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水が増えていく怪談  作者: 路明(ロア)
土砂降り ೬”სャぶιյ

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35/43

幽霊の雨が降りしきる ①



 数年前から、地元では奇妙な現象が確認されている。



 雨の日に、雨のかわりに幽霊が降る。


 降りはじめの音はパラパラという音ではない。幽霊独特のうめき声。

 降りが強くなるにつれてうめき声は大きくなり、どしゃぶりともなると激しい呪いの言葉があちらこちらから聞こえる。


 そして街中が、白い人型のひょろひょろとした落下物につつまれる。


 当初はマスコミなんかも取材にきた。

 清華(きよか)も会社の昼休みに外にでたところを制作会社のスタッフにつかまりインタビューを受けた。

 ニュース番組を見たらカットされていたようだが。

 せっかくインタビューのあと彼氏の(たつる)のスマホに「テレビ映ってるかも」と通話かけたのに。



 まあ、いいやと思う。

 もう別れたんだ。



 ムカムカしてきた。

 まだ仕事中だ。事務机のまわりを同僚が行き来しているので表情をおさえる。


 樹は、ほかにも何人もの女性と付き合っていた。

 中には高校生までいたようだ。

 どういうことなのと詰めよったら、「言わなかったっけ」というようなことをヘラヘラと笑いながらほざいた。


 結婚してもいいかなとか思ってたのに。


 ほかの騙されている女性たちにも、こういう男だと知らせてその女性たちと手を組んで復讐してやる。

 そこまで考えたが、仕事をしながら時間とお金を使ってやつが手をつけた女性すべてを調査し、その女性たちの全員を説得し手を組みましょうと持っていく労力を考えたら、()えた。


 いくらなんでもそこまでする執念もエネルギーも(ひま)もない。


 このまま淡々と毎日の仕事をして時間がすぎていって、なんとなーくどうでもよくなっていくのかなとマウスを動かしながら思う。


 そのまえに樹に忘れられているのだろう。



 外から、かすれたうめき声が聞こえた。

 ああ、また幽霊雨かと思う。



 自分のスマホを通勤用バッグからこっそりと取りだし、ネットの天気予報をのぞく。

 いまでは地元はこの現象をすっかり受け入れ、天気予報には降水確率ならぬ「降霊確率」という項目が表示される。


 幽霊の降りがあまりにもひどいときは、土砂くずれならぬ幽霊くずれが起きる。


 幽霊に重さはないらしく地盤が影響を受けることはないのだが、幽霊くずれとは異常な数の幽霊が折りかさなりずるりずるりと流れていく現象だ。

 気味の悪さで恐怖感をもつ人や体調不良を起こす人が続出したため、役所は幽霊注意報、幽霊警報、幽霊災害警戒情報などをネットに出すことにした。


 ここのところは幽霊梅雨に入ったので軽いうめき声くらいならしょっちゅう聞こえてくる。


 この現象が起こりはじめたころは、うめき声が聞こえるたび社内の全員が窓の外を見上げてイヤな顔をしていたが、いまでは慣れてしまって誰もそんなことをしない。

 下手に外を見れば逆さまに落ちてくる幽霊と目が合ったりして不快な思いをする。

 外など見ないほうがいい。



 樹からラインが届いていた。

 「きょう飲みに行かない?」とぬけぬけと書いてある。



 いままでもいろんな女性に浮気がバレては、こんなふうにシレッとラインを送ったりしていたんだろうなと思う。 

 そんなもんで(ほだ)されたりするかっての。

 清華はアプリをグッと指で長押しした。思い切ってラインごとアンインストールする。


 ふうっと息を吐く。

 思ったよりスッキリした。もっと早くこうすればよかった。





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