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第35話 おじさんは手紙をもらう。どうしよう……

 俺は露天商で水を買ってジェルたちのところに戻る。


「はい、水を買ってきたよ」


「ああ、ありがとうございます。

 師匠、戻られるのが遅いようでしたがなにかありましたか?」


 ジェルが心配して俺に聞いてくる。

 隣にいるクロも同じような表情をしている。

 ここはさっきのことについて話す場所としては不適切だろう。


「ここでは話しづらい事なんだ。

 宿に戻ったらきちんと話すよ」


 俺がそういうと2人は納得したような表情を見せた。

 ジェルは俺が買ってきた水を飲むと立ち上がる。


「ジェル、もういいのかい?

 もう少し休んでいた方がいいと思うけど……」


「大丈夫ですよ。

 治癒魔法を自身にかけたので問題ありません」


「そうかい。それじゃ、いったん宿に戻ろうか」


 そう言って俺達は宿屋に戻った。

 宿に戻ってから俺は大まかな事情を大体説明した。

 彼女がアイマル国の第二王女であること。

 俺のことを知っていた理由。

 俺の力を貸してほしいこと。

 協力した時の報酬のこと。

 全てを話し終えたとき、クロとジェルも難しい顔をしていた。


「他国の内政に安易に干渉するべきではないと思うのですが……

 とはいえ、その報酬はかなりほしいものですしね」


「ごめんなさい

 マジカル王国のことがなければ断れたのに。

 私のせいで2人に迷惑をかけちゃって……」


 クロはそういって俯く。

 俺はそれをフォローする。


「いや、クロのせいじゃないよ。

 悪いのは君個人じゃなくてマジカル王国。

 そこに何ら変わりはない。

 いいね?」


「はい」


 彼女に言い聞かせるように言う。

 ジェルは難しい顔をしたままだ。

 俺はジェルに疑問だったことを聞いてみる。


「ねぇ、アイマル国とカロザス国は仲がいいのかい?」


 確か20年前だとそこそこ、といった具合だった。

 そこまで仲がいいというわけでもなければよいというわけでもない。

 今はどうなっているのか知らんが。


「微妙、ですね。

 カロザス国というよりコヨーク王国とは仲がいいです。

 で、そのコヨーク王国と仲のいいカロザス国だからなかよくしている、という感じでしょうか」


 なるほど。

 やはり20年程度で国家間の仲が一気に変わるはずもなし、か。

 ジェルは続けて言う。


「その意味でも今回の件はかなり魅力的です。

 あまり仲のよくないカロザス国とアイマル王国の結びつきがより強固になるでしょう」


「それはそうだけど……

 もしも、政権を取れなかったら俺達反逆者として殺される可能性もあるんだよ?

 仮に政権を取れてもほかの奴から恨まれて暗殺される可能性もある。

 かなり、リスクが高いように思うけど……」


「ええ、もちろん承知しています。

 ですが、相応のメリットもあるということも言っておきたかったんです。

 最終的に決めるのはあなたですから」


 ジェルはそういった。

 なるほど、確かに俺は国家間のことを考えていなかった。

 そこをわざわざ言ってくれたのか。

 ありがたい限りだ。


「今回の件については……」


 俺は迷う。

 絶妙なリスクとリターンの関係。

 ここをきちんと見極めなければ危ない。

 きちんと考えたうえで決断する。


「断ろうと思う」


 最初から最後まで意見を変えないなんて頑固なおっさんだな、と思われるだろう。

 だが、冷静に考えてみよう。

 まず、メリットだが一番注目したいのはやはり『俺の場所の特定方法』。


 これについてだが、第二王女は『この方法であなたが危険に脅かされることはない』と言っていた。

 嘘をついている可能性もあるかもしれないが、それを言い出したら報酬のことも嘘かもしれない。

 加えて、この方法を聞くのは第二王女からである必要はない。

 具体的にはバルベイラに聞けばわかるかもしれない。

 一国の王族より5大帝の一人である彼女の方がそういうのは詳しいだろうしな。


 そこら辺もろもろを考慮するとメリットがあまりないようにも思える。

 なので、今回の件については断ろうと思ったわけだ。

 大丈夫、ちゃんと俺は判断できている。


「あなたがそういうのであれば私たちはその決定に従うだけです」


「ん。自信もって」


 そう言って彼女達は俺の手を握ってくれる。

 温かい。

 心が落ち着いていく。

 見落としている部分は一つもない。


「そうだね。少し弱気になりすぎていたよ」


 そう言ってから俺達は訓練をして食事をとり、夜になった。

 リラックスしている時に部屋のドアがコンコンと叩かれた。

 なんだろう?と思ってドアを開けてみると手紙の配達員だった。

 一応この世界にも手紙による遠方とのやり取りというものはある。


 だが、国が違ったりするとかなり時間がかかり往復で1か月ぐらいかかることもざらだ。

 なので、すぐにでも来てほしいというときにはあまり役に立たない。

 特に前世の感覚がある俺にとっては遅すぎる、というのが正直な感想だな。

 なので、あんまり俺から送るということはない。


 それにしても誰だろう?

 俺達の宿を知っているものなど限られてくるはずだがな。

 差出人のところにはマイル、コヨーク王国のギルドマスターの名前が書かれていた。

 開封して中身を確認すると、大まかな内容はオークの件についてだ。


 手腕がよすぎる、と評価せざるを得ない。

 つい昨日のことだというのにここまで迅速に動くとは、ね。

 書かれている内容はより詳細な情報だ。

 読み進めていく中でその中の一文に俺の目が引かれる。


『あの隷属魔法が書かれている金属の首輪はマジカル王国で製造された可能性が高い』


 どっと嫌な汗が噴き出した。

 待て、落ち着くんだ。

 続きを読むんだ。

 そのあとの文を読み進めていくと一応作られたのはマジカル王国、というだけであってその後それを使用したのは他の組織かもしれない、とのことだ。


「ふ~~」


 俺は大きく息を吐きだす。

 そして、立ったまま天井を見上げる。

 動揺するな、冷静でいることこそが肝心だ。


 文章を続けて読んでいくと、マジカル王国が使用したかどうかはわからないがそれでも罪があるとのことだ。

 隷属魔法は作るだけで禁忌。

 それを破ったのでいくつかの国が手を組んでマジカル王国に賠償を要求するつもりのようだ。

 いくつかの国とはカロザス国や今回の当事者であるコヨーク王国を中心にマジカル王国を快く思っていない国々の面々だ。


 まぁ、俺達が早期発見ができて被害を最小限にしたからよかったもののあのオークディザスターがもっとたくさんの群れを率いていたら、コヨーク王国は滅んでいた可能性がある。

 コヨーク王国自体がそこまで大きな国でもないし、オークディザスターが原因で過去に滅んだ国もあるしな。


 だからこそ、もしもマジカル王国があの金属の首輪を使ってオークたちをけしかけたのだとしたら、コヨーク王国を滅ぼそうとしているということ。

 そこについて糾弾するつもりのようだ。

 ちなみに手紙によると他の国達への根回しや場所のセットをするために糾弾するための時間には三ヶ月ほど要するという。

 これは三か月後には下手したら戦争になるかもな。


「物騒な世の中だねぇ」


 俺はぼそりとつぶやく。

 ふむ、それにしても俺達がマジカル王国の仕業である可能性が高いオークたちの討伐任務を引き受けることになったのは本当に偶然だろうか?

 ひょっとしてあれはマジカル王国たちが俺達の場所をすでに特定していて、コヨーク王国を滅ぼすついでに俺達も消そうとしたのではないだろうか?


 戦争が始まればカロザス国、コヨーク王国、マジカル王国は危険になるだろう。

 カロザス国が負けてマジカル王国の属国になるかもしれない。

 そうなれば、カロザス国の騎士団であるということには何の価値もなくなってしまう。

 多少のリスクを背負ってでも他の国とのパイプも作っておいた方がよいのではないだろうか?

 具体的にはそう、アイマル国とか。


「……ジェル、クロ」


「ん、なに?」


「何でしょうか、師匠」


「状況が変わった。

 今回の件を引き受けようと思う」


「何があったんですか?」


 俺は彼女たちにギルドマスターからもらった手紙を見せる。

 手紙を読み終えた彼女たちは納得してくれたようだ。

 その夜のうちに俺達は必要なものを露天商で買いそろえる。

 露天商から帰って来た時にまた別の人からの手紙が来ていた。


 バルベイラだ。

 内容としては近いうちにマジカル王国とカロザス国との戦争が起こるかもしれない。注意してほしい。

 というものだった。

 どうやら、彼女も今回のことについて情報を仕入れていたようだ。

 ここまで速いとはさすがは五大帝といったところか。

 そして、戦争が起こると彼女もにらんでいるようだ。

 やはり、他の国とのパイプを築いておく必要があるな。

 俺の決断はより強固なものになった。


「明日、とある店で今日と同じ時間に集合することになっている。

 それまでは体を休めておいた方がいいだろうね」


「そうですね。

 そこで了承したら、そのあとはどうなるんですか?

 アイマル国に戻るんですか?」


「さぁ、了承した後のことは聞いていないからね。

 でも、ここを旅立つ可能性も普通にあり得る。

 だから、今のうちに用意をしているってわけ」


「なるほど、そういうことでしたか」


 そんなやり取りを終えて俺達は眠りにつく。


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