第13話 おじさんはギルドに向かう。クロ、大丈夫かなぁ(ドキドキ)
冒険者ギルドは騎士団のところから少し離れた場所にあった。
それにしてもなかなかに大きい。
さすがに騎士団の本拠地と比べると見劣りするが……
それでも十分な広さがある。
冒険者ギルドの前には屈強な男が二人立っている。
どちらも身長は2メートルはあろうかという上背だ。
顔にはいくつもの傷があり歴戦の猛者であることがわかる。
こちらに視線をすっと向ける。
だが、すぐに元の視線に戻す。
どうやら、怪しい奴だとは思われなかったようだ。
俺たちはその中に入る。
中に入って最初に思ったことが空気の悪さだ。
全員とは言わないが騎士団と比べると粗暴な輩が多いように感じる。
こちらを物色するような視線がいくつもむけられている。
もちろん、俺ではなく横の二人だ。
そりゃあ誰だってこんな美女二人を見たら釘付けになるだろう。
それは俺だっておんなじだ。
だが、普通は彼女たちが不快にならないように隠したりする
だが、彼らのそれは隠す気のない何とも無遠慮なものだった。
特にクロは、肩が少しこわばっている。
俺は彼女の反対側の肩に手を伸ばす。
そして、自分のもとに近づける。
彼女は俺の顔の方を見てきたのでニコッと笑い返す。
彼女はそれを見て安心したようで若干だが肩を下す。
俺達は受付へ向かう。
いくつかの受付があり、一つにつき一人の受付の人が立っている。
そして、受付ごとに木の板が張り仕切られている。
開いている受付の一つに向かう。
「今回のご利用の目的は何でしょうか」
「冒険者になるための試験を受けたいんだが、かまわないだろうか?」
ジェルが受付の人に聞く。
それを聞いた受付の人はジェルを見て俺を見てクロを見る。
「どなたがご受験されるのでしょうか?
全員でございましたら安くなるキャンペーンもしておりますが、いかがなさいますか?」
「ふむ」
どうしようか。
金には限りがある。
出来ることなら、無駄な出費は押さえておきたいところだが……
俺はちらっとジェルの方を見る。
ジェルも俺の方を見ていたが、受付の人の方に目線を戻す。
「私たち3人が受けるのとこの子一人が受けるのとではどちらが安いですか?」
「それはもちろん、おひとりさまのほうですが……」
「それならばこの子だけで構いません」
「畏まりました。それでランクを教えてもらってもよろしいでしょうか」
「ランクは3でお願いします」
「はい、それでは代金の方を用意してください」
そういわれて、ジェルはお金を出す。
そして、受付の人はそれを確認する。
「はい、確かに頂戴しました。
それでは試験についてのルールを説明いたしますので、受験される方だけついてきてください」
そう言って受付の人は奥の部屋の方に行く。
そのあとについて行くクロは俺たちの方をくるっと振り返る。
「じゃ」
「ああ、行ってらっしゃい。騎士団のところにいるから終わったら戻っておいで」
「ん」
俺が声をかけると、彼女はそう言って奥の部屋に行く。
近くにいたギルドのが声をかけてくる。
「申し訳ありませんが、当ギルドにほかにご用事がありませんのでしたらお帰りになってもらってもよろしいでしょうか?」
そう言われて、後ろを見ると人が詰まっているのがわかる。
俺が頭を下げてそそくさと立ち去ろうとすると、ジェルがギルドの人に声をかける。
「ああ、すみません。離れたところからでいいので、彼女を見ても構いませんか?」
「遠いところからとおっしゃいますと、試験の邪魔をなさらないように100メートルほど離れたところから冒険者が同行して、見てもらうことになりますが、それでよろしいでしょうか?」
「はい。それで構いません。彼女の身が危なくなっていないかを確認したいだけなので」
「かしこまりました。少々お待ちください。ただいま同行する職員を連れてまいります」
そういって職員奥の部屋へと戻っていった。
俺は彼女に聞く。
「なんで、あんなことをお願いしたんだい?」
「試験中彼女はフリーになり、マジカル王国に向かって私たちのことを話すかもしれません。
そうなったら、少なくとも平穏な日常は遠のきますよ」
「つまり、彼女のことはまだ信用できないと?」
「そうですね。騎士団の一員として、この国家に害をなす恐れがあるのであれば、それへの監視は必要でしょう」
言っていることはもっともなんだが……
もう少し彼女のことを信用してあげてもいいんじゃないか?
そう思うが、彼女と俺の立場を考えれば妥当な判断だ。
受付の人が俺たちのところに一人の冒険者を連れて戻ってくる。
肩幅があり、体中は傷だらけ。
そして、髪の毛は赤色で目は飢えた肉食獣のようだ。
いかにもな、冒険者だ。
俺は彼の体にすっと目を通す。
筋肉はついている。
剣士用ではなくすべてのタイプにまんべんなく対応できるような筋肉の付き方だ。
筋肉のタイプとしては騎士団長に近いだろうか。
だが、騎士団長の方が圧倒的に筋肉の密度が高い。
腰には剣と弓、短剣を持っている。
すべてそこそこできる、というタイプだろう。
「こちらが今回あなた方に同行する冒険者、マモールさんです」
「マモールですぜ。よろしく」
そう言って彼は握手を求める。
ジェルが手を伸ばしてそれにこたえる。
「私の名前はジェルだ。こちらこそよろしく」
「よろしく。そちらの、おじさんのお名前伺っても?」
そう言って俺の方を見てくる。
おじさん、か。
マモール君は見た目20代だから、仕方ないか。
俺は騎士団の時にも使った偽名を名乗る。
「俺の名前はリョウセイだ」
「リョウセイ、か。おふた方少しの間だがよろしく頼むぜ」
そう言って彼は頭を下げる。
こんなことを言うのは冒険者に失礼かもしれないが……
礼儀正しいな。
冒険者といえば、もう少し下品なイメージがある。
先ほどは言った時の雰囲気もしかり、だ。
だが、彼はしっかり挨拶もするし、頼りにできそうだ。
「それじゃあ、行きましょうか」
そう言って彼ギルドの入り口に向かって歩き出す。
俺とジェルは彼の後について行く。
外に出た後に彼は俺たちに声をかけながら、王都の郊外に歩いていく。
どこで試験が行われているのかははっきりしている確かな足取りだ。
「お二人さんはどんな関係なんですかい?」
「私たちは師匠と弟子との関係です。それ以上でもそれ以下でもありませんよ」
「はぁ。では、ジェルさんはリョウセイさんに好意を持ってはいなんですかい?」
「持ってはいます。ですがそれは尊敬という意味であって、恋愛感情ではありませんよ」
「ほ~ん」
そう言って彼は俺をちらりと見る。
そして俺の全身を一瞬で見て納得したかのように視線をジェルに戻す。
そして、また話題を振ってくる。
「それでなんで今回あのお嬢さんを受けさせようと思ったんですかい?
まだ若そうに見える。
そんな焦ることもないだろうに」
「彼女の役に立つと思ったからです。
冒険者としての資格は全世界で役に立ちますからね」
「そりゃそうだ。ってことは、彼女は将来旅に出させるおつもりで?」
「そこまでは決めていません。
ただ、何かあった時に彼女のためになると思いました。
それよりも私からあなたに質問しても構いませんか?」
「ああ、かまいませんよ。何でも質問してくださいな」
そう言って彼は胸をどんとたたく。
自身に満ち溢れていることがうかがえる。
「では、直球で聞くが貴方はランクはいくつなんでしょうか?」
「アッシのランクは5です。
何か不測の事態が起こっても大丈夫なように試験のランクよりも上の人がくるんですぜ」
「なるほど。では二つ目の質問です。
彼女は、同じ冒険者のあなたから見て今回の試験に受かりそうですか?」
「……受かると思いますぜ。
彼女の歩き方をみるに相当鍛錬してきたのがわかりやす。
不安点があるとすれば筋肉面ですがそれも技術で何とかなると思いやす」
「そうですか」
俺たちがそこまで話していると彼は歩くのをやめる。
そして、後ろにいた俺たちの方を振り返る。
「ここで止まってくだせぇ。ここぐらいの距離からだったら、見ても大丈夫なはずですぜ」
そう言って少し先の方を指す。
そこに目線を向けるとクロと試験監督と思しき人がいるのがわかる。
次の瞬間、クロの前に地面から巨大な幼虫が出てきたのが見える。
クロは黒い短剣を手に持ち構える。
そして、クロと幼虫との戦いの火ぶたが切られた。




