれば、迎えの船が着陸できる時間はわずか十分しかない。この森を抜け、開けた台地まで急がなければならない。
足元の泥は膝まで沈み込み、一歩ごとに粘着質な音を立てた。汗が目に入り、視界が歪む。息が上がり、肺が軋む。この星の空気は、どれだけ吸っても酸素が足りない気がした。
タイムリミットが迫る中、最後尾を歩いていた彼女が、突然立ち止まった。
「だめ!」
裂くような叫び声だった。
彼女は道端の岩にしがみつき、激しく首を振った。岩には苔が生えていて、彼女の爪が食い込むと、苔が脈打つように震えた。
「そっちに行っちゃだめ! 行かないで!」
カーターが舌打ちをして戻ってきた。彼の顔は疲労と焦燥で歪み、こめかみに血管が浮き出ている。
「何なんだ! 急いでるんだぞ!」
「だめ、あいつがいるの。あいつらが待ってるの!」
彼女は錯乱したように叫び、私たちの行く手を阻もうと両手を広げた。その目は血走り、恐怖で見開かれている。でも、その恐怖は私たちに向けられたものではなかった。私たちの「前方」に向けられていた。
私たちは顔を見合わせた。
またか。またこの女の癇癪か。
ここ数日、彼女はずっとおかしかった。何もない空中に話しかけたり、不気味な色の花に顔を近づけ、ハミングを返したりしていた。極限状態のストレスで、ついに心が壊れたのだと私たちは判断した。
だが、私の胸の奥で、何かが引っかかっていた。
彼女の肌は、今や私たちの誰よりも健康的に見えた。私たちが膿と湿疹でぼろぼろなのに、彼女の肌は、この星の植物と同じ、青みがかった艶を帯びていた。
彼女が通った後の草は、踏み荒らされるどころか、まるで道を譲るように左右に分かれていた。
夜中、彼女の寝息に合わせて、森全体が微かに脈打っているような気がした。地面が、呼吸しているような。
私はそれを、疲労による幻覚だと思い込もうとした。
「いい加減にしろ!」
男の一人が彼女を突き飛ばした。
彼女は泥の中に倒れ込み、ぐちゃりと不快な音が響いた。
「俺たちは帰るんだ! お前の妄想に付き合ってる暇はない!」
「置いていくぞ!」
彼女は地面に這いつくばりながら、私の足首を掴んだ。
その手は冷たかった。いや、冷たいのではない。この星の空気と同じ温度だったのだ。湿った苔のような感触。でも、握る力は強かった。
「お願い、聞いて! 匂いがするの。あの赤いやつの匂いが! 血と、泥と、繁殖期の……甘い、腐った、あの匂いが……!」
私はその手を振り払った。
振り払った瞬間、彼女の爪が私の皮膚を引っ掻いた。血が滲んだ。その血を見て、彼女の目が一瞬、悲しそうに揺れた。
振り払いながら、心のどこかで思っていた。
彼女は本気だ。本当に何かを感じている。
でも、もし彼女の言葉に従って、救助船を逃したら?
もし彼女が間違っていたら?
私は彼女から目を逸らした。
私たちは彼女を怒鳴りつけ、その場に置き去りにして走り出した。彼女の金切り声が背後で木霊していたが、それはすぐに遠ざかっていった。最後に聞こえたのは、叫び声ではなく、低いハミングだった。まるで、諦めたかのような。
たぶん彼女は、望みを叶えてあげれば――つまり、全力で駄々をこねれば、足を止めてもらえると思ったのだろう。あるいは、私たちを心の底から憎んでいたから、私たちの足を引っ張って道連れにしようとしたのかもしれない。
私たちはそう解釈した。そう思うしかなかった。
二度目だった。二度目の「置き去り」だった。
もう、言い訳のしようがなかった。
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結果を言おう。
彼女は正しかった。
私たちが目指していた開けた台地は、救助ポイントなんかではなかった。
そこは「ビッグレッド」の繁殖地だったのだ。
開けた場所に出た瞬間、彼女が言っていた「匂い」が、私たちにもわかった。
血と、泥と、甘く腐った果実のような匂い。それが、むせ返るほど濃密に漂っていた。
地面が揺れた。
四方八方から、赤い巨体が現れた。一頭ではない。五頭、十頭、数え切れない。複眼が一斉に私たちを捉え、蛍光色の光が明滅した。
私たちは袋のネズミだった。抵抗する間もなく、一人、また一人と捕らえられた。
カーターは最初に喰われた。リーダーだったから、一番前を歩いていた。彼の悲鳴は、骨が砕ける音に掻き消された。
今、私は薄暗い洞窟の中で、太い植物の蔓のような鎖に繋がれている。
蔓は生きていて、時々脈打つ。私の手首に巻き付いた部分は、吸盤のような突起があり、それが私の血を少しずつ吸っているのがわかる。痛みはない。ただ、じわじわと体温が奪われていく感覚がある。
隣にいたエンジニアの男は、昨日の夜、悲鳴を上げながら引きずられていった。
バリバリと骨を砕く音。肉を引き裂く湿った音。そして、咀嚼する音。ぐちゃり、ぐちゃり、と。
やがて静かになった。
次は私の番だろう。
粘液にまみれた冷たい床に座り込み、私はぼんやりと洞窟の入り口を見上げている。
床は常にぬめぬめとしていて、何かの体液で濡れている。それが何なのか、考えないようにしている。臭いは、もう麻痺してわからない。でも、舌の奥に、常に錆びた血の味がこびりついている。
鎖に繋がれたかつての「強者」たちは、今は見る影もなく震え、失禁し、神に祈りを捧げている。あの日、彼女を「弱虫」と笑った私たちが、今では最も惨めな弱者だ。
適者生存。
私たちはそれを「強い者が生き残る」という意味だと思っていた。
でも、この星では違った。
この星に「適応できる者」が生き残る。
強さも、知識も、経験も、ここでは何の意味もなかった。
ふと、思うのだ。
あの日、彼女が叫んでいたのは癇癪ではなかった。
彼女は本当に「知っていた」のだ。
最初に置き去りにされた夜、彼女は怪物に襲われなかったのではない。
彼女は、この星の生態系の一部として「受け入れられた」のだ。
私たちが「お荷物」だと笑った彼女の弱さ――泣くこと、怯えること、抵抗しないこと――それこそが、この星では「正解」だったのかもしれない。
私たちは強がり、支配し、征服しようとした。
彼女は泣き、震え、ただそこに在った。
どちらがこの星に「適応」していたか、今なら分かる。
洞窟の入り口から、風が吹き込んできた。
その風は、この星の空気にしては澄んでいた。花の香りがした。あの、彼女が撫でていた花の香り。甘くて、少しだけ苦い、不思議な香り。
その風に乗って、音が聞こえる。
鳥のさえずりのような、あるいは少女のハミングのような音。低くて、穏やかで、この地獄には似つかわしくない優しい旋律。
私は顔を上げた。
逆光の中に、細い影が立っていた。
彼女だった。
泥だらけだった服は、今は苔のように緑がかった布に変わっていた。いや、布ではないかもしれない。植物の繊維が、彼女の体に直接絡みついているようだった。髪には、あの白い蛾が何匹も止まっている。蛾の羽が、彼女の呼吸に合わせて微かに揺れていた。
裸足の足元には、あの不気味な花が咲いていた。彼女が一歩踏み出すたびに、花が足元に咲き、彼女が通り過ぎると萎れていく。
彼女は私を見下ろしていた。
その目は、あの日と同じように虚ろで、どこか達観していて、そして――悲しそうだった。
でも、その瞳の奥には、微かに蛍光色の光が揺れていた。あの獣の複眼と同じ色だった。
「……助けに、来てくれたのか」
私は掠れた声で言った。
言いながら、それがどれほど滑稽な言葉か、分かっていた。
二度も置き去りにした相手に、「助けに来てくれたのか」だと?
彼女は答えなかった。
ただ、静かに首を横に振った。
そして、何かを呟いた。
あの花を撫でていた時と同じような、低いハミング。
その音が洞窟の壁に反響し、蔓が反応して脈打った。床の粘液が、彼女の足元に向かって波紋を立てた。
洞窟の奥から、重たい足音が近づいてくる。
地面が震え、私の内臓が共鳴する。あの低周波の振動だ。
赤い巨体の影が、壁に映る。複眼の蛍光色が、闇の中で明滅している。
私は悟った。
彼女は私を助けに来たのではない。
見届けに来たのだ。
あるいは、別れを告げに来たのかもしれない。
「もうあなたたちには付き合いきれない」と。
彼女の目から、一筋の涙がこぼれた。
その涙は、透明ではなかった。微かに発光する、緑がかった雫だった。
それが憐れみなのか、悲しみなのか、安堵なのか、私には分からなかった。
「……ごめん」
私は言った。
それしか言えなかった。
何に対する謝罪なのかも分からないまま、ただその言葉が口をついて出た。
彼女は小さく頷いた。
その頷きは、許しだったのか、諦めだったのか、私には分からなかった。
そして、踵を返し、光の中へ歩いていった。
ハミングが遠ざかる。
足元の花が、彼女の後を追うように揺れる。
白い蛾が、舞い上がり、光の中へ消えていく。
彼女の姿が、光に溶けていく。
私は彼女の背中を見つめた。
その背中は、あの日、私たちが置き去りにした「お荷物」の背中ではなかった。
この星の一部になった、別の何かの背中だった。
赤い巨体が、私の前に立った。
濡れた皮膚の匂いが、鼻腔を満たす。複眼が、私を見下ろしている。
その目に、私の怯えた顔が無数に映っていた。
私は目を閉じた。
最後の瞬間に感じたのは、痛みではなかった。
彼女のハミングが、まだ遠くに聞こえていた。
それは子守唄のように優しく、葬送曲のように荘厳だった。
彼女は生き残るだろう。
この緑の牢獄で、赤い獣たちの隣で、静かに、穏やかに。
私たちが「弱さ」と呼んだものを纏って。
それこそが、この星における「適者」だったのだ。
ハミングが、最後の瞬間まで、響いていた。




