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水が増えていく怪談  作者: 路明(ロア)
ナイトプール なɭ ɿ೬৴ડેヽ°ぅᵹ

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22/43

みんなでいっしょにナイトプール


「ィヤッ━━━━ハァ!!!」


 友人の水森(みずもり)が、よく分からない寄声を発しながら暗いプールに飛びこむ。

 設水 透(しみず とおる)は、横で苦笑いしながら水しぶきを避けた。

 高校の校舎横にあるプール。

 夜でも水が張りっぱなしなのを水森が見つけ、夜にコッソリ入らないかとさそってきたのがきょうの夕方だった。


 同じクラスの江東(えとう)池田(いけだ)もさそい、守衛の懐中電灯のあかりが校舎の窓から見えなくなるのをまってしのびこんだ。

 自転車で到着するまえは更衣室の鍵をどうやって開けるかという話になったが、着いてからはどうせ誰もいないしプールサイドで脱ぎ着したらよくねという話になった。

 服のしたにすでに水着を着用していた(とおる)と、人目などおかまいなしでパンツを脱ぎさっさと着替えた水森とが、まずさいしょにとびこんだのだ。


「おっそ、女子か!」


 プールサイドでもたもたと着替える江東と池田に、水森が声をかける。

「うるせ」

「つか、まっ暗いとこによく飛びこめんな。中になんかあったらとか怖くね?」

 江東と池田がそれぞれに言い返す。


「何あんの。ねえよ」


 水森が言い返して、うしろむきで大の字に倒れる。

 バッシャーンとまた大きな水音がして、透は「この、バッカ」と声を上げながら水しぶきを避けた。

 ようやくのこりの二人がプールに入ってくる。

「ひゃーつめて」

「や、気持ちよ」

 口々に言ってこちらに歩みよる。

 

「ナイトプール」

「おっしゃれ」


 江東がにやにやしながら言うと、水森がそう返した。

 上空には月が出ている。

 きれいな満月だ。

 学校にはあかりはいっさいなく、周囲の民家のあかりもプールを囲むコニファーにさえぎられて届かない。

 あたりを照らしているのは、満月の光だけだ。

  

 しばらく遊んでいると、意外にも場所によっては水面に自身の顔が映ることに透は気づいた。

 

「おー」

 けっこうはっきり映るもんなんだと思いながら、両手で顔をぬぐう自身の姿が映るのを楽しむ。

 ほかの三人のほうも見回し、映りかたの違いをながめた。

 コニファーの影がない部分や角度によって、かなりはっきり映るところとあまりはっきり映らないところとがある。


 市営プールのナイター営業に連れて行ってもらったことがあるが、ナイター照明で煌々(こうこう)と照らされているので、こんな景色にはならない。


 ほとんどまっ暗なプールだとこんなながめになるんだと、プールの水で顔をぬぐった。


「んー、あれ?」


 三メートルほどはなれた場所にいる江東が、こちらを指さし不審げな声を上げる。

「なに」

 透はそう呼びかけた。

「んー、気のせい?」

 首をかしげる。

「なに」

 透は自身の周囲を見回した。



「透の映ってるとこさ、なんか顔二つあるように見えたんだよな」



「は?」

 透は声を上げてその場から離れた。

「うわなに。怖がらせんのナシだろぉ」

 江東に抗議する。

「や、ごめん。たぶん見まちがい」

 江東が笑う。

 そういう江東の横にも、よく分からない位置に顔がある。

「いや、えと……」

 透はそちらを指さして凍りついた。

 むし暑いくらいの気温のはずなのに、背中から鳥肌が立つ。

「透ぅ、おどかし返すなぁ。バレてっから」

 江東もほかの二人もゲラゲラと笑う。



「なに水森ぃ。また水中からザバーンってか?」


 

 池田がゲラゲラと笑いながら五メートルほど先を指さす。

「ん?」

 水森が、池田のすぐそばで自身を指さした。

「俺ここ」

「え?」

 池田が目を剥いた。

 指さした先をもういちど見る。


 何もないようだ。



「ごめ、何か見まちが……」

「うわあああああ!!!」



 江東が、かなり動揺した様子で自身の周囲を見回す。

 さきほど江東の横に映っていた顔は、透がためらっているあいだにどんどん増えて、江東をとり囲んでいた。

「うわあああああ、うわっ、うわっ、何だこれっ!」

 江東が水面をバシャバシャと両手でかき混ぜるが、映った顔はゆれつつも消えない。

「江東、逃げろ! こっちこっち!」

 水森が誘導するように手をふって、自身もプールサイドのほうに逃れる。

「うわっ、うわっ!」

「江東!」

 透は手をのばしたが、江東をとり囲む顔がこわくて近づけない。

 


「ひァ━━━━!!!」



 プールサイドに逃れようとしていた池田が半狂乱で声を上げる。

 気づくとプール一面が、水面に映った顔で埋めつくされていた。

「上がれ! 上がれ!」

 先にプールサイドに上がった水森が、かたわらの金網に立てかけられていたモップの柄をこちらにのばす。

 つかまれということだろうか。

 水森ももはや半狂乱だ。


 透は必死で水から上がった。

 プールサイドからほかの二人に手をさしのべるが、ほかの二人は目にも入っていなかったのか、それぞれにプールサイドに上がると水着のまま自転車を置いた場所に走って行った。




 終





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