1: 不甲斐ない一日と変わりたい私(1) 誰も気に留めない、ゼルヴァン家の隅での目覚め
私はゼルヴァン家の屋敷の端にある散らかった自室で目を覚ました。広さだけは一人前にあるが、飾りつけも掃除も使用人に手を抜かれ、兄や姉、そして妹の部屋のような完璧さにはほど遠い。….もっとも、この散らかりようは他人のせいではない。
机の上には王立大学の課題や参考書が散乱し、昨晩「明日こそ早起きして勉強し、成績を上げてみせよう」と誓った痕跡だけが残っていた。
結局、今日も早起きは叶わず、目覚めてはいたものの、寝台の上でぼんやりと時を浪費してしまった。昨日も一昨日も同じだ。
(今日も無理だったのね…)
苦い自嘲と自己嫌悪が胸をよぎる。
遠くで教会の鐘が八つを告げた。魔石を埋め込んだ時計も同じ時刻を示している。どちらも私がまたしても自分への約束を破った証だった。
「イロナ様、起きてくださいませ。入りますよ」
扉を叩くメイドの冷たい声に、私はしぶしぶ身を起こす。ぐずぐずしていれば容赦なく叩き起こされるだろう。朝食に間に合うよう支度をせねばならない。
(今日は何か予定があったはずだわ。何だったかしら。)と頭を巡らせる。だが思い出すほどの大事なことではないと気づき、胸をなで下ろした。
今日は私の二十歳を迎える誕生日の朝だ。そしてそれは、誰にとっても大切なことではなかった。
【本日のADHDライフハック(番外編)】
今晩イロナは一年発起するので、作中で彼女の取り組みは登場しませんが。
ワークや習慣を始めたいとき:
1) すぐ終わる短い単位に区切る
2)毎日続ける
を意識しましょう。
ADHDにとって、壁は「続けること」「始めること」にあります。だから、「やればすぐ終わる」という意識を持てる量に調節して、取りかかりやすくする工夫が大切です。
たまに凝り出したり、過集中が発生したらラッキーと感じましょう。