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第16話 おじさんvsドラゴンの戦いは終わる。しんどかったぁ

 パキパキ。

 そんな音がしてアルド・メリタリは凍りつく。

 目を開けたままドラゴンの方に左手を伸ばしたまま。

 その左手からはわずかに火が出ており、抵抗しようとしたのがわかる。

 だが、その火もろごと氷の中だ。

 氷の中に閉じ込められている。

 その言葉通りの状況だろう。


 ドラゴンはそれを見てフンと鼻息を強く荒らし地面に降りる。

 そして、勝ち誇ったような顔をしてマキシワームを食べようとする。

 アルド・メリタリの方には目もくれない。

 すでに決着のついた弱者にはもう興味がないからだ。

 その場を去ろうとするが、くるっと一度振り返る。

 無性に嫌な予感がしたからである。


 念のためにと思いその氷も壊しておこうとそう思った。

 普段ならそんな死者を冒涜するようなことはしない。

 だが、そうするべきだと本能が警告していた。

 彼は足を振り上げ氷を壊そうとする。

 ふと氷の方を見てみると氷漬けられているはずの人間とかちりと目が合った。


「ぐぁ!?」


 それに驚き、同時に足を振り下ろす。

 だが、氷を壊すことはできなかった。

 一気に煙が出て、そのあまりの勢いにバランスを崩したからである。


「がるぅぅ」


 素早く体勢を立て直して煙が出た方角に全神経を集中させる。

 煙は非常に高温だった。

 そして、その煙の中から先ほど氷漬けにしたはずの男が出てくる。


「なんだぁ、貴様?」


 ドラゴンは自分の目を疑った。

 彼が生きている、という事実にではない

 それはひとえに目の前の男の気配があまりにも異質だったからである。

 先ほどまでの、彼の気配は穏当で温室育ちでどこか抜けているというような印象を受けた。

 だが、今目の前にいる男の気配はそれとはまったく異なり非常に獰猛なもの。

 まるで長年生きるか死ぬか、極限の場所にいたかのような気配。


 姿かたちが激変したというわけではない。

 見た目で変わったところと言えばせいぜい髪と目ぐらいである。

 髪はオールバックになっており、どう猛な印象を際立たせている。

 先ほどまでの優しい目とは違う、荒々しい目。

 自分がいつも獲物に向けている眼。

 それが今、自分に向けられている。


 その事実に気が付いた瞬間、ドラゴンは彼にブレスを吐いた。

 いや、吐かされたというべきか。

 自分が弱者の立場にいる、その事実を打ち消すべく放った。

 だが、それは彼を怒らせる起爆剤にしかならない。


「貴様、阿呆だな」


 その言葉とともに後ろから強烈な爆発に見舞われる。

 あたりは一瞬で爆炎に包まれる。

 内臓が損傷したのか思わず口から血を吐き、目もちかちかする。

 だが、そのあとも何度も爆発による攻撃は続く。


 死。

 それを意識したドラゴンは撤退の判断を迫られる。

 屈辱的なことこの上ないが、致し方無い。

 そう思い、上空へ非難する。

 ちらっと、目だけ後ろを見るが、相手の姿はない。


「逃げれると思っているのか?

 めでたい奴だ」


 もう、あきらめたのかと思ったが前から声が聞こえる。

 前に視線を戻すと相手がいた。

 自分と全く同じ速度で一定の距離を保ちながら上がっている。

 そう、飛んでいるのだ。

 その事実に驚く前に一気に爆発が起こり、地面にたたきつけられる。


「ほら、どうした?

 畜生風情ではこの程度が限界か?」


 ドラゴンは息も絶え絶えに相手の方を見る。

 凶悪な笑みを浮かべ自分の体の上に乗りながらこちらの方を見て問いかける。

 相手の言っていることはわかないが自分が馬鹿にされているということは何となく感じ取る。


「ゴルァァ!」


 相手を払いのけるように体を大きくのたまう。

 体の上にいた彼はそこから少し距離を取る。

 ドラゴンは体を翻し、彼の方へ向く。


 ドラゴンはブレスのモーションに入る。

 相手はそれを止めるつもりはないと分かり、溜めの時間をさらに長くする。

 全身に力がこもり血管が浮かび上がって来る。

 より濃密に、より強力に。

 溜めにためたブレスを思いっきり相手に吐く。

 そのブレスに対して、相手は片手を向ける。


「ケヒッ、褒美だ。

 受け取れ。

業火メラ』」


 次の瞬間、超高温の真っ赤な極光に見舞われた。

 全力のブレスが一瞬でかき消されるほどの威力。

 苦しむ前に燃え尽きる方が早いほどの威力。

 慈悲と言われても納得できるほどの威力。

 神の制裁と言われても納得できるほどの威力。

 ドラゴン以外には全く影響のないよう調整された威力。

 瞬く前にドラゴンは消し炭になる。


 ドックン。

 心臓が一際大きく唸る。

 その瞬間、彼のまとっている気配が一気に変化する。

 髪の毛はオールバックではなくなり、目も優しさを帯びたものに変わる。


「っはぁ、はぁ」


 俺は息を吐き、はっきりとした意識取り戻す。

 全身には汗が出ており、顔色も悪いだろう。

 頭がガンガンして吐き気も催す程度には気分が悪い。


「くそ、またか」


 さっきの状態になると、終わった後こうして気分が悪くなる。

 さっきの状態はまぁ、一種の暴走みたいなものだ。

 あの力はもう使うまいと思っていたのに、このざまか。

 ドラゴンは存在を消されたようにどこにもいない。


「帰ろう」


 俺はそうつぶやく。

 そして、少しふらつきながらも王都の方へと足を運んでいく。




「なっ、師匠!」


 俺が王都の方へと戻っているとジェルと出会った。

 彼女は逃げる時には持っていなかった馬に乗っており、急いできてくれたことがわかる。

 後ろにはほかの騎士団と思しき人も馬に乗って来ている。

 近くにドラゴンがいないのを確認してから彼女は俺に尋ねる。


「あの、ドラゴンはどこにいるんでしょうか?

 姿が全く確認出来ないのですが……」


「な、何とか撃退したよ」


「げ、撃退ですか?」


「ああ」


 それを聞いて周りにいた騎士団のメンバーが騒ぐ。


「そんな、馬鹿な……」

「単独でドラゴンを倒せるなど……」

「そもそも本当にドラゴンなのか?」

「騎士団長にも勝っているとはいえ……」


 騎士団の反応は十人十色だ。

 多くは俺がドラゴンを倒したことを信用していないようだ。

 だが、国の守り手である騎士団はこのくらい疑い深い方がいい。

 一々、人の言ったことを真に受けるのでは騎士団も大忙しだろうからな。


「ジェル。すまないが俺を君の馬の後ろに乗せてくれないか?」


「いいですけど、なんで……って、顔色悪いじゃないですか」


「ああ。かなり無理をしてね」


「どうぞ、どうぞ」


 そう言われて俺は馬に飛び乗る。

 勢い良く飛び乗ったせいか、若干気持ち悪くなるが仕方ない。

 そして、後ろから手をまわしジェルの腰をがっちりとつかむ。

 手綱を持っていないため振り落とされる可能性があるからだ。

 俺はそのまま彼女の背中にもたれさせてもらう。


「すまないが、ゆっくりで頼めるかい?

 あまり早く移動されると気分が悪くなりそうだからさ」


「ええ、構いませんよ。

 ほかのみんなもそれでいいですか?」


「ええ、まあ」「敵もいないようですし」


 みんなも納得してくれてゆっくりと変えることになった。

 パカラパカラ。

 そんな音がして心地いいそよ風が吹く。

 程よく日光に当たりながら馬に乗ってゆっくりと歩く。


 ああ、何とも落ち着くな。

 彼女の背中はじんわりと温かい。

 そして、小刻みに揺れる振動。

 何とも気持ち良いものだ。

 このまま、起きてても気分が悪くなるかもしれないし少し寝かせてもらおう。

 そう思い、私は目をつぶり眠らせてもらう。



「……匠、師匠!」


「うわっ、はい!」


 そんな声がして目を覚ますと騎士団の寮についたところであった。

 俺はそのまま先に馬を降りさせてもらう。

 ついで、ジェルも馬から降りてきた。


「それでは私はこの馬を戻しますから、師匠は先に休んでおいてください」


「ああ、ありがとう」


 心なしか体が楽になったように感じる。

 寝たおかげだろうか。

 しっかりとした足取りで俺は寮へと戻る。

 小康状態になったとはいえまだ少し気分が悪い。

 もう少し横にならせてもらおう

 そう思い、俺は自分の部屋に戻りベットの上でゴロンとなりまた眠りについた。


 しばらくして俺は目を覚ます。

 ベットから起きて体を動かす。

 うん、かなり体調は良くなっている。

 万全とは言わないが、日常生活に影響はないだろう。


 俺は窓にふと目をやるともう外は真っ暗だ。

 時間を見てみると午後7時を回っている。

 かなり長い間寝ていたようだ。

 俺は自分の部屋を出てひとまずジェルのところへ向かう。

 とはいえ、場所を知らないので近くにいた人に聞く。


「あの、すいません。ジェルの部屋ってどこですかね?」


「えっと、この通路を右に曲がってまっすぐ行ってください。

 そうしたら、ジェルさんの部屋がありますよ」


「ありがとうございます」


 そう言って俺は彼の指示通り進む。

 ジェルの部屋へ向かうのは決して何か下心があるからではない。

 クロがどうなったかを聞くためだ。

 彼女なら何か知っているだろう。少なくとも俺よりは知っているはずだ。

 おじさんが年頃の女子の部屋に一人で行くのは少し緊張するが仕方あるまい。


『ジェル』という札がかかった部屋があった。

 おそらくはここであろう。

 その札には何やら落書きがある。

 だが、決していたずらや彼女の品位を落とす類のものではない。

 むしろ、周りになじんでいる証拠と言えるだろう。

 それを見て思わず微笑む。


 コンコンコンとドアをノックしようとすると、ガチャリと扉が開きジェルが出てくる。

 そして俺を見て驚いたように声をかける。


「あれ、師匠じゃないですか。

 体の方はもういいんですか?」


「ああ、おかげさまでかなり良くなったよ。

 それで今から話したいんだけど、いいかな?」


 そういうと「あ~」と声を上げ少し考えてから俺に聞く。


「師匠ってもうご飯食べましたか?」


「いや、まだだけど」


 思えば朝から何も食べていない。

 なんだか、そんなことを言われるとおなかがすいてきたな。


「なら、一緒にご飯を食べながら話しませんか?

 私もまだご飯を食べていなくて今から食べに行くところだったんです」


「そうさせてもらおうかな」


 そう言って俺はジェルと一緒に食堂へと足を運ぶ。


しばらくは一日に一回の投稿にさせてもらいます。

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