九話 祭り
収穫祭の日がやってきた。
「朝だよー」
「ううん、今日って授業ないよ」
また、ユリが寝坊しそうになってる。
「その分、収穫祭があるんだって。早く起きないと遅刻しちゃうよ」
「ううん」
そのあと色々あって、ユリを起こすのに数分はかかってしまう。
「急ぐよ!このままだと開会式に間に合わない」
「うん」
ユリの手をちゃんと引っ張って開会式が開かれる場所へと連れていく。到着するとジンとコウはもうそこにいて、ギリギリできた私たちに
「お前たち、遅いぞ。開会式始まっちゃうじゃないか」
と言ってくる。ユリがなかなか起きないから、、、私はそう思いながら
「ごめん!」
と言った。
「ちょうどだな」
コウがそう言い、その目線の先には今回収穫祭に出場する四年生が並んで出てきていた。その先頭にはサリエルさんもいる。ってあれ、何か様子がおかしい。
「なんか、足引きずってる?」
「ホントだ、先頭を歩いている人、足引きずってるな。よく気付いたな、ミラ」
「ううん、たまたま」
前会った時は、元気そうだったのにどこかで怪我をしたのだろうか。これでは収穫祭に影響が出てしまう。いや、待てよ。
「もしかしたら、、、」
誰かに怪我させられた可能性がある。サリエルさんは今回の大会、優勝する自信があるって言ってた。その優勝を阻止するために怪我を負わされたとしたら、
「大丈夫かな」
「なにぶつぶつ言ってるんだよ」
「え、いや」
このことをみんなに伝えようか?いや、でも確定した情報でもないし、不安をあおるだけかもしれない。
「何でもない」
私はなにも伝えてないことにした。
四年生たちが入場し、開会式が始まる。人目が集まる広場に立ったのは前と同じように小さな女の子の校長だった。
「無事この日を迎えられたことを嬉しく思う。今日この日この祭りで、月から力を手に入れる者が決まる。みんな心してかかるよう気を引き締めたまえ」
本当に無事に収穫祭を迎えられたのだろうか。私は一抹の不安を覚えた。
そして収穫祭が始まる。
またもや、校長がアナウンスをする。
「今回の行事は、シンプルにかけっこだ。ゴブリンたちのいる裏庭を抜けて、最初にゴールについた者が勝ち。栄光を勝ち取る。では、皆の健闘を祈っている」
それでは、足を怪我したサリエルさんは不利だろう。だが、文句を言う相手もいない。行事は滞りなく進んでいく。そして、皆がスタートラインに立ち、その時がくる。
「よーい、スタート!!!」
校長のその掛け声と共に皆が裏庭へと走っていく。私たちはその様子を少し離れた場所から見ていた。裏庭に入ったあとは、選手の様子は森が邪魔して見ることができない。
「みんな行ったことだし、ゴール地点まで回り込もうぜ」
ジンがそう言った。森の横はなだらかな平面が続いており、整備が整っているためゴブリンも出ない。小走りで行けばゴールに先回りできるだろう。周りにいる人たちもゴールに先回りするため、走って移動している。
「そうだね」
私たちもゴールに先回りすることにした。そして走ること数十分、ゴールに到着する。そこには、ゴールするのを待っている人たちで人だかりができていた。
「どんなやつが優勝するのかな、俺と同じどこかの村からの出だったらいいな」
庶民から優勝者がぜんぜん出ていないことを知らないジンはそう言った。
「そうだね」
私は無心で話を合わせる。
そして、しばらく待つこと十数分、森の中から人が現れた。人混みが歓声で湧く。そのまま先頭に立った人がゴールへと向かっていった。そして、ゴールする。
「今回優勝者は、オリス・ジェンバーン一行だ」
その掛け声を聞いて、歓声を上げる人と上げない人がいる。みんなは後者だった。だって下の名前があるのは貴族だから。貴族が優勝したと知ってジンとコウはろこつにテンションが下がっていた。
そのまま、次々にゴールする者が現れる。その中にサリエルさんを見つけたが、何か下を見つめていて思い詰めているようだった。他の一緒に来たチームメンバーに別れを告げてどこかに行こうとしている。私はとっさに追いかけることにした。
「おい、どこいくんだよ。このあと表彰式だろ」
「ごめん、ちょっと用事」
私はそう断りを入れて、サリエルさんの後をついていく。サリエルさんはそのまま人通りのない道へと進んでいった。私はそれを走って追いかける。そして、人気のない場所で彼女に追いつき、話しかけてた。
「あの!」
「うん?あなたは、図書館にいた、、、」
「そうです、前に図書館で会ったミラと言います」
「そうそう、ミラさん、どうしたの?」
「それは、あの」
言いにくいことだが、思い切って言うことにした。
「足、怪我してるじゃないですか。それ、どうしたんですか」
「ああ、これ?」
サリエルは苦笑いしながら引きずってる足を見た。
「これね、ちょっと貴族の子にやられたの。油断しててね」
「先生とかに言わなかったんですか」
「言ったけどダメだった。証拠がなくてね」
そんな、それは酷い話だ。
「いいのよ、そんなに心配してくれなくて。すぐ治る怪我だし」
「でも」
「いいの、だって私諦めたわけじゃないから」
そう言うサリエルさんは笑っていた。
「これからだって大会に出て優勝すれば魔法を授かる可能性だってある。私はまだこれから頑張るつもり。だから心配しなくてもいいよ。それよりさ」
そこで彼女は話を区切る。
「あなたも気を付けなさいよ。彼らは魔法を得るためなら何だってするかも知れない」
そう言われて私はドキっとした。確かにこれはサリエルさんだけの問題ではない。これから私たちがこうした出来事の標的にされてもおかしくないのだ。
「わかり、ました」
私はそう小声で言うことしかできなかった。
ふと見ると、サリエルさんはまだ笑っていた。
「頑張ってね、私、あなたなら大物になれるんじゃないかって感じてるの」
大物?私が?疑問しか浮かんで来ない。
「じゃあ、私行くから。心配してくれてありがとう。じゃあね」
そう言うと、サリエルさんはどこかに行ってしまった。
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