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水が増えていく怪談  作者: 路明(ロア)
海の水 ੭ੇみ၈みव"

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39/43

海沿いの駅


 夜中になると、寝台車は海沿いにさしかかった。


 窓のむこうは暗いが松林が見え、そのむこうに水平線と思われる灰色の線が広がっている。

 はじめて来る土地なので見るものすべてが新鮮だ。



 あの松林で首をくくるのもお手軽そうと思う。

 海に入って、どこまでもまっすぐゆーったりと歩いていくのもいい。



 もう疲れたから、死にかたも疲れないものにしたい。

 浅海 渚(あさみ なぎさ)は、ぼんやりと窓の外の流れる景色をながめた。


 とくになにがあったというわけではない。

 

 仕事場の人間関係はまあまあだし、条件もいい会社だ。

 友人もいる。

 趣味のサークルに入って、楽しく過ごすこともある。

 有給もわりとすんなりととれた。

 

 人から見てとくに困っているように見える部分がないから、相談しても「だいじょうぶだよ」で済まされる。



 ネットで調べたら(うつ)ではないかという結論にいたったが、では治療するかというと、とくに必要ではないのではと思う。



 死んでしまえば、もっとかんたんに解決すると思うのだ。


 窓に映る自分の顔が、自分のようで自分ではないように見える。

 ドッペルゲンガーというやつだったりしてと思う。

 それならここでパッタリ死ねるのに。めんどくさいもんだなとあくびをする。



「つぎは見附田(みつけた)駅、見附田駅」



 車掌のアナウンスが聞こえる。

 こんな夜中でも到着する駅があるんだとすこしおどろく。

 

 ガタンゴトンと列車のジョイント音が聞こえつづけている。

 しばらくすると、また車掌のアナウンスが聞こえた。


 

「つぎは小前田(おまえだ)駅。え、小前田駅のつぎは小前荷(おまえに)駅に停車します」


 

 「おまえだ」のつぎは「おまえに」。


 おもしろ、と思う。

 駅名をまとめていうほど距離が近いのか。

 小さな町ごとに駅がある土地なのだろうか。

 なにも調べずにフラッと乗った列車なので、どんな駅を通過するのかすら分からなかった。

 バッグからスマホを取りだし、検索する。



 小前荷駅のつぎは鳥付(とりつく)駅、伊馬(いま)駅、小前野(おまえの)駅、宇城似(うしろに)駅、宇城似入僧(うしろにいるぞ)駅。


 

 (なぎさ)は窓の外の夜の海沿いを見つめた。

 

 「みつけた」「おまえだ」「おまえに」「とりつく」「いま」「おまえの」「うしろに」「うしろにいるぞ」。


 ぐうぜんかもしれないけど、もしかしたらものすごくラクに死ねるかも。

 このまま寝台で寝て、これらの駅を通過すれば。


 死ねるかもと思うと、安心感でふわふわと体の力が抜けた。



 列車のジョイント音がガタンゴトンと聞こえる。

 すっと音が遠くなった。




 終





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