CONTINUE…?
「おかしいな…なぜ目を覚まさないんだ?」
目を覚ますと聞き馴染みのある声が聞こえてきた。どうやら助かったらしい。
しかしやはり怪我の具合は酷かったのかカプセルの様なものの中で寝ている。この中から日付を確認する手段が無いため、どれくらい寝ていたのかは分からない。外に出ようとも内側から開けられない仕組みになっている。
声を出そうにも喉にダメージがあったのか別の理由かは分からないが声が出せず、無理に出そうとしてもゾンビのような声しか出なくなっていた。しかし、案外このカプセルの中も快適だ。どうせならもう一眠りしようと思って目を閉じた途端、カプセルの扉が開いてしまった。
「おい、何また寝ようとしているんだ?」
俺は睡眠を妨害されたことに対する恨みと扉が開いたことによって目に入ってくる光の量の多さに目を細め目の前の人物を睨む。白髪赤眼でその髪の色とは対象に黒い服に身を包んでいる。その人物とは紛れもない俺の母親、菊則裏戸だった。
なんで母さんが?どれくらい経った?ここはどこだ?なんて質問攻めにしたいところだが生憎声が出ない。声が出ないことには言葉を伝えることが出来ない。生憎俺は手話は習得していないのだ。
「声は…出ないか。まぁいいだろう。どうせ明日には治ってるはずだ。ほれ、渚のスマホだよ。良かったなぁ壊れてなくて。画面はバキバキにヒビが入ってるけどフィルムくらいは貼ってるんだろう?」
勿論フィルムは貼ってあるがまさか液晶は無事とは。派手に飛ばされたと思ったが現代のスマホは頑丈に作られているんだなと思いつつヒビが入り放題のフィルムを剥がし、画面のついてないスマホを見つめ違和感を覚える。
(俺の顔が映ってない…?)
どういう事だと目で訴えるべく母さんの方を向くと恐ろしいほどに口角を上げている。待ってましたと言わんばかりに口を開いて言った。
「吸血鬼って知ってるかい?」
そう言った口には鋭い牙が光り、背中には大きく黒い蝙蝠のような羽が生えていた。
「知ってるかより見たことあるかの方が正確な質問かもね。本来吸血鬼ってのは太陽の下に生身で出れば無事では済まない生物なんだよ。太陽の下の吸血鬼なんて今は私くらいしかいないんじゃないかな。他の子は日傘を差したりなにかしらで日光を遮っているからね。私は突然変異体だから何もしなくても日光を浴びれるんだよ。おっと、俺を吸血鬼なんかにしやがって〜なんて怒りを向けられるのは筋違いってやつだよ。そうでなきゃ渚は死んでいた。間違いなくね。流石の私だって実験したいってだけで息子の身体を弄ったりはしないよ。ちなみに父さんは普通の人間だから渚は所謂ハーフヴァンパイアってやつだね。前例が無いから今度データを取らせてもらおうか!あぁ!こんなところで新しい研究テーマを見つけられるなんて私は本当に幸運だよ!」
と、物凄い勢いで話しているが母さんから羽が生えた時から呆然としていたせいで話が耳に入ってこない。要するに半分吸血鬼になって日傘をさして実験するってことでいいんだろうか。流石に違うか。
吸血鬼という存在自体は知っている。テレビなんかで見ることはあるが会ったことは1度もない。というか俺は純人間じゃ無かったのか。なんてこった、これからは「人生」じゃなくて「吸血鬼生」と言った方がいいのだろうか。なんてくだらないことを考えてしまうのはきっと現実逃避なんだろう。
「あぁ、そうだ。実は少し実験に付き合って欲しいんだ。上手くいけば羽なんかも出せるようになるんじゃないかな?移動に便利だよアレ。まぁそれはおいおいだ。今日はしっかり休むんだよ。私の息子…いや、今は娘だね。それじゃあ、また明日」
現実逃避をしているせいか、母が言ったことを噛み砕けないでいるとようやく自分の手が不気味なほど白く折れてしまいそうなほど細いことに気が付いた。まさかと思い男の証である場所へ手を当てると………無かった。
どうやら種族だけでなく性別も変わってしまったらしい。
と一頻り到底現実とは思えないような事実を連続で投げつけてきた母は奥の部屋に帰って行った。いや、事故から目覚めたばかりの息子を放置するなよ。と思いつつ快適な医療用(多分)カプセルの中であわよくば事故に遭ったことが夢でありますようにと願いながら眠りについた。。
お母様には謎に権力がある便利存在になってもらいましょうその方が便利だし
男の証は喉仏ですよ?変な勘違いしないでください