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第23話 おじさんは任務を受ける。ま、行きますかぁ

 あれから1週間ほどが経った。

 監視している奴らは相変わらず何もしてこない。

 クロの冒険者の任務に3人で行った時も、特に何もしてこなかった。

 一体何がしたいのか。


 あとこの数日で変わったことと言えばパーティーを組んだことだ。

 パーティーというのは高難易度の任務をこなすときに複数の人間が組むことである。

 この時に組む人たちは、全員冒険者である必要はない。

 1人冒険者がいればよく、ほかはアマチュアでもよい。

 今回であれば、クロが冒険者なので俺たちは3人でパーティーをくめた。


 なぜパーティーを組むのかというとシンプルにお金が関係している。

 というのも、冒険者は基本的に自分のランクと誤差1の範囲でしか任務を請け負えないのだ。

 これは高ランク冒険者が低ランクの任務を請け負い、低ランク冒険者の仕事を奪わないようにするため。

 そして、低ランク冒険者が無謀な超全をしないようにするための二つの理由がある。


 クロの場合だとランク2から4までの任務ということだな。

 彼女は頑張っていてくれたが、金が足りないのだ。

 そこまで高ランクでないということもあって任務一つ一つの褒美が安い。

 さすがに毎日10万ヌーロは稼げない。


 となると、俺のもらった金を切り崩していくことになる。

 また、食堂で食べるお金やほかに買うことも考えると一日15万ヌーロほど消費するのだ。

 ならば、安いところに引っ越せばいい、と思うかもしれない。

 だが多少高くても治安のよい方がいい、というのが俺たちの総意だった。

 なので俺たちは3人でパーティーを組むことにした。


 とはいえ、3人でパーティーを組んだからいきなり高ランクの任務を受けれるわけではない。

 そのパーティーに所属している冒険者で一番高ランクの人の誤差1の任務を受ける事ができる。

 そのランクの任務を3回受け達成することができればそのパーティーはそのランクの実力があると認められるというわけだ。


 俺達はこの一週間でランク4の任務を3回受けた。

 それらをすべて果たすことができランク4のパーティーとして認められた。

 今注目のルーキーパーティーである。

 俺個人は全然ルーキーという年でもないんだがこのパーティーが結成されてからの日数を考えるとルーキーの中のルーキーだな。

 パーティー名は『星の屑スターダスト』。

 特に意味はない。


 そして、今日はランク5の任務を受けに行く日である。

 ランク5。

 ここを超えたらベテランの冒険者と言えるそうだ。

 それゆえ、ランク4とランク5では高すぎる壁があるんだとか。


 俺達は朝早くにギルドに向かう。

 ギルドはカロザス国のものと大して変わらなかった。

 前世で言うコンビニと同じようにその店舗ごとによって多少変わったところはあるが、大まかなつくりとしては同じだった。

 俺達が入ると、みんなが俺たちに目を向けてくる。


 まぁ、今話題のパーティーだからな。

 気になるのも無理はない。

 その視線を無視しつつ受付のところまで行き、声をかける。


「すみません、ランク5の依頼ってありますか?」


「はい。いくつかありますが、どれになさいますか?」


 そういっていくつかの依頼の書かれた紙を差し出してくる。

 俺はそれにちらりと目を通す。

『オークの群れの討伐』

『ボアの群れの討伐』

『迷宮攻略の補助』

『イエロードラゴンの卵の持ち帰り』

 等々……。


 この中で目立つのはやはり『イエロードラゴン』の任務であろう。

 おそらく、この中で一番難易度が高い。

 卵をお持ち帰りするとなったら、親ドラゴンが黙っていないはずだ。

 そうなれば、イエロードラゴン複数体を相手にしないといけなくなる。

 最悪の場合は群れ全体を相手にしないといけない。


 任務としては7ぐらいに相当するのではないだろうか。

 俺はドラゴンを複数体相手にしたことがないからわからないが、おそらく俺でも無理だろう。

 そんな任務がランク5にあることの方が不思議だ。

 この任務だけは選んでくれるなよ。

 そう思い、ジェルをちらりと見る。


「それでは、『オークの群れの討伐』でお願いします」


「わかりました」


 そう言って俺達はその任務を引き受けた。

 ひとまずは、『イエロードラゴン』を受けなくてよかった。

 そう思い、俺はほっと安堵する。


「これがオークの群れが発生したと思われる場所です」


 そう言って地図を手渡される。

 地図には赤いバツ印がつけられているところがあった。

 この王都から少し離れているな。

 まぁ、危険な魔物が王都付近でそうホイホイと現れるはずもないか。

 少し遠いところ、ということもあり宿に戻って必要な荷物を持つ。


「それじゃ行こうか」


 そう言って俺たちは印がついているところへと移動を開始する。

 ここでは馬車に乗せてもらった。

 歩いて行くというのもありだが、ここからはランク5。

 何があるかわからない以上戦う前に体力を使うことはできるだけ避けておきたい。

 それに金銭的にも前よりは余裕が出てきている。


 馬車で揺られること数日。

 バツ印があるところの近くで下ろしてもらった。

 地図で確認した限りでは王都からそこまで離れていないはずだが、人はあまりいない。

 景色は田舎の田園風景に近い。

 近くにオークの姿は確認できない。


「ひとまず、近くにいないか探してみようか」


「はい」「ん」


 そう言って俺たちは周囲を警戒しつつ歩きだす。

 相変わらず監視の奴らはついている。

 今回はかなり距離を取り、30メートルほど後ろのようだが。

 一体、何がしたいのか。


 オーク。

 ゴブリンやドラゴンと同程度の知名度を誇るファンタジーの動物だ。

 ちなみに俺は生来ているゴブリンとオークを見たことがない。

 山にいるときも見たことがなかったし、依頼で頼んだこともない。

 ギルドに運ばれている死体なら何度か見たことがあるが。


 オークの見た目は全長3メートルほどで牙を生やし、全身に白い脂肪をつけている。

 個体によって体重は違うが平均でおよそ成人男性の体重の3倍ほど。

 二足歩行であまり知性は高くないが武器を扱う程度の知性はある。


 まぁ、想像通りの姿だ。

 心配があるとすれば刀がきちんと通るのか、ということだ。

 かなり脂肪が分厚いらしく、切るのが慣れてないとかなり大変らしい。

 そこで思い出したことがあったので彼女たちに念のため伝えておく。


「ジェル、クロ。

 もしも、オークに刃が通らなかったとしても無理やり切ろうとせずに、すぐさま抜いてね。

 無理に切ろうとして刀が折れるかもしれないし、抜こうとしている間にオークに体を掴まれたら危ないから」


「はい」「わかった」


 彼女たちは快く了承した。

 オークは人間よりもはるかに強い握力を持っている。

 一度掴まれたら致命傷をくらうことは避けられないだろう。

 もっとも、こちらには治癒魔法が使えるジェルがいる。

 多少のけがなら心配しなくてもいいと思うのだが、油断は禁物だ。

 俺がそんなことを歩いていると、白い大きなものがいるのを見つけた。


「師匠!」「いる」


 2人も気が付いたようだ。

 オークだ。

 見たところ周りには5体ほどしか確認できない。

 群れと聞いていたからもっと多いものだと思っていた。

 それともやはりこいつらは群れからはぐれたのか?


「師匠、どうしますか?

 数が足りていないように思えますが……」


「やろう。

 群れと合流して数を増やされる前に少しでも削っておきたい」


「わかりました」

「ん、わかった」


 幸い、相手はこちらに気が付いていないようだ。

 強襲して手早く片付けてしまおう。


「行くぞ!」


 そう言って俺たちは飛び出す。

 ここでようやく向こうも気が付いたようだ。

 だが、遅い!

 手早く一番前にいたやつを燃やす。


 一瞬周りに火が移る可能性もあったので使うのをためらった。

 だが、逃したくなかったので手早く仕留めるために火を使わせてもらう。


「うごぉぉぉ」


 叫び声をあげてもがき苦しんでいる。

 俺はすかさず二体目の方に向かう。

 俺の後に続けてジェルとクロも来る。


「はあっ!」


 そう言ってジェルは大きく一閃。

 オークの首元をとらえる。

 オークは手を伸ばして剣を受け止めようとするが遅い。

 彼女の剣はきれいな弧を描き首元にパシッと決まる。

 だが……


「浅い!」


 彼女の剣は確かにオークの首をとらえていた。

 だが、到底切れるものではなかった。

 彼女は俺の助言通り素早く剣を抜き、離れる。


「うぐぅぅ」


 そんなうめき声をあげる。

 ジェルはフーと深呼吸をする。

 腰を下ろし後ろにやや下がる。

 そして、剣を相手の方に向け、一気に加速する。


 そう言って剣先からすさまじい速度の突きが繰り出される。

 オークの体にたちまちいくつもの穴が開く。

 そして、血を吐きながらオークはその場に倒れこむ。

 おお、もしかして俺の技の真似か?

 うれしいなぁ。


 そう思いつつちらりとクロを見る。

 クロの方はというと影の中に入り、地面から素早く短剣でオークの足を切っている。

 オークは目の前の相手が急に消えたことに驚いていた。

 そして、地面からの奇襲には気が付けなかったようでわりとあっさりやられた。

 彼女の剣には毒が塗っているということもあり、痙攣したちまちこの世を去った。


「これで全部倒せたかな?」


 俺が3体。

 ジェルとクロが1体ずつで計5体。

 難なく倒すことができた。

 だが、まだ問題は残っている。


「さて、と。なんでここ数日つけまわしていたのかな?」


 そう言って黒いローブをかぶったやつらの方に体を向ける。

 距離にしてわずか3,4メートルほど。

 今までで一番接近している距離だ。

 俺達が戦っている間にこいつらはこちらに近づいてきたのだ。

 そしてこいつらこそが俺たちを付け回していた気配の正体だ。

 1週間ほど近づいてこなかったくせに一体何の用だ?

 俺は腰の剣に手をかけいつでも大丈夫なように身構える。


 一人の男が前に出て言う。

 声色からして30代ぐらいだろうか?

 親、わざと声を渋めにしている可能性もある。

 ローブのせいで顔も見えないしな。


「勘弁してください。

 私達はあなた方と敵対するつもりはないんです。

 ひとまずはその殺気をしまってもらえないでしょうか?」


 そういわれるが俺は殺気をしまうつもりはない。

 油断したところは一突き、なんてことも考えられるからだ。

 特に、こいつらは胡散臭すぎる。

 男はハァとため息をつき、話を続ける。


「我々はあなたが本物かどうか見分けるために付け回していたのです。

 その点についてはお詫びを。

 ですが、そのことについては水に流して我々の用件を聞いてもらえないでしょうか?」


「用件、とは?」


「われらが主、バルベイラ様がお呼びです」


 バルベイラ、その単語を聞き俺たちは驚愕をあらわにせざるを得なかった。


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