第26話 おじさんは任務を引き続きする。頑張りますかぁ。
俺達はオークと戦った場所に戻ってきた。
行きも帰りも一緒に居た男の人は頭を下げ、そのまま帰った。
いや~それにしても、何事もなく終わってよかった。
結果からみれば、俺はいざというとき彼女に頼れる事ができるようになったというわけだからむしろ、得したんじゃないんだろうか。
ジェルとクロにはバイラベルトの会話をそのまま伝えた
彼女たちもバルベイラの目的がわからないと首をかしげていた。
俺も彼女の真意はわからずじまいだった。
「師匠、それで今からどうしますか?
オークの群れは周りにいないようですが?」
ジェルが俺に尋ねてくる。
そういえば、中断していたが今は冒険者の任務の途中であった。
オークの群れを討伐する、だったか。
俺は周りをきょろきょろと確認してからいう。
「そうだね。
ひとまずは、近くの村にでも行ってそこで体を休めよう。
今日はもう休む。いいね?」
「了解です」「ん」
俺はこの任務に来る前に渡された地図をもとに近くの村に行く。
近くの川などを手掛かりに移動する。
歩いておおよそ2時間ほど。
今日はさして戦闘も行っていないので、体力的には問題ない。
すぐに、村に到着した。
家が密集しており、人々が仕事をしている。
水をくんでいたり、道具を持っていたり、子供が遊んでいたり……
いたって普通の、どこにでもあるような村だ。
俺はその村の前に立っている一人の若者に尋ねる。
「すみません、このあたりに宿はありませんか?」
「あんた誰だ?」
明らかに警戒されているような口ぶりだ。
まぁ、分からんでもない。
こんな閉鎖的な村に素性の分からないおっさんが来ているのだ。
それも美少女二人を連れて。
そんな何か訳ありそうなやつを迂闊に村に入れるわけにはいかないのだろう。
「俺たちは冒険者です。
この付近にあるオークの群れを討伐するためにやってきました」
「冒険者?なら、プレートを見せてくれよ?」
冒険者にはプレーと呼ばれるものが発行される。
そこにはその冒険者の軽い紹介分のようなものが書かれている。
簡単にいうと、ギルドが発行しているその冒険者に関する保証書のようなものだ。
それを持っているのは冒険者だけ、というわけである。
「ああ、俺じゃなくて彼女が冒険者なんだ。
クロ、彼にプレートを見せてあげてくれないか?」
「ん」
クロは彼の方に近寄っていく。
そして、プレートを差し出す。
『冒険者名:クロ
ランク:3
備考欄:まだ、幼い少女のような見た目で黒髪黒目。
実力的には何ら問題ない。影魔法を得意としている。
現在はパーティーを組んでいる。
冒険者ギルド』
こんな感じだ。
ちなみに書かれている文字の筆跡はそれぞれ違う。
これはギルドの受付に持っていくとその都度新しい情報を書き加えてくれたり、不要な情報を消したりしてくれるので書いている人がその都度違うからだ。
これは『更新』と言われるものだ。
「どうやら、本当みたいだな。
いいえ、案内してやるよ」
「ありがとう」
そう言って俺たちは宿に案内された。
そこはあまり大きくはない。
普通の家の大体3倍ぐらいの大きさだろうか。
3,4世帯も入ったら満室になりそうなぐらいだ。
まぁ、こんな田舎で大きな宿がある方が不自然か。
あまり、外部の人も来ないだろうし。
俺達は中に入らせてもらう。
この宿はあくまで外部の人間を止めるための場所。
ゆえに、寮母さん的なものはいないし、食料とかも自分たちで調理する必要があるそうだ。
俺達は宿の中の一室に泊まることにする。
仲には簡素なベッドとタンスがあるだけだった。
まぁ、これだけあれば十分だ。
「クロ、食事の準備をするから、食材を取り出してくれないかな。
ジェルは水を汲んできてくれ」
「ん」「わかりました」
ジェルはバケツを持って外に出る。
クロは自分の影から食材を取り出す。
そう、彼女の魔法で影の中に物を収納することができるのだ。
なので、俺達も多少は食材を持ちつつも、大体の食材はクロの影の中に入れている。
この魔法のおかげで俺たちが持てる荷物の量が大幅に増えた。
彼女には感謝しかない。
「はい」
そう言っていくつかの食材を手渡してくる。
俺はそれを食べやすい一口サイズに切る。
そして、鍋の中に入れる。
ついでに、調味料もまぶしておく。
「持ってきましたよ」
近くの井戸から水を汲んでくれたようだ。
俺はそれを先ほど食材を入れた鍋の中に適度に入れる。
ぼっという音を立てて火が出る。
そして鍋を火の上にかけてじっくり煮込む。
一酸化中毒になるといけないので、窓を全開にしつつ、だ。
俺は剣を持ち素振りを始める。
煮込むまでにはそれなりの時間がかかる。
火から目を離さなければ多少運動をしていても大丈夫だろう。
そう思い、振り始める。
この剣にもだいぶ慣れてきた。
やはり、剣との接触時間を増やして正解だったな。
寸分たがわず間合いを把握するまでには至らないが、ある程度の間合いは把握した。
重さや、柔軟さ、硬度……剣についてのかなりの情報を知れただろう。
剣の素振りをある程度終えた俺は腹筋などをして体を鍛える。
クロやジェルはというと彼女たちも鍛えているようだった。
ジェルも素振りをしていたり、クロも魔法を使っての移動をしている。
しばらく、運動していると鍋がぼこぼこと音を立て始めた。
「お、そろそろいい感じかな」
「そうですね」「ん、いい汗かいた」
俺も汗をかいていたのでタオルで体を拭く。
そして、鍋に入っていたスープを入れ物によそう。
干し肉とパンとスープだ。
俺達はそれを食べ始める。
味としては、まあまあだな。
俺は別にシェフじゃないし、ある程度のおいしさがあればそれでいいと思っている。
彼女たちももくもくと食事をとり、食べ終わる。
まだ、外は明るい。
だが、今から再度オークの群れを探しに行こうと思ったら返ってくるのは真夜中になるだろう。
やはり、捜索は明日からだな。
とはいえ、明日まで特にすることもない。
ここは早めに寝て明日の朝早くから捜索に行くのがいいだろう。
「それじゃ、そろそろ寝るかい?」
「早寝早起きということでしょうか?」
「まぁ、そういうことだね。
それに今日はもう疲れたし」
何せ5大帝と会っていたのだからな。
誰だってあんな大物と出会えば緊張する。
彼女たちだって気を張っていて疲れているはずだ。
「ん。そうする」
そう言ってクロはベッドにボフンと乗った。
「それでは、私も寝させてもらいます」
「ああ、それがいいと思うよ。
俺も戸締りとか火の元の確認したら寝るつもりだ」
「それでは」
そう言って彼女もベッドにボフン。
俺はスープを鍋から水筒のような物に移し替える、
そして、先ほどジェルが組んできた水をかけ火を消す。
喚起のために窓を全開にしていたが適度に開けておけばいいだろう。
なんと言うか密室というの息苦しくて俺はあまり好きではない。
そう思いつつ、窓を適度に開ける。
「俺も寝るか」
俺は床に転がる。
ベッドたちは彼女たちが使っており、俺が入るスペースはないからな。
そして、目を閉じてそのまま眠りにつく。
次の日、朝早くから捜索をしたがオークの群れらしきものは見つからなかった。
翌日もそのまた翌日も見つからなかった。
群れでない一体のオークなら何体か見つかったが。
そもそも俺達はそこまで索敵能力が高くない。
まぁ、こういう日もあるさ、気長にいこう。
その間に村の人たちと交流する機会もありいろいろな人と知り合えた。
彼らの多くはこの村の世界がすべてという者たち。
広くても近隣の町ぐらいしか知らないそうだ。
なので、別の国であるカロザス国のことについては興味津々だった。
特に、キャロル山脈での魔物との戦いについての話は人気だった。
そんなこんなで一週間が経過しようとしていた。
ドンドンドン。
ある日の真夜中。
ふと目が覚めるとそんな音が聞こえる。
最初は気のせいかと思ったが、どうやら気のせいではない。
しかも俺たちの部屋の宿のドアをたたいているようだった。
「はいはい」
俺は半分寝ぼけながらもドアを開ける。
すると、初日に俺達をこの宿まで案内してくれた男性が立っていた。
いつもと違ってえらく狼狽しており、落ち着きがない。
この一週間で仲良くなったこともあり彼のことは知っている。
彼の名前はアルス君という。
この村の戦士の一人だそうだ。
だが、戦士の中では臆病で魔物などとは戦わずに、村の見張りをしているそうだ。
それゆえ、よく他の戦士から馬鹿にされている。
俺は彼とはあまり話す機会がなかった。
いつも村の前に立って見張りをしており俺と接点があまりなかったのだ。
それにしても何かあったようだ。
あまり話したことはない彼だが冷静さを失っているのは容易に分かる。
ここで俺の頭は急速に冷静さを取り戻した。
俺は極めて落ち着いた声でアルス君に話しかける。
「どうしたんですか?」
「そ、そこに……いや、そこまで、近くでもないけど……」
「落ち着いてください。
まずは深呼吸を」
「で、でも……」
「いいから。
ゆっくり息を吸ってゆっくり吐き出してください」
俺の指示通り彼は深呼吸をする。
数回繰り返したところでいくばくかの余裕は取り戻したようだ。
それも、まだ焦っているようだったが。
「もう一度聞きます。
何かあったんですか?」
「じ、実はこの村の方に向かってオークの群れが迫っているみたいなんだ。
そ、それで冒険者のアンタたちに頼もうと思って……」
「なるほど、わかりました。
クロ、ジェル」
俺は彼女たちに声をかける。
先に飛び起きたのはクロの方だった。
そして、ジェルの体を揺さぶりジェルも目を覚ます。
「どうやら、オークの群れがこの村に近づいているみたいだ。
2人とも戦闘準備を」
俺の言葉で彼女たちもまた、寝ぼけから脱却したようだ。
彼女たちの顔も引き締まったものになる。
子どもである彼女たちに無理はさせたくはない。
簡単なことならおれ一人で片づけ彼女たちには寝てもらっていたい。
だが、多人数を相手にするのでこちらも1人では厳しいだろう。
さらに、村人も守らねばならないのだから彼女たちの力が必要だ。
彼女たちも武器を身に着け必要な荷物を持つ。
「それで俺達はどこに行けばいいんですか?」
「ひとまずは村長の家に。
俺についてきてください!」
そう言って飛び出していったアルス君の後を俺達は追いかける。
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