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第31話 おじさんたちは戻ってくる。任務達成!

「それじゃあ、俺達はそろそろ行くよ」


「また機会があれば立ち寄ってくだされ」


「ん」「それではまたお会いする機会があれば」


筋肉痛が治ったので翌日にはこの村から発つ。

邪魔にならないようにひっそりと去ろうと思っていたのだが、村の見張りをしているアルス君に見つかってしまった。

アルス君が村長さんたちを呼んできて今はお別れの言葉を交わしているというわけである。


俺はアルス君のところに向かう。

なんとなくだが、そうするべきだと思ったからだ。

村長から聞いた話だと彼はあの日から一層真面目に仕事に取り組むようになったそうだ。

村の見張りはもちろん、ほかの仕事なども自分から進んでやるようになったらしい。


「まぁ、そのなんだ……頑張りなよ」


なんとも下手な言葉だった。

考えて出てきた言葉がこれかよ、と思うかもしれないがこれぐらいしか思いつかなかった。

それに対して、彼はまっすぐ俺の目を見て言ってきた。


「ああ、親友との約束だからな」


その眼を見て確信する。

ああ、大丈夫だと。

俺の不安は杞憂に終わったのだと。


「それじゃ、またね」


そう言って俺達は彼らと別れ王都バルンに向かう。

数日かかって、王都バルンに到着する。

もちろん、向かう先は冒険者ギルドだ。

ドアを開けて中に入ると一斉に好奇の視線が向けられる。

俺達はそれに一瞥もせずにカウンターへと向かう。


「すみません、レベル5の依頼を討伐したのでかくにんしてもらいたいのですがよろしいでしょうか?」


「え、ええ。構いませんよ」


俺は任務の用紙とオークの耳をカウンターに出す。

1000体分の耳はないがそれでも30体ほどの耳はある。

それと、オークのボスの耳も。

それと、オークについていた首輪も、だ。


「これは?」


首輪を指さして受付の人は首をかしげる。

彼女には隷属魔法の術式だと分からないのだろう。

まぁ、事務仕事がメインの彼女がわからないのは当たり前だ。


「それについてなんだけど、ここのギルドマスターを呼んでもらえるかい?

これについて話しておくことがあるんだ」


「か、かしこまりました。

少々、お待ちを」


そう言って奥に行ってしまった。


「師匠、これは何ですか?」


ジェルが俺に聞いてくる。

この首輪については彼女たちに話していない。

ジェルやクロに不安をかけたくなかったからだ。


「ギルドマスターも交えてきちんと話すよ」


そう言っていると、先ほどの受付の子が戻ってくる。

その、後ろからガタイの良いおじさんを連れて。


年は俺と同じくらいだろうか。

髪には所々白髪が生えている。

しわがいくつも顔に刻まれており、顔は整っている。

口元に髭を生やしており、目は少し鋭いがそのうちに確かな熱を持っている。

イケオジの部類に入るだろうか。


「どうも、始めまして。

ここのギルドの責任者を務めているマイルです。

私をお呼びとのことでしたが一体どのようなご用件で?」


「ああ、それなんだけどね。

まずは、これを見てもらいたいんだ」


そう言って俺は彼に首輪を見せる。

それを見て、マイルは一瞬驚愕する。

だが、すぐに表情を取り繕い指示を出す。


「ひとまず、奥に来てください。

話はそれからでも遅くはないでしょう」


そう言って俺たちは奥に通される。

さすがだな。

首都のギルドマスターともなれば相応の格が必要とされる。

一定の戦闘力もさることながら高水準の教養や知識なども。

おそらく彼は一目でこの首輪がどういったものなのか理解したのだろう。

それゆえ、ここで話すべきではないと思い俺達を奥に通したのだ。


奥の部屋にはテーブルがあり、それを挟んでソファが二つあった。

ソファは見ていると吸い込まれそうな深紅。

ふちをおしゃれに金色で囲っている。

テーブルは木製で黒く表面は光沢を放っている。

俺達はソファにどっかりと腰掛けさせてもらう。

ギルドマスターも向かいのソファに腰掛ける。


「それで、先ほどの物を見せてもらえますか?

出来ればオークの耳も一緒に」


「ええ、どうぞ」


俺は机の上に先ほどの首輪とオークの耳をおく。

マイルはそれを手に取りまじまじと観察する。

そして、それを再度机の上に置いてから俺たちの方に向き直る。


「これをどのような経緯でどこで手に入れたのか説明してもらえますか?」


そう言われたので俺達は赤裸々に説明した。

オークの群れの討伐の依頼を引き受けたこと。

オークの群れが予想以上に多かったこと。

オークのボスが上位種であったこと。

ボスの首輪にそれが付いていたこと。

全てを聞いて、マイルは納得したような表情を浮かべる。


「なるほど、そういうことですか……」


「あの、今の話を聞いて分かったことがあったのなら俺達に教えてもらえませんか?

俺達もいろいろ知っておきたいので」


「ええ、いいですよ。

ですが、これはあくまでも私の推測に過ぎないということをお忘れなく。

事実と異なっている可能性もあります」


彼はそう前置きしてから話す。


「まず、今回のボスですがオークの最上位種、オークディザスターとみて間違いないでしょう。

こんな禍々しい赤黒さでこの大きさはオークディザスターくらいです」


最上位種。

それはその種における最高到達点。

種としての限界点である。

もちろん、統率力もあることながら本体の実力も高い。

極めて危険な個体である。

過去には数万の軍勢を引き連れて一国を落としたこともあるのだとか。


「そして、そのボスには隷属魔法の首輪をつけられていた。

おそらく、これをつけた者はオークの群れを操って何かをしたかったんでしょうね。

それも、最上位種を操るほど大規模な何かを」


「何か、とは?」


「さぁ、そこまでは。

ですが、最上位種の意に反して動かすほど強力な隷属魔法。

加えて、その首輪を使うために最上位種を用意。

そこらへんを考えると国規模の組織が後ろにいるんじゃないでしょうかねぇ」


彼はそういった。

用は個人の犯行の域を超えている。

裏に大きな犯罪組織が動いているということだ。


俺の頭の中に一瞬バルベイラの顔がよぎる。

いや、まだ確定したわけではない。

それに、隷属魔法を用意できるとなったらマジカル王国の可能性だってある。

はたまた、全く関係の無い第三者の可能性も。

まだ、わからないことだらけだ。


「ひとまず、今回の件は上に報告しておきましょう。

隷属魔法は禁忌とされている魔法です。

これを使用した者を見つけ次第しかるべき対応を取らせてもらいます。

その為にも周辺国家にも色々と言っておくように進言しましょう。

これをお預かりしても?」


「ええ、構いませんよ」


そう言ってから、俺は彼に首輪を渡す。

彼はそれを丁重に受け取る。

ここで俺は彼に話しかける。


「あのぅ、それで俺たちのパーティーのランクってどうなるんでしょうか?」


「そうですね。

最上位種の率いる群れを撃退した、となるとランクは7ぐらいでいいんじゃないでしょうか。

本来ならばランク5の依頼ですが今回は想定外のことが多かったですし、特例としてランク7のパーティーとして認めましょう」


「おお、ありがとうございます」


うれしい誤算だ。

ランク7とは世界の第一線で活躍する冒険者たち。

俺達もそこに仲間入りした、ということだ。

また、お給金に関しても一気に増える。

普通で暮らしていれば、困ることはそうそうない金額がもらえるはずだ。


俺一人ではここまで到達できなかっただろう。

これもクロやジェルたちがいてくれたおかげである。

彼女たちには感謝しかない。


「正式な手続きはこちらでしておきましょう。

他に何か話すことはありますか?」


俺たちは特に答えない。


「ないようですね、それでは解散ということで」


そう言って彼は立ち上がり部屋から出て行く。

俺達もそれに次いで出て行く。


「なんかすごい思惑通りって感じ」


「そうですね。些か過大評価をしているようにさえ思います。

うれしいことではあるのですが……」


2人とも予想以上の評価に困惑しているようだった。

まぁ、無理もない。

俺だって気分が高揚している。


そりゃ、上位種の率いる群れを撃退したんだ。

多少上の評価をされるだろう、という下心はあった。

だが、まさかここまでとはね。

人生、何が起こるかわからないものだ。


「まぁ、ありがたく受け取っておこうよ。

今日はささやかながら宴にしようか」


「そうですね、私達の昇格に一杯もらいましょう」


「ん。賛成」


そういって俺達はギルドから出て近くの酒場へと足を運ぶ。

いつもとは違いちょっと高級なところだ。

俺とジェルは成人しているので酒を飲む事ができる。

クロはまだ幼いのでジュースだ。

後は酒のつまみになりそうなものと食事を頼む。

しばらくすると頼んだものが届いた。

俺は酒の入ったコップを手に取る・


「ええ、それでは俺たちのパーティの昇格を祝しまして乾杯!」


「「乾杯!」」


2人ともそういってから一気に流し込む。

俺も酒を口の中に流し込む。

キンキンに冷えた酒がのどをごくごくと通る。

うまい!

やはり、酒は冷やしているものに限るな。

そのあとは食事にも手を出していく。


「おお、これ美味しいな」


俺は乾物のようなものを食べて思わずつぶやく。

前世で言うするめなどに近いか。

食感はコリっとしていて適量の塩。

やはり、海に近いからか海鮮物がうまいな。


「そうですね。酒によく合います」


ジェルも食べながらそうつぶやく。

クロも食べているが彼女の好みには合わなかったようだ。

他にも海産物や一羽焼きという特殊な焼き方で焼かれた肉も食べた。

俺達は料理に舌鼓を打ち、気が付けば酒もかなり飲んでいた。


「クロ、おいしいかい?」


「ん。ところで、顔真っ赤だけど大丈夫?」


「へ?」


自分の頬に手を当ててみる。

なるほど、確かに。

いつの間にかかなり頬が温かい。

どうやら、かなり酔いが回ってきたようだ。


「らいじょうぶですよぉ、師匠。

私のま、まほうがあるんですから」


気が付けばジェルもろれつが回らないくらい飲んでいたようだ。

そろそろお開きとした方がいいな。


「それじゃ、お暇しようか」


「えぇ、まら、らいじょうぶですよ。

もっと飲みましょうよぉ」


ジェルはそんなことを言っているが、ここらが潮時だ。

俺はジェルを担ぎ荷物はクロに持ってもらい会計をしてから宿に帰らせてもらった。

そのあとはクロとジェルをベットに置き俺も寝かせてもらう。



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