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第22話 おじさんは宿につく。来ているねぇ。

 ついにセントラル大陸に到着して、俺たちは届けてくれた船が帰っていくのを見る。

 おっと、先ほどから何度もセントラル大陸と言っていたがこの国の名前を言っていなかった。

 この国の名前はコヨーク王国。

 人族が多数を占めている小国だ。

 常に隣接している国におびえている。


 だが、ここはカロザス国との距離が近く交友関係も深い。

 そのため、小国だが周辺国家はカロザス国を敵に回したくはないので手を出せない、というわけだ。

 また、そこまで異種族がいないのでそこまで争いも起きない。

 比較的治安のよい国である。


「それじゃ、ジェル、クロ。

 ひとまず少しうろついていい感じの宿を取ろうか」


「はい、そうですね」

「ん」


 そう言って俺たちは近くの町に入っていく。

 港町。

 ここは真っ先に外国からの品が集まるのでそれを求めて人が集まってくる。

 なので、港の近くが発達することは多々ある。

 例えば、うちのカロザス国も王都と港の距離はそこそこ近かった。

 それはここも例外ではない。


 ここの場合はもっと極端だ。

 港町、ここが王都バルンだ。

 そのため、人が大量にいる。

 カロザス国の王都ほどではないがここも熱気と活気があふれている。


 真ん中に道があり両脇に露天商が立ち並んでいる。

 このまままっすぐ行ったところが王宮のようだ。

 人もたくさんおり、所々に人族以外の種族も見かける。

 彼らは少し気まずそうだ。

 こんなにも人が多いところに居たら彼らは目立つしな。


「2人とも、離れないように気を付けてね」


 俺は後ろにいる二人に声をかける。


「ん」「はい」


 そう言って2人は差し出した俺の手を握ってきた。

 右手はジェル、左手はクロ。

 まさに両手に花というやつだ。


「ひとまず、人が少ない方に行こう」


 このままではまともに進めない

 そう判断して暗い路地裏の方へと行く。

 出来るだけ人の気配が少ない方を選んだということもあってか、一気に人の数は減る。

 とはいえ、まだまだ人が飽和している。

 なので、もう一回路地へと進む。

 人の数はぐんと減り、かなりすいている。

 同時に人族以外の割合が上がる。


 ちらりと彼らのことを横目に確認してみる。

 貧しいであろうことが容易に想像できる服装。

 虚ろな目、ぼさぼさの髪、汚臭。

 彼らも相当苦労してきたことがうかがえる。

 彼らと少し離れたところで俺たちは話だす。


「さて、これからだけどひとまずは宿を取ろう。

 このまま、野宿するわけにもいかないし」


「そうですね。

 あまり勝手がわからない場所で争いごとに巻き込まれるのも困りますし、多少高くても治安のよい宿をとるべきだと思います」


「同意見だよ。

 とはいえ、そこら辺の勝手があまりよくわからないんだけどね。

 まあ、大抵王宮に近ければ治安もよくなっていくんじゃないかな。

 だから、ひとまずは王宮の方に行こうと思っているんだけど、どうかな?」


「賛成です」「ん」


 そう言って2人とも俺の意見に同意してくれた。

 そして俺たちは王宮の方へと足を進める。

 王宮の方に進むにつれて人の身なりがどんどん豪華になっている気がする。

 貧しい服装の人はどんどん消えきらびやかな衣装の人が増えてきているな。

 それと同時に、今進んでいるような裏路地のようなところもなくなっていっている。


「ひとまずは表通りに行こうか」


「はい」「ん」


 そう言って俺たちは表通りに行く。

 それにしても……

 う~ん、なんでだ?

 なんで俺たちをつけているんだ・・・・・・・


 俺の後方10メートルほどに気配が二つ。

 プロだな。

 気配の隠し方が素人のそれじゃない。

 俺も表通りにいたときは気のせいかと思った。

 だから、わざと人の少ない裏路地に行った。

 気配をより鋭く感知できるからな。

 そして、確信した。

 尾行されている。


 いつからだ?

 船にいた時からか?

 セントラル大陸についてからか?

 相手の目的は?

 相手の正体は?


 そんな疑問が俺の中で飛び交う。

 だが、そのいずれもに明確な答えは出ない。

 俺以外の二人はどうやら気が付いていないようだ。


 無理もない。

 ジェルはそういった分野はたけていない。

 クロもまだ若いのだからそこら辺の経験がない。

 俺だってあの山脈で培った驚異的な五感がなければ気が付きようがなかった。

 さて、どうしたものか。

 さすがに俺達が借りる宿の場所まで悟られたくはないんだが。


 撒けるか?

 いや、無理か。

 こちらは荷物を持っているのだ。

 向こうの方が速いだろう。

 ひとまずどこか適当に宿をとるか。


「ここら辺でいいかい?」


 俺はその宿を指さす。

 外見は小綺麗な印象を受ける3階建ての建物だ。

 小綺麗だが、かなりの建築年数だろう。

 なかなかの大きさで店の前には看板が建てられている。

 その看板には赤い縁取りで茶色い手書きの文字で【マーリャおばさんの宿】と書かれている。


「いいと思います」「ん」


 彼女たちの賛同を得て俺は宿に入る。

 すでに、宿の中に誰かが待ち構えている可能性がある。

 こういう危険な役は俺が請け負うべきだろう。

 中に入って素早く人の様子を確認する。

 特にこちらに怪しげな視線を向けてくるやつはいないな。

 ひとまずは大丈夫そうだ。


「お客さんかい?」


 俺に声をかけてくるのはでっぷりとしたおばちゃんだ。

 気さくな笑みを浮かべており、薄い黄色のエプロンをしている。

 あまり顔立ちは整ってはいないが、愛嬌がある。

 年は俺と同じか、少し高めといったところだろう。

 おそらく、この人がマーリャおばさんだ。


「はい。

 3人で泊まりたいんですけど、部屋は空いていますかね?」


「ああ、空いているよ。

 部屋はいくつだい?」


「一つで。

 3人が泊まれるぐらいの大きさがある部屋がいいんですが……」


 何かあった時にすぐ対処できるように同じ部屋の方がいいだろう。

 別の部屋だと行くのに時間がかかるだろうしな。

 そう思い、俺は一つの部屋をお願いした。


「あるにはあるけど……

 ここはそういう・・・・ところじゃないからね?」


 そう言って彼女は俺の両脇にいる彼女たちを見る。

 俺は大体意味を察した。

 彼女たちは見目麗しい女性。

 それに対して、俺は冴えないおっさん。

 俺と彼女たちの関係性を誤解してしまうのも無理はない。

 とはいえ、説明するのも面倒なのでそのままにしておこう。


「はい、わかってます」


 俺はそう答える。

 彼女はそんな俺を信頼したのかしていないのか頷く。


「値段は一晩で10万ヌーロだよ」


 高いと思うかもしれないが妥当な値段だろう。

 ここら辺は王宮が近く治安もよい。

 そして、3人で泊まることができるほどの大きさ。

 そこら辺を考えると、納得のできる数字ではある。

 俺はそう考えながら彼女に一万ヌーロを10枚払う。


「毎度。じゃあ、軽く説明するね。

 ご飯は食堂で食べる事ができて別払い。

 食堂が開いてんのは朝の6時から夜の9時まで。

 部屋にはベッドが1つと物を置けるタンスが2つ。

 掃除は一日に1階。朝の10時ごろから始めるけど、掃除は自分たちでするかい?」


 あまり他人に入られたくないな。

 つけてきている奴が化けて入ることもできそうだし。


「ああ、自分たちでするよ」


「はいよ。

 じゃあ、説明を続けるね。

 門限とかは特にない。

 もしも、金を払った期限を2日すぎても戻ってこなかったら、物はすべて処分させてもらう。

 それから、部屋の中にあるものを何か壊しても弁償してもらう。

 分かったかい?」


「ああ」


「それじゃ、大体説明したかな。

 これが扉の鍵だよ。

 あんたは2階の203号室だ」


「ありがとう」


 そう言って俺は彼女の手から鍵を受け取る。

 そのカギは銀色で少し錆がついている。

 そしてそれをもって、俺は2階への階段を上がっていく。

 そして、203号室の札がかかった部屋の前に立つ。


 扉は取っての部分の上にカギ穴がある。

 鍵穴の部分が黒い金属でできており、ほかの部分は木製だ。

 ドアノブを手に取り開けようとするが開かない。

 鍵がかかっているようだ。

 俺は鍵穴にカギを差し込み開ける。

 ガチャリと音がして扉が開く。


 仲にはおばちゃんが説明したとおりだった。

 少し下手は埃っぽい。

 最近は使われていなかったのだろう。

 真ん中に大きなベットがあり白いシーツがかぶさっている。

 両脇には木製のタンスが左右対称になるように置かれている。

 思っていたよりも大きく俺の肩ぐらいの高さがある。


 ベットの頭の部分には大きな窓がある。

 朝になると朝日が差し込んできて起こしてくれるのだろう。

 自然の目覚まし時計というわけだ。

 また、窓は表通りの方に面している。

 窓を開けて上から表通りを見ることも可能なようだ。


「おお、なかなかいいじゃないですか!」

「ん、まずは掃除しなきゃ」


 2人からの評価もなかなか高いようだ。

 俺はドアに鍵をかけ、周りに人がいないのを確かめる。

 この宿に入ってから、つけている気配がなくなった。

 おそらく、俺の泊まるところを特定できて満足したのだろう。

 彼女たちに話すなら、今しかない。


「2人とも聞いてくれ」


「ん?」「なんですか?」


「どうやら、俺たちはつけられていたみたいだ」


「えっ?」

「……それ、本当?

 勘違いとかじゃなくて?」


 2人とも驚いたような表情をする。

 そして、クロは俺に尋ねてくる。


「ああ。ずっと俺たちの後方10メートルぐらいをキープしてた。

 間違いなく、俺たちをつけていたと思う」


「全く気が付きませんでした」

「同じく。不覚」


「俺だって気が付いたのは表通りをるいているときさ。

 本当はもっと前からつけられていた可能性もある。

 それに相手の正体目的もわからない」


「彼らの姿は見なかったんですか?

 姿を見ていれば何かしら手掛かりがあるかもしれませんが……」


「目が合ってしまえばこちらが気が付いたことに気づかれると思って、あえてそちらの方は見なかったんだ。

 だから、相手の姿とかはわかんない。

 ただ気配は2つだったかな」


「今の会話は、聞かれてない?」


「ああ。

 この宿に入ってからは感じない。

 おそらく、どこの宿に泊まっているのかがわかって満足したんじゃないかな」


「それで今からどうするんですか?」


 ジェルが問いかけてくる。

 いや、どうしますかと言われてもな……

 何か名案が思い付いたわけではない。

 彼らを捕まえるか?

 だが、彼らは監視しているだけで特に害を加えていないしな。


「ひとまずは彼らのことは無視していこうと思う。

 まだ実害が出たわけじゃないしね。

 慣れていない場所でトラブルを起こすのはできるだけ避けたい」


「そうですね。

 ですが、念のため一人での行動は慎んでおくべきでしょうか?」


「そうだね。できるだけ固まって行動しよう」


「わかりました」「ん」


 そう了承してから話し合いは終わった。

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