ほら見た事か
先ずは身体に異常が無いかの検診から始めるらしい。
日本の医療技術とどう違うのかなと思いつつ話しを聞いていると「ならうちで預かろうか?」と言われて首を傾げる。
「魔塔でか……」
「おい不安がるなよ、1番安心安全で確実だろー?
別にここでも良いけど?」
「預かられるくらいにややこしいんです?」
「別にややこしくないぞ、カナエが良いならここで済ませよう」
「どうしたい」
「さっさと終わるなら喜んで」
「よし来た!」
ニコニコ笑顔のクレカドスさんは私のおでこに手を当てた。
そして目を閉じて、金色の瞳が見開かれる。
「ははっ、やっぱり異世界人ってのは凄いんだなあ。
付加されてる祝福もレベチだし、聞いた事ねえ加護も入ってら」
「どんな?」
「後でまとめておいてやるけど、先ず特出すべきは神の悪戯って加護だな」
悪戯なのに加護?そう首を傾げると「俺もこれに関しては聞いた事無いや」と楽しそうだ。
「神と名のある加護は今まで見た事無い。
って事は異世界人特有の加護だろうな。
あとは各属性に対しての耐性とありとあらゆる異常状態に対しての耐性、命令言語に対する祝福ってのが俺的には気になるところ」
「なんですかそれ」
「色で読む限りは命令口調で命じればなんか出来るんじゃないか?やってみろよ」
いきなり放り出されてうーんと深く唸る。
この人に師事お願いしたの間違えたかなと思いつつも「浮かびなさい」と出された紅茶に向かって命じてみる。
思わず声を失った私達と、逆に「おお!」と嬉しそうな顔をするクレカドスさんとの落差に風邪を引きそうだ。
固まる私は自身を叱咤して「国王陛下」と視線を向ける。
「私に枷を掛けて下さい、ダメだコレ知られたら悪用されちゃう」
「ああ、しかし…」
「見張り付けるかなんかしなきゃ、いや異世界人ってこの世界初?だとすれば対処の仕様が無いのか……えええでもまだ死にたくないぞこの間死んだばっかりなのに」
「…………」
言葉を無くした陛下とザイエルさんの目の前で「大丈夫だぞ!」と明るく笑ったクレカドスさん。
「祝福と加護が異常なだけでまだまだ俺には敵わない。
敵にもならない、脅威じゃねえよ。
だからお前がもし、道を違える場合は俺が殺してやるから安心しろ!」
「クレカドス!言葉を選べ!!」
「……」
考えてみればそれはそうかと安心して「んじゃそれまではしっかり面倒見て下さいよね」と笑みを返した。
「この魔法に関してはお前の固有スキルだろうから高めて行こうな!
どうせならザイエル様の所じゃなくて俺の娘って事にすれば良かった〜」
「え?嫌です、クレカドスさん生活能力無さそうだし。
それにザイエルさんの所にはリンカちゃんが居るのでもう他に行くつもりないですよ」
「……リンカ?」
「はい!妹って初めてでめちゃくちゃ可愛くて!!
習い事やお勉強の間にお話ししたり、ご飯の後にお話しするのが今の私の1番の癒しなんです!!」
「……そうか」
「うちにも妹みたいなのはたくさん居るぞ?
小さい女の子ってのは少ないけどさー」
「いや、リンカちゃんの代わりが務まりますかって。
もう私あんな美少女見た事無いんだから!
どタイプ、美しい!綺麗、可愛い!こりゃ将来が楽しみよ!!!」
「いやお前どこの目線で話してんだよ」
「もう姉気取りですがなにか??」
「ああ、そう言えば今回の王国祭で謁見の予定でしたね。
また機会を設けさせて頂きますよ、ザイエル」
「はい」
「その時にはカナエさんもいらしてくださいね」
「是非!」
和やかに終わったお話しの中、クレカドスさんだけが腑に落ちないと言いたげに頬を膨らませているのだった。