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第8話 おじさんは寮に行く。騎士団もなかなか悪くないなぁ

 騎士団の寮というのはなかなかに広く、快適である。

 長机がいくつも並べてあり、椅子も何個も用意されている。

 大食堂でみんなと一緒に食事をワイワイとするのは楽しくて嫌いじゃない。

 いろんな人とかかわりを持てるしな。


 最初こそ、俺のことを恐縮しながら遠巻きに見ていた。

 だが俺が声をかけると、みんな近くによって来てくれて今は同じように食べたり飲んだりしている。

 そして、ちょっとしたお祭り騒ぎのようだ。


「ほらほら、飲めよ」


 そういわれて酒を勧められる。

 酒なんて飲むのは20年ぶりだ。

 こっちの世界で大人になりたての頃飲んだ記憶があるがぬるくて苦みがひどく、あまりおいしいものだとは思わなかったな。

 だが、今では違うかもしれない。俺は酒の味が気になり、もらうことにする。


「ああ、飲ませてもらうよ」


 そう言って俺は注いでもらった酒を飲む。


「ぷは」


「よっ、いい飲みぷりっ」


 ふむ、あの頃感じたようなまずさは感じないが、そこまでおいしいとも思わない。

 ま、そこそこのおいしさだ。

 飲めと言われたら飲むが、高すぎたら飲まない。

 そんな感じだな。

 俺は酒を飲みつつも他のご飯などに舌鼓を打ち、もらっていくことにする。

 う~ん、非常においしい。どれもこれも見目鮮やかで、味もしっかりついている。


「うまいな」


 俺は思わず声をこぼす。自然の中では絶対に食べる事ができない味だ。

 周りの奴らもバカ騒ぎしながら飲んだり食べたりしている。


「平和だなぁ」


 俺は思わずその光景を見ながらボソッとつぶやく。

 そんな俺の近くにジェルがやってくる。


「どうですか、騎士団は気に入ってもらえましたか?」


「ああ、こういう雰囲気のあるところはいいところだ」


「同感です。私もこの雰囲気が好きで騎士団にわざわざ入団しましたから」


「そうだったんだ。そういえば、守護団とかいう組織もあるんだっけ、そっちは合わなかったの?」


「ええ。あそこはかなり厳格で伝統を重んじすぎますので、逆に軍の方は自由ですが、その分野蛮すぎましたから。騎士団が一番合っていたんです」


「へ~、流石世界第一位の国だね」


 何をもって世界一位と決めるのかは人それぞれだと思うが、一般的に国力で世界一位と言われるのはこの国だ。この国は世界で最も人口と経済規模、領土が大きい。

 国際会議などでもこの国が司会を務めたりしており、世界のリーダーともいわれている。


 貴族制度などにこだわって、貴族が政治を指揮している国もあるそうだが、この国はそう言った特権制度をなくし選挙での議会制を導入している。きわめて合理的な考え方をする国だ。


「ええ。そうですね」


「じゃあ、俺はそろそろ自分の部屋に戻ることにするよ」


「もう、ですか?」


「ああ。別にこの雰囲気に嫌気がさしたからってわけじゃないよ。

 そろそろ、風呂に行こうかなと思って、荷物を取りに部屋に戻ろうと思ったんだ」


「それでしたら、大浴場の場所をご案内しますよ。

 まだ、場所などあんまりわかっていないでしょう?」


「じゃあ、頼めるかい?」


「ええ」


 そう言って俺は寮内で与えられた部屋に戻り、服などを取る。そして、ジェルに案内されてついていく。しばらく歩いたところで、でかい扉のある所につく。

 その扉をガラガラと開けると、いくつものロッカーがありどうやらそこに風呂に使っている間、服などを置いておくところのようだ。そして、奥には先ほど同じような扉がある。


 その扉の隙間から白い湯気が出ている。おそらく、この向こう側が風呂なのだろうということは容易に想像がつく。俺はジェルの方を向いて言う。


「ありがとう。それじゃ、これで」


「いえ、私もお風呂に入らせてもらいます」


「ああ、そうなのかい」


 そう言って俺は服を脱ぎ始める。すると、ジェルも服をスルッと脱ぎ始める。


「え、なんで服脱いでいるの?」


「?何でと言われましても……風呂に入るからですが?」


 不思議そうな顔で俺の方を見てくる。

 待て待て、ここは男風呂だよな?

 なんで女の子のはずのジェルが脱ぎ始めているの?


 もしかして、俺が女子風呂に入りに来ちゃってるの?俺はごくッという音を鳴らしながら彼女に聞いてみる。


「あれ、ここって男風呂じゃなかったっけ?」


「ここはお風呂ですよ?そんな性別で分けられるようなことはありません」


「……もしかして男女ともに同じ風呂に入る感じ?」


「ほかの国ではわかりませんが、この国では同じ風呂に入るのが普通ですね」


 マジか。

 人と一緒に風呂に入る機会なんて、そうそうなかったからそんなことを知らなくて驚きだ。

 そういえばずっとお母さんと一緒にふろに入っていたな。

 かなり昔のこと過ぎて忘れていたが。


「そ、そうだったのかい」


 まぁ、その事実が分かったからといって、何かあるわけでもない。

 俺はもうアラフォーのおっさん。

 15歳ぐらいの女子の体に興味などないのだ。


 そう思いつつも、彼女の方をちらっと見る。

 決してやましい気持ちがあるわけではない。

 純粋な好奇心だ。


 健康的な肌つや、引き締まった腹、年の割には大きい形の整った胸、細いながらもしっかりと筋肉のある足……う~ん、いいね。


 ってこれでは、俺から犯罪臭がプンプするではないか。

 これは決してそういう意味ではなく、肉体が美しいという話である。

 芸術的な観点から見ているのと同じなのだ。

 俺が彼女の顔に目をやると顔を赤らめながら、こっちを見ている。


「えっと、そんなじろじろ見ないでください。恥ずかしいです//」


「あ、ああ。すまないね。ついつい、綺麗だったもんで……」


 そう言ってからおれは、はっとする。

 この言葉はセーフか?!そう思い彼女の顔を見ると、彼女は照れながら言う。


「あ、ありがとうございます」


 どうやらセーフのようだ。内心ほっとする。

 前の世界だったらセクハラ発言で人生が終わっていた。

 お互いに少し照れながらもお風呂の方に行く。

 さすがに混浴とはいえ俺の息子の部分はちゃんと隠しておく。

 彼女もちゃんと隠しているから、これは正しいみたいだ。

 ガラガラと扉を開けると、先に来ている人はいないようだ。


「まだ、誰も来ていないみたいだね」


「ええ。みんな大食堂に行っているので、まだ誰も来ていないのでしょう」


 そう言って、俺は自分の体を洗い始める。彼女も隣で洗い始める。

 できるだけ彼女の方を見ないようにするが、音はどうしても聞こえてくる。


 ゴシゴシ、ザァーザァー


「はぁ」


 もしも、俺がこの子と同じぐらいの年齢の時であったのならば、マジでやばかった。

 正直、男であれば彼女のことを好きにならないではいられない。

 騎士団のみんなはよく耐えているものだ。

 彼女はそのことを知ってか知らずかわからないが、なんとも無防備に体を洗っている。

 俺は彼女よりも早めに体を洗い終わって湯船に体をつける。


 チャプン


「ふー」


 疲れた体にしみる。そして、湯気が昇って行った天井の方を見る。

 じわじわと体から疲れが出てきて、自分でも驚くほど疲れていたことがわかる。


「失礼します」


 そう言って、ジェルも洗い終えたのかチャプリと音を立てて入ってくる。

 彼女もまたお湯につかりリラックスしているようだ。

 そんな彼女は俺の方にふと目をやると話しかけてきた。


「それにしてもすごい傷跡ですね」


 そう言われて俺は自分の体に目を落とす。

 なるほど、確かに。

 肩からわき腹にかけてある大きな傷。

 酸で焼かれ肌が変色しているような傷。

 細かいとげが刺さったような小さでまばらな傷。

 など、大小や種類様々な傷が俺の体に無数にある。


「まぁね。色々な魔物たちと戦ってたから」


 これを見ると傷をつけた魔物との戦闘を思い出す。

 そして、自分が何回も死にかけていたんだなとも思う。

 同時にこれだけの傷をつけられるほど自分が弱いとも……

 なんだか自分で言ってて悲しくなった。


 この話題はやめて別の話題に行こう。

 俺はそういえばジェルの年齢を聞いていなかったな、と思い彼女に聞く。


「そういえば、ジェルって何歳なの?」


「今年で18になります」


 やはり、若いな。

 この世界ならば、俺と親子であってもおかしくない年齢だ。


「そういう師匠は何歳なんですか?」


「え、師匠?」


 彼女の俺に対する呼び方が気になったので俺は彼女に聞き返す。


「はい。今後様々なことをあなたから学んでいくことになるでしょうし、そういう呼び方の方がいいかなと思いまして」


「そんなに気遣わなくてもいいんだよ」


「いえ、これは私の心構えの問題ですから」


「まぁ、君が満足ならそれでいいけど」


「ありがとうございます。それで何歳なんですか?」


「……37歳」


「まぁ、妥当ですね」


「面白味も何もない年齢でしょ」


「い、いえ、そういうことではなくてですね。

 20年ほど前から修業をなされたのであれば、納得できる年齢だと思いまして……」


「ふ~ん」


 どうやら、彼女はまだ俺がアルド・メリタリであると信じる事ができていない様子だ。

 まぁ、今まで信じていた神がこんなおっさんだなんて認めたくないだろう。

 特に彼女は信仰心が強そうだからな。


「俺のことは神みたいに扱う必要はない。

 これから一緒に行動するちょっと頼れるおっさんと思ってくれ。

 なにか困ったことがあればできるだけ力になるよ」


「ありがとうございます」


 俺達は話し終えると、特に話すこともなくなり、十分風呂に使ったので俺は風呂から出る。

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